【2026-2027シーズン版】インフルエンザワクチンはいつ打つのがベストか|厚労省・日本感染症学会・日本ワクチン学会の最新提言を踏まえて
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症/日本旅行医学会認定医・日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医)
2025-2026シーズンのインフルエンザは、H3N2の新しい変異系統「サブクレードK(J.2.4.1)」が早期から拡大し、東京都が16年ぶりに11月のうちにインフルエンザ警報を出すなど、例年にない早い立ち上がりで多くの方を悩ませました。前シーズンの経験を踏まえ、「2026-2027シーズンはいつワクチンを打てばよいのか」というご質問を診療の場でも数多くいただいています。
本記事では、2026年2月27日にWHO(世界保健機関)が公表した北半球2026-2027シーズンの推奨株、厚生労働省・国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所)の方針、日本感染症学会と日本ワクチン学会(JSVac)の最新提言を踏まえて、大人・高齢者・小児それぞれにとっての最適な接種時期を、五良会クリニック白金高輪・理事長の五藤良将がやさしく解説します。
🚨 結論:2026-2027シーズンは「10月接種開始・12月上旬までに完了」が推奨ライン
前シーズン同様、流行が11〜12月に立ち上がる可能性を想定し、10月中〜下旬に接種を開始し、遅くとも12月上旬までに完了することを推奨します。
出典:WHO Recommendations 2026-2027 NH(2026年2月27日)/厚生労働省 季節性インフルエンザワクチン関連資料/日本感染症学会 提言INDEX/日本ワクチン学会 見解・提言
1. なぜ「いつ打つか」が重要なのか
インフルエンザワクチンは、接種してすぐに効果が出るわけではありません。一般に抗体価が十分に上昇するまでに約2週間かかり、その後3〜5か月程度で徐々に低下していきます。日本のインフルエンザは例年12月下旬〜3月上旬がピークで、近年は11月から立ち上がる年も増えています。
つまり、ワクチンを打つタイミングが早すぎても遅すぎても、流行のピークと免疫のピークがずれてしまうのです。最も望ましいのは、流行開始直前に免疫が立ち上がっており、ピークの2〜3か月をしっかりカバーできるタイミング。これが「10月〜12月上旬接種」が広く推奨される理由です。
💡 押さえておきたい3つの数字
2週間:接種から十分な免疫が立ち上がるまでの期間
3〜5か月:抗体価が高く保たれる期間
34〜55%/82%:65歳以上での発病阻止効果/死亡阻止効果(厚労省・国内研究より)
2. 2025-2026シーズンの教訓 ― サブクレードKの早期流行
2025-2026シーズンは、H3N2(A香港型)の新しい変異系統「サブクレードK(J.2.4.1)」が、オーストラリアから欧州・日本へと急速に広がりました。ヘマグルチニン上に約7か所の変異が蓄積し、特にS144N変異によって新たな糖鎖シールドが形成され、既存の中和抗体が結合しにくくなったと報告されています。
その結果、日本でも11月時点で東京都が16年ぶりにインフルエンザ警報を発令するなど、流行カーブが例年より1か月以上早く立ち上がりました。「打とうと思っていたのに先に罹ってしまった」という患者さんも当院で多くいらっしゃいました。
⚠️ 2026-2027シーズンも「早期流行」のリスクは続く可能性
サブクレードKは依然として世界の主要循環株の一つで、抗原性のドリフトが続いています。「11月から流行が始まる前提」で接種計画を立てておくことが安全です。
3. 2026-2027シーズンのワクチン株(WHO・厚労省)
WHO(世界保健機関)は2026年2月27日、北半球2026-2027シーズンに使用する季節性インフルエンザワクチンの推奨株を公表しました。サブクレードKの世界的拡大を受けてH3N2株が更新されたのが大きな特徴です。
| タイプ | 鶏卵培養ワクチン(日本の主流) | 細胞培養/組換え/核酸ワクチン |
|---|---|---|
| A型 H1N1pdm09 | A/Missouri/11/2025 様 | A/Missouri/11/2025 様 |
| A型 H3N2 | A/Darwin/1454/2025 様 | A/Darwin/1415/2025 様 |
| B型 ビクトリア系統 | B/Tokyo/EIS13-175/2025 様 | B/Pennsylvania/14/2025 様 |
B型山形系統は2020年3月以降世界的に検出されておらず、2024-25シーズン以降3価ワクチン(A型2株+B型1株)に移行しています。2026-2027シーズンも同様に3価が用いられます。
