【禁煙治療に関する最新情報】チャンピックス(バレニクリン)出荷停止中のお知らせ
- 2025年4月29日
- お知らせ
五良会クリニック白金高輪では、禁煙外来を通じて長年にわたり多くの患者様の禁煙サポートを行っております。今回、改めて禁煙治療における現状についてご案内いたします。
現在、日本国内では禁煙補助薬「チャンピックス(一般名:バレニクリン)」は、2021年以降出荷が停止しており、以降、処方ができない状況が続いています。また、バレニクリンの後発品(ジェネリック製剤)も販売・供給されていません。
【出荷停止の背景】 2021年、チャンピックスの一部ロットから発がん性の可能性がある不純物(N-ニトロソバレニクリン)が検出されたため、ファイザー社は自主回収および出荷停止を実施しました。現在に至るまで出荷再開の見通しは立っておりません。
【現在使用できる禁煙補助薬と保険診療の適応】 現在、保険診療で処方可能な禁煙補助薬は、ニコチンパッチ(ニコチネルTTS)のみとなっています。
かつては「ニコレットTTS」という別製品も販売されていましたが、すでに販売終了となっており、現在はグラクソ・スミスクライン社製のニコチネルTTSのみが処方可能です。
なお、ニコチンガムも禁煙補助に使用される製剤ですが、こちらは一般用医薬品(OTC医薬品)であり、薬局やドラッグストアで購入できる製品です。保険診療での処方対象には含まれていません。そのため、禁煙外来においては、医師がニコチンガムの使用をアドバイスする場合はありますが、処方箋による提供は行っておりません。
まとめると、ニコチネルTTSは医療機関から保険診療で処方できる禁煙補助薬ですが、ニコチンガムは市販薬であり、患者様ご自身で購入していただく必要がある点が大きな違いです。
これらの製剤は、体内にニコチンを補充することで離脱症状を緩和し、禁煙をサポートします。
また、禁煙外来におけるニコチン依存症治療は、一定の条件(例:ブリンクマン指数200以上、ニコチン依存症スクリーニングテスト5点以上など)を満たす場合、健康保険の適用対象となります。対象となる方は、医師の問診と評価をもとに、12週間にわたる標準プログラム(初回診察+4回の再診、計5回の通院)で治療を受けることが可能です。
【ニコチネルTTSの使用スケジュールと標準通院プログラムについて】 ニコチネルTTSは、30mg・20mg・10mgの3種類があり、一般的には以下のように段階的に使用量を減らしていきます。
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初回診察〜4週目:ニコチネルTTS30(30mg)を1日1枚貼付
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4週目以降:ニコチネルTTS20(20mg)へ減量し、1日1枚貼付
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8週目以降:ニコチネルTTS10(10mg)へさらに減量し、1日1枚貼付
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12週目終了時:貼付終了
それぞれ通院時に、次回受診までの日数分+予備を考慮して処方されます。
禁煙治療は、保険診療の場合「初回診察+4回の再診、計5回の通院」が必要です。標準的な通院スケジュールは以下の通りです。
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初回(第1回):治療開始(0週目)
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2回目(第2回):初診から2週間後
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3回目(第3回):初診から4週間後
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4回目(第4回):初診から8週間後
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5回目(第5回):初診から12週間後
各通院時に、診察により治療状況を確認し、医師が使用するニコチネルTTSの種類や枚数を適切に調整しながら、12週間をかけて段階的にニコチン量を減らしていきます。
【注意喚起】 現在、インターネット上では海外製のバレニクリン製剤が個人輸入代行という形で販売されていますが、これらは日本国内で医薬品承認を受けていないため、安全性・品質が保証されていません。当クリニックでは、個人輸入製品の使用は推奨しておりません。
【今後の展望】 日本禁煙学会によると、チャンピックスに代わる新たな選択肢として、シチシニクリン(Cytisinicline)が注目されています。シチシニクリンは1960年代から中央・西ヨーロッパ諸国で禁煙補助に使用されている植物性アルカロイドであり、現在日本国内での導入に向けた動きも報告されています。しかし、チャンピックスの再供給には依然として時間がかかる見通しであり、今後数年単位での対応が求められる状況です。
【まとめ】
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チャンピックス(先発品):出荷停止中のため処方不可
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バレニクリン後発品:国内未承認・未販売
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保険診療で処方可能な禁煙補助薬:ニコチンパッチ(ニコチネルTTS)
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ニコチンガム:一般用医薬品(OTC)として市販、処方薬ではない
禁煙治療をご希望の患者様には、現在使用可能なニコチネルTTSを中心にサポートを行い、必要に応じて行動療法やカウンセリングも組み合わせた治療をご提案しています。
禁煙をお考えの方は、お気軽に五良会クリニック白金高輪までご相談ください。
【参考文献】
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ファイザー社「チャンピックス錠出荷停止継続のお知らせ」
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日本禁煙学会「チャンピックス欠品をどうのりきるか」
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厚生労働省 e-ヘルスネット「ニコチンガム」
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日本禁煙学会 『バレニクリン(チャンピックス)の再開と禁煙外来の現況について』(日本禁煙学会雑誌 第19巻第4号, 2024年12月28日) → 詳細はこちら(J-STAGEリンク)