CagriSema(カグリセマ)とは?マンジャロに敗れた«もう一つの次世代肥満薬»|アミリンアナログ徹底解説
2026年2月23日、ノボ ノルディスク社が「マンジャロのライバル」として開発を進めてきた次世代肥満薬CagriSema(カグリセマ)の直接比較試験(REDEFINE 4)の結果が発表されました。市場の注目はトリプルGアゴニストUBT251・レタトルチドに集まる中、CagriSemaはマンジャロ(チルゼパチド)との非劣性を示せず、ノボ・ノルディスクの株価が1日で約15%下落(時価総額約1,000億ドル消失)という衝撃的なニュースでした。
«敗者»という見方もある一方で、CagriSemaは世界初の«アミリンアナログ+GLP-1»という新しい作用機序を持つ画期的な薬剤です。アミリンとは何か、なぜ研究者がこのホルモンに注目したのか、そして将来日本でどう位置づけられる可能性があるのか――本記事で詳しく解説します。
📋 この記事の内容
1. CagriSemaとは何か ― セマグルチド+カグリンチドの配合剤
CagriSemaは、ノボ ノルディスク社が開発する2成分配合の週1回皮下注射剤です。
| 成分 | 機序 | 既存薬 |
|---|---|---|
| セマグルチド 2.4mg | GLP-1受容体作動薬 | ウゴービと同成分 |
| カグリンチド 2.4mg | 長時間作用型アミリンアナログ | 新規(プラムリンチドの改良版) |
2. アミリンというホルモン ―「第二の食欲抑制ホルモン」
アミリン(Islet Amyloid Polypeptide, IAPP)は、1987年に発見された膵臓β細胞由来のホルモンで、インスリンと同時に分泌されます。生理学的には食後にインスリンと一緒に血中へ放出され、以下の作用を発揮します。
| アミリンの作用 | 体への効果 |
|---|---|
| 満腹中枢への直接作用 | 食欲抑制(GLP-1と異なる経路) |
| 胃排出遅延 | 食後血糖の急上昇を抑制 |
| グルカゴン分泌抑制 | 食後の肝糖放出を抑制 |
| 報酬系(食事の快楽)の調節 | 過食衝動の抑制 |
💡 プラムリンチドの教訓
2005年に1型糖尿病補助治療として承認されたアミリンアナログ«プラムリンチド(Symlin®)»は、半減期20分と短く食前3回注射が必要で、普及しませんでした。カグリンチドはこれを週1回投与可能な形に改良した新世代分子です。
3. なぜGLP-1とアミリンを組み合わせたのか
両者はともに食欲抑制ホルモンですが、異なる脳領域・異なる神経回路に作用します。GLP-1は孤束核(NTS)→ 視床下部、アミリンは最後野(AP)→ 視床下部に作用し、相加的な食欲抑制が期待されました。実際、Phase 2試験ではセマグルチド単独の約2倍の体重減少(最大22.7%)を示し、大きな期待を集めていました。
4. REDEFINE 4試験 ― マンジャロとの直接対決の結果
🔬 REDEFINE 4試験(Phase 3、84週、オープンラベル)
肥満症患者(糖尿病なし)751名を対象に、CagriSema 2.4/2.4mg/週 vs チルゼパチド15mg/週を直接比較:
• CagriSema:治療完遂時 −23.0%、実臨床想定 −20.2%
• チルゼパチド(マンジャロ):治療完遂時 −25.5%、実臨床想定 −23.6%
• 主要評価項目(非劣性):未達
2026年2月23日、ノボ ノルディスク株は1日で約15%下落、時価総額約1,000億ドルが消失する事態に。
• CagriSema:治療完遂時 −23.0%、実臨床想定 −20.2%
• チルゼパチド(マンジャロ):治療完遂時 −25.5%、実臨床想定 −23.6%
• 主要評価項目(非劣性):未達
2026年2月23日、ノボ ノルディスク株は1日で約15%下落、時価総額約1,000億ドルが消失する事態に。
CagriSemaの位置づけは«明確な敗北»
2.5%差は統計学的にも臨床的にも有意で、CagriSemaがマンジャロを上回るシナリオは事実上消滅しました。それでも23%の体重減少は単独の減量薬として十分強力であり、マンジャロが使えない・効きにくい症例での選択肢として位置づけられる可能性があります。
5. REDEFINE 1試験 ― 単独の減量効果は23%
プラセボ対照のREDEFINE 1試験(68週)では、CagriSemaは22.7%の体重減少を達成。これは単独試験としては優秀で、ウゴービの15%、リベルサスの数値を大きく上回ります。
6. FDA申請状況と日本での見通し
| 地域 | 承認状況 |
|---|---|
| 米国(FDA) | 2025年12月申請、2026年末の承認見込み |
| 欧州(EMA) | 2025年内に申請、2027年承認見込み |
| 日本(PMDA) | 未承認・申請時期未定(2026年5月時点) |
7. トリプルGアゴニストとの比較
| 薬剤 | 作用機序 | 最大減量率 | 投与期間 |
|---|---|---|---|
| CagriSema | GLP-1+アミリン(デュアル) | 約23% | 84週 |
| マンジャロ | GLP-1+GIP(デュアル) | 約25.5% | 72週 |
| レタトルチド | GLP-1+GIP+グルカゴン(トリプル) | 約28.7% | 68週 |
| UBT251 | GLP-1+GIP+グルカゴン(トリプル) | 約19.7%(24週) | 24週 |
8. 副作用と安全性
CagriSemaの副作用プロファイルは、GLP-1系と同様の消化器症状が中心ですが、アミリン由来の副作用として注射部位反応、軽度の悪心増強、過食行動への影響が報告されています。マンジャロと比較して悪心の頻度がやや高い傾向があります。
9. 理事長コメント
💬 理事長 五藤良将より