日本国内の製造株は、令和8(2026)年5月の厚生科学審議会・予防接種ワクチン分科会・製造株検討小委員会でWHO推奨を踏まえて最終決定され、薬事承認・製造を経て10月から供給される見込みです。決定後の正式な株名は、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の感染症情報提供サイトおよび東京都感染症情報センターで公表されます。
⚠️ 注意
本記事掲載時点(2026年5月9日)で日本国内の最終的な製造株は未決定です。10月の接種開始時には、厚労省・JIHS・各メーカー添付文書の最新情報をご確認ください。
4. 接種の最適時期 ― 大人は10月〜12月上旬
厚生労働省・日本感染症学会・日本ワクチン学会(JSVac)はいずれも、毎年10月下旬から12月上旬までに接種を完了することを基本的な目安としてきました。2026-2027シーズンも、この基本ラインは変わりません。ただし前シーズンの早期流行を踏まえ、当院では10月中の接種開始を強く推奨しています。
| STEP 1 | 10月上旬〜中旬:接種開始(強く推奨) 受験生・医療従事者・基礎疾患のある方・高齢者・幼児を含む同居家族はこの時期に。 |
| STEP 2 | 10月下旬〜11月:標準接種期間 多くの一般成人にとって最も推奨される時期。家庭内伝播対策にもこの時期までが目安。 |
| STEP 3 | 12月上旬まで:完了が望ましい 「12月にようやく予約」では、ピークに免疫が間に合わない可能性が出てきます。 |
| STEP 4 | 1〜3月:未接種の方も間に合えば接種を 2〜3月に流行第2波(多くはB型)が来る年も。未接種の方はこの時期でも接種する価値があります。 |
📍 「9月の超早期接種」はどうか?
9月接種でも一定の効果は期待できますが、3〜4月まで抗体価を持続させたい場合はやや早すぎると考えるのが従来の整理です。受験生・出張の多い方など、個別事情に応じて柔軟に判断します。
5. 高齢者の定期接種スケジュール
65歳以上の方、および60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器・免疫機能に高度の障害をお持ちの方は、予防接種法B類疾病の定期接種対象となり、お住まいの自治体から助成(自己負担額の軽減)を受けることができます。
例年、定期接種は10月1日開始で、終了日は自治体ごとに1月末または2月末などに設定されています。港区など多くの自治体では当院でも定期接種に対応しております。
特にCOPD・心不全・糖尿病・透析・抗がん剤治療中の方は、10月のうちに接種を済ませておくのが安全です。
6. 小児の接種時期と回数
生後6か月〜13歳未満の小児は、2回接種が原則です(国内添付文書)。1回目と2回目の間隔は2〜4週間(4週間が望ましい)とされています。
2回接種を計算に入れると、「11月中旬に2回目を完了する」ためには10月上〜中旬に1回目を打つ必要があります。家庭内に高齢者・乳児・基礎疾患のある方がいるご家族は、お子さんの接種を早めに組み込むことが家庭内感染対策として極めて有効です。
| 年齢 | 接種量・回数 | 推奨開始時期 |
|---|---|---|
| 生後6か月〜2歳 | 0.25mL × 2回(2〜4週間隔) | 10月上旬〜 |
| 3歳〜12歳 | 0.5mL × 2回(2〜4週間隔) | 10月上旬〜 |
| 13歳〜18歳 | 0.5mL × 1〜2回 (基本1回。免疫不全時は2回検討) |
10月中旬〜11月 |
| 成人(妊婦・授乳婦含む) | 0.5mL × 1回 | 10月中旬〜11月 |
7. 経鼻ワクチン(フルミスト®)と注射ワクチンの選び方
2024-25シーズンから日本でも経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液」(第一三共)が国内承認・販売されています。2歳以上19歳未満を対象とした生ワクチンで、注射ではなく鼻腔スプレーで投与する点が大きな特徴です。
| 項目 | 注射(HAワクチン・不活化) | 経鼻(フルミスト®・生ワクチン) |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 生後6か月〜(全年齢) | 2歳以上19歳未満 |
| 接種回数 | 13歳未満は2回/13歳以上は1回 | 原則1回(鼻腔スプレー両鼻) |
| 主な禁忌・慎重投与 | 卵アレルギー(重症)、過去のアナフィラキシー | 重症喘息、免疫不全、妊娠、家族にハイリスク者がいる場合は要相談 |
| 費用感 | 任意接種:3,500〜4,500円前後/回(自治体助成あり) | 自費で7,000〜10,000円前後 |
