【Business Journal】に五藤理事長が取材・監修を受けた記事が掲載されました。~咳止めが足りない。深刻な薬不足~
五藤理事長が取材・監修を受けた記事が、「Business Journal」に掲載れました。
ぜひご一読下さいませ ↓↓↓
https://biz-journal.jp/2023/10/post_360966.html
■ 咳止めが足りない…深刻な薬不足、インフルエンザ本格流行を前に危険信号
街は多くの人で溢れ、インバウンドも復活した2023年。長かったコロナ禍を脱し、普段の生活を取り戻したようにも見えるが、実は2023年は様々な感染症が流行し、春〜夏にはヘルパンギーナやRS感染症、夏の終わりからこの秋にかけてはインフルエンザが猛威をふるっている。
こうした状況に医療機関で起きているのは、深刻な薬不足だ。咳止めや解熱剤の不足は一向に改善される気配がなく、ここにきて抗生物質の流通もあやしくなっている。その原因は何か、医療現場に聞いた。
■ 薬不足の悪循環
五良会クリニック白金高輪理事長の五藤良将医師は、現状をこう語る。
「咳止めを処方したくても薬がないという状況です。処方しても薬局から薬の在庫がないという連絡が入ることもあります。咳を放置しておくと睡眠障害、免疫機能低下などにもつながりかねないので、この状況は迅速な改善策が必要だと思います」
これまで風邪からくる咳症状に処方された薬は、一様に“出荷調整”となっており、全国の医療機関で同様の状況である。
「吸入薬が適用となる症状では吸入薬を処方していますが、全国で同様の状態なので吸入薬の出荷制限も起きるのではと心配です」(同)
五藤医師が危惧する通り、現在、流通が滞る吸入薬もあり、状況はさらに厳しくなりそうだ。こうした悪循環は、すでにコロナ禍から起きていた。
「2022年の冬には、コロナの感染爆発で咳止めや解熱剤の需要が一気に高まりました。一つの咳止めに需要が集中し足りなくなると他の咳止めに処方が集中して、また足りなくなるという悪循環でした。なんとか状況を改善したいと思い、薬の不足について発信してきましたが、その状況は改善されるどころか、さらに悪化していると感じます」(同)
日本製薬団体連合会が2023年5月末に行った「医薬品供給状況にかかる調査」の結果によると、「限定出荷」と「供給停止」の品目は全体の22.5%、先発品のみでは5.9%、後発品は33.0%であり、圧倒的に後発品が不足 している。
「薬の不足により患者の健康が保てなくなるリスクもあることは否定できないと言える状況です」
■ 発端はジェネリックメーカーの不正
薬が不足している原因は一つではないが、ジェネリックメーカーの不正による営業停止が、薬の不足が原因といえる。2020年12月には、小林化工が製造販売する抗真菌剤に睡眠誘導剤の混入事案が発生し、2人の死亡者が出た。その後、小林化工は業務停止命令を経て、後発薬事業から撤退している。
また、2021年3月には日医工の業務停止命令があった。当時、日医工では、品質試験で不適合となった錠剤を砕いて再び加工したり、出荷前の試験をしないなどの不正を行っていたことが明るみになった。こうした大手ジェネリックメーカーの業務停止によって薬の出荷数が激減したことが薬不足を招いている。
薬不足を改善するために国はどう対策をとるのか、ある国会議員の事務所を訪ねた。
「風邪や感染症に必要な薬の薬価が低いことで、これまで生産に力が注がれていなかった現状も否めず、さらに最近の物価・エネルギー価格の上昇、円安による原薬・原材料費の上昇、輸送コストも上昇などが影響していると考えられますので、国が支援し増産できるような方法を考えていきたい」
当然ながら、その国会議員も薬の不足については承知しており、このような回答を得た。しかしながら、必要な支援がなされるには至っていないように感じる。厚生労働省は10月18日、製薬企業8社に薬の増産を要請したと発表したが、要請だけでは速やかな増産は難しい可能性がある。
■ 薬価と原薬の問題
風邪など急性疾患の治療に処方されるジェネリック薬品には、最低薬価を下回る薬が多数存在し、製造しても赤字となるケースもある。赤字となる薬のために製造ラインを確保することは企業にとっても難しいところだろう。
また、薬をつくる原薬についても課題が大きい。日本の原薬自給率は非常に低く、多くを海外からの輸入に頼っており、海外情勢が不安定な昨今、原薬が足りないという事態も起こりうる。
日本国民の健康を守るためには、政府が主導して必要な薬の製造を指揮する必要があり、インフルエンザなどの本格流行シーズンが到来間近な今、薬の安定供給を確保することが急務といえるだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)
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