マイコプラズマ肺炎の増加に伴う当院での対策~検査キット不足に対応した診療体制~
- 2024年10月14日
- 発熱・咳外来
現在、全国的にマイコプラズマ感染症が流行しており、咳が長引く患者様が多く来院されています。今年は特に感染者が増加し、マイコプラズマ肺炎に進行するケースも多く見られます。さらに、全国的にマイコプラズマ抗原迅速検査キットが不足しているため、診断の難しさが増しています。
(東京都の報道発表、https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/09/27/09.htmlより引用)
今回は、マイコプラズマ肺炎に関する情報や当院での診断方法、特に検査キット不足への対応策について詳しく解説し、日曜祝日診療の重要性もご紹介します。
マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ感染症が進行して肺に炎症を引き起こす病態です。初期の症状は通常の風邪と似ていますが、進行すると高熱や激しい咳、そして肺炎へと発展します。
症状の特徴
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初期症状
喉の痛み、軽度の発熱、乾いた咳が見られます。この段階では風邪やインフルエンザとの区別が難しいです。 -
進行した場合の症状
高熱(39℃以上)、激しい咳、呼吸困難、胸痛などが現れます。特に咳は夜間にひどくなり、眠れないほど続くこともあります。
診断方法と検査キット不足への対応
全国的にマイコプラズマ抗原迅速検査キットが不足しており、当院でも迅速診断が難しい状況にあります。しかし、当院では以下の方法で正確な診断を行っています。
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マイコプラズマIgM抗体検査(PA法)
マイコプラズマ感染症の診断には、IgM抗体検査が有効です。この検査は初期感染の確認に用いられ、結果が出るまでに2日ほど日数がかかるものの、非常に信頼性の高い診断方法です。
Narita, M., & Togashi, T. (2003). [Evaluation of a rapid IgM antibody detection kit for diagnosis of Mycoplasma pneumoniae infection during childhood].. Kansenshogaku zasshi. The Journal of the Japanese Association for Infectious Diseases, 77 5, 310-5 . -
胸部レントゲン検査
マイコプラズマ肺炎の進行が疑われる場合、胸部レントゲンで炎症を確認し、肺の状態を評価します。
Miyashita, N., Kawai, Y., Yamaguchi, T., Ouchi, K., Oka, M., & Group, A. (2011). Clinical potential of diagnostic methods for the rapid diagnosis of Mycoplasma pneumoniae pneumonia in adults. European Journal of Clinical Microbiology & Infectious Diseases, 30, 439-446. -
症状による臨床診断
検査キットが不足している状況下では、臨床的な診断が重要です。患者様の咳や発熱の持続状況を総合的に判断し、適切な治療を行います。
マイコプラズマ感染症における抗生物質の必要性
自然治癒の可能性
軽度の呼吸器感染症の場合、抗生物質を使用しなくても回復することが多く、特に小児の軽度な症状では慎重な判断が求められます。
Spuesens, E., Sauteur, P., Vink, C., & Rossum, A. (2014). Mycoplasma pneumoniae infections–does treatment help?. The Journal of infection, 69 Suppl 1, S42-6 .
Cochraneレビューでも、マイコプラズマによる下気道感染症に対する抗生物質の有効性については十分なエビデンスがないという報告もあります。
Mulholland, S., Gavranich, J., & Chang, A. (2015). Antibiotics for community-acquired lower respiratory tract infections secondary to Mycoplasma pneumoniae in children.. The Cochrane database of systematic reviews, 7, CD004875 .
マクロライド耐性菌への対応
マイコプラズマ肺炎の治療には、咳止め、解熱剤、去痰薬といった対症療法に加えて、主にマクロライド系抗生物質(例:クラリスロマイシン、アジスロマイシン)がよく使われますが、近年は耐性菌の増加が問題となっています。特に日本では耐性菌の割合が非常に高く、治療が難しいケースが増えています。
Pereyre, S., Goret, J., & Bébéar, C. (2016). Mycoplasma pneumoniae: Current Knowledge on Macrolide Resistance and Treatment. Frontiers in Microbiology, 7.
マクロライド耐性が疑われる場合、ミノサイクリン(ミノマイシン)といったテトラサイクリン系抗生剤や、レボフロキサシン(クラビット)などのフルオロキノロン系抗生物質を使用します。これらの薬は耐性菌に対して有効で、治療の早期段階で切り替えることが推奨されます。
Gotoh, K., Nishimura, N., Kito, S., Haruta, K., Kozawa, K., Hibino, H., Kawaguchi, M., Noguchi, T., Fujishiro, N., Takemoto, K., & Ozaki, T. (2016). A Randomized Comparison of Minocycline and Tosufloxacin for the Treatment of Clinically Macrolide-Resistant Mycoplasma pneumoniae Pneumonia in ≥8-Year-Old Japanese Children. Open Forum Infectious Diseases, 3.
日曜祝日の診療について
当院では、週末や祝日にも診療を行っています。マイコプラズマ肺炎は進行が早く、症状が悪化した際には迅速な対応が必要です。当院では、胸部レントゲンやIgM抗体検査を駆使し、確実な診断と治療を行いますので、週末や休日でも安心してご来院いただけます。
ご家庭でのケアと予防策
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休息を取る
高熱が続く場合や咳がひどい場合は、しっかりと休息を取ることが大切です。 -
水分補給
脱水症状を防ぐため、こまめに水分を摂取しましょう。 -
換気と衛生管理
家族内での感染拡大を防ぐため、部屋の換気と手洗いを徹底してください。
当院での対応とお願い
当院では、マクロライド耐性菌への対策を含め、対応できる検査方法を使用して信頼性の高い診断と治療を行っています。検査キット不足が続く中でも、患者様に迅速で正確な対応を提供しております。何かご不安があれば、いつでもご相談ください。
皆さまの健康を守るために、スタッフ一同、全力でサポートさせていただきます。