「CagriSemaの«敗北»は、マンジャロ=チルゼパチドのGIP/GLP-1デュアル設計の優秀さを再確認させると同時に、肥満治療の開発がいかに熾烈な競争であるかを物語っています。研究は«勝者»だけが意味を持つわけではありません。アミリンというホルモンの治療応用への光を当てた点で、CagriSemaの開発は意義深い一歩でした。患者さまにとって大事なのは«いま日本で安全に使える最良の薬»を選ぶことです。当院では最新の世界動向を踏まえつつ、日本で承認された薬剤の中で最適な選択を一緒に組み立てます。」
10. まとめ
📝 この記事のポイント
✅ CagriSemaはセマグルチド(GLP-1)+カグリンチド(アミリンアナログ)の週1回配合剤
✅ アミリンは膵β細胞由来のもう一つの食欲抑制ホルモン
✅ REDEFINE 4試験でマンジャロとの直接比較に敗北(−23% vs −25.5%)
✅ 単独試験では−22.7%の優秀な減量効果
✅ FDA承認は2026年末、日本承認は未定
✅ トリプルGアゴニストの28.7%減量と比較すると見劣りも、安全性プロファイルでは選択肢に
✅ 日本で使うのはまだ先、現状はマンジャロ・ウゴービ・リベルサスを軸に組み立てる
✅ アミリンは膵β細胞由来のもう一つの食欲抑制ホルモン
✅ REDEFINE 4試験でマンジャロとの直接比較に敗北(−23% vs −25.5%)
✅ 単独試験では−22.7%の優秀な減量効果
✅ FDA承認は2026年末、日本承認は未定
✅ トリプルGアゴニストの28.7%減量と比較すると見劣りも、安全性プロファイルでは選択肢に
✅ 日本で使うのはまだ先、現状はマンジャロ・ウゴービ・リベルサスを軸に組み立てる
11. よくあるご質問
Q1. CagriSemaがマンジャロより劣るなら、開発する意味は?
A. 副作用プロファイル、糖尿病合併例、心血管リスク、コストなどで«マンジャロが合わない方»の選択肢となります。また肥満治療の世界では複数の作用機序を持つ薬が並存することが、患者個別化治療の幅を広げます。
Q2. アミリンとインスリンは違うのですか?
A. 別の29アミノ酸からなるホルモンですが、両方とも膵β細胞から同時に分泌されます。インスリンは血糖を下げる、アミリンは食欲抑制・胃排出遅延と分担が異なります。
Q3. プラムリンチドは日本でも使えますか?
A. 日本では承認されていません。米国でも1型糖尿病補助療法での使用が中心で、肥満症適応は持っていません。
Q4. レタトルチドが最強なら、なぜCagriSemaの開発を続けるの?
A. レタトルチドはトリプル作動なので副作用プロファイルが異なります。グルカゴン作用による血糖上昇や肝負荷の心配がある症例ではCagriSemaのほうが安全な選択肢になる可能性があります。
Q5. ノボ ノルディスクは今後どんな薬を開発?
A. UBT251(中国合弁のトリプルGアゴニスト)、経口アミクレチン(アミリン経口薬)、その他複数のパイプラインを進めています。CagriSemaの«敗北»後も開発は積極的に継続されています。
Q6. CagriSemaが日本で使えるのはいつ?
A. 米国承認後、日本での申請・審査を経て2028〜2030年頃が目安となります。
Q7. 個人輸入で先に試したいのですが
A. 強く推奨しません。未承認薬の個人輸入は副作用救済制度の対象外で、品質保証もありません。当院では未承認薬の処方・輸入代行は行いません。
参考文献
1. Novo Nordisk A/S. CagriSema demonstrated 23% weight loss in REDEFINE 4 trial. GlobeNewsWire. 2026年2月23日.
2. Garvey WT, et al. Once-weekly CagriSema in adults with obesity (REDEFINE 1 Phase 3). Pre-publication. 2025.
3. Frias JP, et al. Phase 2 study of CagriSema in adults with obesity. Lancet. 2021;397(10286):1736-1748.
4. Lutz TA. The role of amylin in the control of energy homeostasis. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2010;298(6):R1475-1484.
5. Hay DL, Chen S, Lutz TA, et al. Amylin: Pharmacology, Physiology, and Clinical Potential. Pharmacol Rev. 2015;67(3):564-600.
2. Garvey WT, et al. Once-weekly CagriSema in adults with obesity (REDEFINE 1 Phase 3). Pre-publication. 2025.
3. Frias JP, et al. Phase 2 study of CagriSema in adults with obesity. Lancet. 2021;397(10286):1736-1748.
4. Lutz TA. The role of amylin in the control of energy homeostasis. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2010;298(6):R1475-1484.
5. Hay DL, Chen S, Lutz TA, et al. Amylin: Pharmacology, Physiology, and Clinical Potential. Pharmacol Rev. 2015;67(3):564-600.
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理事長 五藤 良将