ピロリ菌の除菌治療|白金高輪の消化器内視鏡専門医が解説
「健診でピロリ菌が陽性と言われた」「胃潰瘍の原因がピロリ菌だった」――こうした経験をお持ちの方や、ピロリ菌について初めて知りたいという方に向けて、このページではピロリ菌の基礎知識から除菌治療の流れ・副作用・保険適用・除菌後のフォローまで、消化器内科専門の立場からわかりやすく解説します。
2024年11月、日本ヘリコバクター学会から『H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版』が発行され(2016年以来8年ぶりの改訂)、除菌治療の推奨内容が更新されました。当院ではこの最新ガイドラインに沿った診療を行っています。
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本肝臓学会 専門医・指導医
1. ピロリ菌(H. pylori)とは
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori、通称「ピロリ菌」)は、胃の粘膜に生息するらせん形の細菌です。胃の中は強い酸性のため、ほとんどの細菌は生息できませんが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素でアンモニアを産生し、その中和作用で胃酸から自らを守るという特殊な能力を持っています。
📌 ピロリ菌の基本情報
● 感染経路:主に幼少期の経口感染(井戸水・生水・家庭内感染など)
● 感染率:日本の中高年層では50〜70%以上が感染しているとされる
● 自然治癒:除菌治療なしに自然消滅することはほとんどない
● 発見:1983年にマーシャル・ウォーレン博士が発見(2005年ノーベル生理学・医学賞)
2. ピロリ菌が引き起こす病気
ピロリ菌は長期にわたって胃粘膜に炎症を起こし続け、さまざまな消化器疾患の原因となります。
| 疾患 | ピロリ菌との関連 |
|---|---|
| 慢性胃炎(ピロリ感染性胃炎) | 感染者のほぼ全員が発症。自覚症状がないことも多い |
| 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 | 胃潰瘍の約70〜80%、十二指腸潰瘍の約90%でピロリ菌陽性 |
| ⚠ 胃がん | 胃がんの最大の危険因子。除菌により発症リスクを低減できる |
| 胃MALTリンパ腫 | ピロリ菌除菌で寛解する場合がある |
| 特発性血小板減少性紫斑病(ITP) | 除菌後に血小板数が改善するケースがある |
| 機能性ディスペプシア | 胃もたれ・みぞおちの痛みなど、除菌で改善することがある |
⚠ 胃がんリスクと除菌の重要性
日本人の胃がんの99%以上がピロリ菌感染者に発生するとされています。除菌治療を行うことで胃がん発症リスクを約3分の1程度に低減できることが報告されています。ただし除菌後もゼロにはならないため、除菌後も定期的な胃内視鏡検査が重要です。
3. ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌の検査には、内視鏡検査と組み合わせる方法と、内視鏡なしで行える方法があります。
内視鏡を使う検査
| 検査名 | 方法 |
|---|---|
| 迅速ウレアーゼ試験(RUT) | 内視鏡で採取した組織を試薬に接触させ、色の変化で判定。短時間で結果が出る |
| 鏡検法 | 採取した組織を顕微鏡で直接観察してピロリ菌を確認 |
| 培養法 | 採取した組織を培養して菌の存在を確認。薬剤感受性試験も可能 |
内視鏡なしでできる検査
| 検査名 | 方法・特長 |
|---|---|
| ⭐ 尿素呼気試験(UBT) | 除菌判定に最も多く使われる。薬を飲んで息を吐くだけ。感度・特異度ともに高い |
| 便中抗原測定法 | 便を採取してピロリ菌の抗原を検出。精度が高く、内視鏡不要 |
| 血清・尿中抗体法 | 血液または尿でピロリ菌に対する抗体を測定。スクリーニングに有用 |
| ペプシノゲン(PG)検査 | 血液検査で胃粘膜の萎縮度を評価。ピロリ菌感染の間接指標 |
⚠ 検査前のお薬について
PPI(プロトンポンプ阻害薬)やP-CAB(タケキャブ®など)を服用中の場合、尿素呼気試験・迅速ウレアーゼ試験では偽陰性(本当は陽性なのに陰性と出る)になる可能性があります。検査前に2週間以上休薬が必要なことがあります。服用中のお薬は事前に必ずご申告ください。
4. 除菌治療の流れ(一次・二次除菌)
除菌治療は、胃酸分泌抑制薬1剤+抗菌薬2剤の3剤併用療法を1日2回・7日間内服するのが標準です。
📌 2024年最新ガイドラインのポイント
日本ヘリコバクター学会『H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版』(2024年11月15日発行)では、一次除菌においてP-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)を用いたレジメンのほうが、従来のPPI(プロトンポンプ阻害薬)を用いたレジメンよりも除菌成功率が高いことから、P-CABベースの3剤療法が推奨されました。
