熱中症・夏の脱水を防ぐ ― 水分と電解質の正しいとり方を五藤良将・理事長が解説
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
毎年、夏になると多くの方が熱中症で救急搬送され、命に関わる事故も後を絶ちません。気温だけでなく湿度の高い日本の夏は、屋外はもちろん、室内にいても熱中症の危険があります。
熱中症の予防でカギになるのが、水分と「電解質(塩分・ミネラル)」の正しい補給です。「水をたくさん飲んでいたのに熱中症になった」という方も少なくありません。この記事では、なぜ水だけでは不十分なのか、経口補水液とスポーツドリンクの使い分け、そして危険なサインと受診の目安までをわかりやすくご説明します。

1. 熱中症はなぜ起こるのか
人の体は、汗をかいてその気化熱で体温を下げることで、暑い環境でも体温を一定に保っています。ところが気温と湿度が高いと汗がうまく蒸発せず、体に熱がこもってしまいます。
さらに、大量に汗をかくと体内の水分と塩分(ナトリウムなどの電解質)が同時に失われます。この状態で水分・塩分を十分に補えないと、体温調節がうまくいかなくなり、めまい・けいれん・意識障害など、いわゆる熱中症の症状が現れます。湿度の高い日本の夏では、気温だけでなく「暑さ指数(WBGT)」を意識することが大切です。
「暑さ指数(WBGT)」と熱中症警戒アラート
暑さ指数(WBGT)は、気温・湿度・輻射熱を組み合わせた暑さの指標です。環境省と気象庁は、危険な暑さが予測される日に「熱中症警戒アラート」を発表しています。発表された日は、外出や運動を控えるなど、いつも以上の対策を心がけましょう。
2. 重症度と危険なサイン
熱中症は重症度によって3段階に分けられます。軽いうちに気づいて対応することが、重症化を防ぐうえで何より重要です。
| 重症度 | 主な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| I度(軽症) | めまい・立ちくらみ、筋肉のこむら返り、大量の発汗 | 涼しい場所で休み、水分・塩分を補給 |
| II度(中等症) | 頭痛・吐き気・嘔吐、体がだるい、集中力の低下 | 自分で水分がとれない・改善しなければ医療機関へ |
| III度(重症) | 意識がもうろう、呼びかけに反応が鈍い、けいれん、まっすぐ歩けない、高い体温 | ためらわず救急要請(119番)。体を冷やしながら救急隊を待つ |
🚨 ためらわず救急車を
呼びかけへの反応がおかしい、自分で水分をとれない、けいれんしている――こうしたときは重症のサインです。無理に水を飲ませようとせず、すぐに119番通報し、首・わきの下・足の付け根を冷やしながら救急隊を待ってください。
3. なぜ「水だけ」ではダメなのか
汗には水分だけでなく、ナトリウム(塩分)などの電解質も含まれています。大量に汗をかいたときに水やお茶だけを飲むと、体内の塩分濃度がさらに薄まり、かえってだるさや筋肉のけいれんを招くことがあります。これを「自発的脱水」と呼びます。
つまり、夏の水分補給では「水分」と「塩分・電解質」をセットでとることが大切です。とくにたくさん汗をかいたときほど、塩分を意識した補給が必要になります。
✅ 大量に汗をかいたら、水だけでなく塩分・電解質も
✅ 起床時・入浴前後・就寝前など「区切り」で一杯
4. 経口補水液とスポーツドリンクの使い分け
「経口補水液」と「スポーツドリンク」は似ているようで、目的が異なります。経口補水液は、水分と電解質をすばやく吸収できるよう設計された飲料で、体液に近い濃度の塩分(ナトリウムはおよそ100mg/100ml=食塩相当量0.3%前後)と、吸収を助ける少量の糖分を含みます。一方、スポーツドリンクは塩分が控えめで糖分が多めの傾向があります。
| 種類 | 向いている場面 |
|---|---|
| 経口補水液 | 大量に汗をかいたとき、熱中症が疑われるとき、下痢・嘔吐で脱水ぎみのとき。塩分がしっかり補える |
| スポーツドリンク | 軽い運動や日常的な水分補給。糖分が多めなので飲みすぎには注意 |
| 水・麦茶 | 日常のこまめな水分補給。大量発汗時は塩分補給を別に意識する |
⚠️ 持病のある方は飲みすぎに注意
経口補水液は塩分を含むため、高血圧・心臓・腎臓の病気で塩分制限がある方や、糖尿病で糖分が気になる方は、量や種類について主治医にご相談ください。健康な方でも、日常的にがぶ飲みするものではなく、必要な場面で使うのが基本です。
5. シーン別・正しい水分のとり方
| 屋外・運動時 | 20〜30分ごとにコップ1杯程度を目安にこまめに。大量に汗をかくなら経口補水液や塩分も。 |
| 就寝時 | 寝ている間も汗で水分が失われます。就寝前と起床時に1杯ずつ。枕元に飲み物を。 |
| 入浴前後 | 入浴でも汗をかきます。入る前と上がった後に水分を。 |
| 室内で過ごす日 | エアコンを使い、のどが渇かなくてもこまめに。室内でも熱中症は起こります。 |
6. 特に注意したい方
同じ環境でも、熱中症になりやすい方がいます。ご本人だけでなく、周りの方の声かけも大切です。
熱中症に特に注意したい方
① 高齢の方…暑さやのどの渇きを感じにくく、汗もかきにくい
② 小さなお子さま…体温調節が未熟で、地面に近く照り返しの影響を受けやすい
③ 持病のある方…高血圧・心臓病・腎臓病・糖尿病など。利尿薬や一部の薬を服用中の方も注意
④ 屋外で働く方・運動する方
糖尿病をお持ちの方へ
糖尿病で血糖が高めの状態が続くと、尿の量が増えて脱水になりやすくなります。とくに一部の血糖を下げるお薬(SGLT2阻害薬など)は尿量を増やす作用があり、夏場は脱水に一層の注意が必要です。水分補給のしかたや、体調をくずしたときのお薬の扱い(シックデイ対応)について、主治医にご確認ください。
7. 応急処置と受診の目安
熱中症が疑われるときは、まず「涼しい場所へ移す・体を冷やす・水分と塩分をとる」が基本です。
| STEP 1 | 涼しい場所へ 風通しのよい日陰やエアコンの効いた室内へ移動し、衣服をゆるめる。 |
| STEP 2 | 体を冷やす 首・わきの下・足の付け根を保冷剤や濡れタオルで冷やす。 |
| STEP 3 | 水分・塩分を補給 意識がはっきりしていれば、経口補水液などを少量ずつ。自分で飲めないときは無理をさせない。 |
こんなときは医療機関・救急へ
① 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い → すぐ119番
② 自分で水分がとれない、吐いてしまう
③ 休んでも症状が改善しない、体温が高いまま下がらない
8. よくあるご質問(FAQ)
9. 理事長コメント
10. まとめ
✅ 水分と塩分・電解質は「セット」でとるのが基本
✅ 大量発汗・脱水時は経口補水液、日常は水・麦茶を使い分ける
✅ 高齢者・子ども・持病のある方は特に注意。塩分制限がある方は主治医に相談
✅ 意識がおかしい・水分がとれないときは、ためらわず119番
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理事長 五藤 良将