| 適している方 | あらゆる年齢層、高齢者、基礎疾患のある方 | 注射が極端に苦手なお子さん、家庭内に免疫不全者がいない健康な学童 |
⚠️ 経鼻ワクチンを選ぶ際の重要な注意
日本小児科学会の使用に関する考え方(2024年9月)でも、重症免疫不全者と同居している場合は接種後数週間ウイルスを排出する可能性が指摘されています。家庭内に抗がん剤治療中の方や移植後の方がいる場合は、注射タイプを選ぶのが安全です。
8. 新型コロナワクチン・他ワクチンとの同時接種
2024年4月以降、新型コロナワクチンも65歳以上+ハイリスク者を対象とした定期接種(B類)として、毎年秋に接種が行われています。インフルエンザと新型コロナのワクチンは、同日・同時接種が可能です(左右の腕に分けて接種)。日本ワクチン学会・日本感染症学会いずれも、忙しい方・通院負担を減らしたい方には同時接種を推奨しています。
また、肺炎球菌ワクチン(PCV15/PPSV23)、帯状疱疹ワクチン(シングリックス®)、RSウイルスワクチン(アレックスビー®/アブリスボ®/mRESVIA®)なども、医師の判断のもと同日接種が可能です。
9. 副反応と接種前後の注意
不活化のインフルエンザHAワクチンは、長年の使用実績があり全体として安全性は高いワクチンです。よくみられる副反応は次の通りです。
頻度の高い副反応(接種後数日以内)
• 接種部位の発赤・腫脹・痛み(10〜20%)
• 微熱・頭痛・倦怠感(数%)
• 筋肉痛・関節痛(少数)
直ちに受診すべき症状(極めてまれ)
アナフィラキシー(呼吸困難・全身蕁麻疹・血圧低下)、ギラン・バレー症候群を疑う進行性の手足のしびれ・脱力など。発症は百万接種に1例程度の頻度と報告されています。
接種後の入浴は可能ですが、接種部位を強くこすらないでください。激しい運動・大量飲酒は当日避けるのが無難です。発熱を伴う体調不良がある日は接種を延期します。
10. 理事長コメント
2026-27シーズンも『早く立ち上がる前提』で、10月のうちに接種を始めることを強く推奨します。基礎疾患のある方・高齢者・お子様のいるご家庭は、家族全員で同じ秋のうちに完了するのが理想です。新型コロナ・帯状疱疹・肺炎球菌・RSなど他のワクチンも合わせて、白金高輪の1Fでまとめて計画することができます。海外渡航前の方は当院のトラベルクリニックでも対応可能ですので、お気軽にご相談ください。」
11. よくある質問(FAQ)
12. まとめ
✅ 日本国内の製造株は2026年5月の厚労省小委員会で決定、10月から供給予定
✅ 接種開始は10月、完了目標は12月上旬。前シーズンの早期流行を踏まえ「早めに」が原則
✅ 65歳以上は10月1日からの定期接種を活用、基礎疾患のある方も10月接種を推奨
✅ 13歳未満の小児は2回接種・10月上旬から開始を計画
✅ 経鼻ワクチン(フルミスト®)は2〜18歳が対象、家庭環境を踏まえて選択
✅ 新型コロナ・肺炎球菌・帯状疱疹・RSウイルスワクチンとの同時接種で「秋のワンストップ予防」が可能
海外渡航前のワクチン接種・健康相談を一括して承っております。
✅ 黄熱・髄膜炎菌・狂犬病など輸入ワクチンも対応
✅ 英文接種証明書・診断書の発行
✅ 同日複数接種・出発までの最適スケジュール提案
参考文献・出典
1. World Health Organization. Recommendations for influenza vaccine composition for the 2026-2027 northern hemisphere season. 2026年2月27日.
2. 厚生労働省. 季節性インフルエンザワクチン関連情報・接種時期協力依頼.
3. 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト. インフルエンザワクチン株情報.
4. 日本感染症学会. 2025/26シーズンに向けたインフルエンザワクチン接種に関する考え方とトピックス(2025年10月3日)/提言INDEX.
5. 日本ワクチン学会. 2025/26期の季節性インフルエンザワクチン接種に関する見解(2025年9月24日).
6. 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会. 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方(2024年9月2日).
7. 第一三共株式会社. フルミスト点鼻液 製品情報・添付文書.
8. CIDRAP / WHO Press release. WHO recommendations on influenza virus vaccines for 2026-27 northern hemisphere flu season.
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