一次除菌(最初の除菌治療)
| 薬剤の種類 | 代表的な薬(例) |
|---|---|
| ① 胃酸分泌抑制薬 P-CAB(推奨)またはPPI |
ボノプラザン(タケキャブ®)など |
| ② 抗菌薬1 | アモキシシリン(ペニシリン系) |
| ③ 抗菌薬2 | クラリスロマイシン(マクロライド系) |
| 内服期間・回数 | 1日2回・7日間(朝夕食後) |
| 一次除菌の成功率 | P-CABベースで約80〜90%以上 |
二次除菌(一次が不成功だった場合)
一次除菌が不成功だった場合、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更した3剤療法を7日間行います。二次除菌までは健康保険が適用されます。
| 薬剤の種類 | 代表的な薬(例) |
|---|---|
| ① 胃酸分泌抑制薬 | P-CABまたはPPI |
| ② 抗菌薬1 | アモキシシリン(一次と同じ) |
| ③ 抗菌薬2(変更) | メトロニダゾール(フラジール®)← クラリスロマイシンから変更 |
| 二次除菌の成功率 | 約90%以上 |
5. 除菌中の注意点・副作用
必ず守っていただきたいこと
● メトロニダゾール服用中は禁酒(アルコールで悪心・嘔吐・頭痛などの症状が出ます)
● ペニシリンアレルギーのある方は必ず事前に申告してください
起こりうる副作用
| 副作用 | 頻度・対応 |
|---|---|
| 軟便・下痢 | 比較的多い。多くは一時的で治療終了後に改善 |
| 味覚障害・口の苦み | 約7%程度。治療終了後に改善することが多い |
| 悪心・食欲不振 | 食後に内服することで軽減できる場合あり |
| 皮疹・かゆみ | アレルギー反応の可能性。出現した場合は内服を中止し受診 |
※ 副作用が強い場合は自己判断で中断せず、まず当院にご連絡ください。
6. 除菌判定と除菌後のフォロー
除菌判定
除菌治療終了後は、最低4週間以上の間隔をあけてから除菌判定を行います(内服直後は菌が一時的に抑制されるため偽陰性になります)。当院では主に尿素呼気試験(UBT)または便中抗原検査で判定します。
| STEP 1 | 除菌薬の内服終了 |
| STEP 2 | 4週間以上あけて除菌判定検査(※PPI/P-CABを服用中の場合は事前休薬が必要) |
| STEP 3 | 除菌成功の場合:定期的な胃内視鏡検査で継続フォロー 除菌不成功の場合:二次除菌へ(一次除菌後のみ。二次も不成功の場合は相談) |
除菌後も内視鏡検査が必要な理由
⚠ 除菌後も胃がんリスクはゼロではありません
除菌に成功しても、すでに萎縮した胃粘膜が完全に回復するわけではなく、胃がんが発生するリスクは除菌しない人より低いものの、ゼロにはなりません。特に中高年での除菌後は、年に1回の胃内視鏡検査を継続することを強くお勧めします。
7. 保険適用の範囲
ピロリ菌の検査・除菌治療に健康保険が適用されるのは、以下の疾患が診断された場合(または疑いがある場合)です。
✔ 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
✔ 胃MALTリンパ腫
✔ 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
✔ 早期胃がんの内視鏡的治療後
| 治療段階 | 保険適用 | 備考 |
|---|---|---|
| 感染診断検査 | ✔ 適用 | 上記疾患の診断時 |
| 一次除菌治療 | ✔ 適用 | 3割負担で薬代のみ数千円程度 |
| 二次除菌治療 | ✔ 適用 | 一次除菌不成功の場合 |
| 三次除菌治療以降 | ✖ 保険外 | 自費診療(ご相談ください) |
| 除菌判定検査 | ✔ 適用 | 各除菌治療後の判定 |
出典:厚生労働省「ヘリコバクター・ピロリ感染症に係る検査・除菌に関する保医発通知」(平成25年2月21日)、日本ヘリコバクター学会『H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版』
8. よくある質問(FAQ)
9. 理事長コメント
当院では、消化器内科・内視鏡を専門とする院長の玉井とともに、内視鏡検査による正確な診断から除菌治療・除菌判定・定期フォローまでを院内一貫で対応しています。健診でピロリ菌陽性と言われた方、胃の不調が続く方は、どうぞお気軽にご相談ください。」
📖 参考:日本ヘリコバクター学会『H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版』(2024年11月15日発行)
10. まとめ
✅ 2024年改訂ガイドラインでP-CAB(タケキャブ®)ベースの一次除菌が推奨に
✅ 除菌は3剤7日間の内服。一次除菌成功率は約80〜90%以上
✅ 一次が不成功でも二次除菌で累計95%以上が除菌成功
✅ 一次・二次除菌は健康保険適用(内視鏡検査で診断後)
✅ 除菌後も年1回の胃内視鏡検査を継続することが重要
✅ 当院では内視鏡検査→除菌→除菌判定→定期フォローを院内一貫で対応
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