大腸がんの約半数に「腸内細菌の毒素」が関与|原因菌コリバクチンと今できる予防を理事長・五藤良将が解説
- 2026年10月24日
- 健康診断・人間ドック,消化器内科,大腸カメラ(大腸内視鏡)
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
「大腸がんの約半数に、腸内細菌がつくる毒素が関わっていた」——2026年8月、東京大学・大阪大学などの研究チームが英科学誌Nature Geneticsにこうした研究結果を発表し、新聞やテレビでも大きく取り上げられました。とくに40歳未満で発症した若い大腸がんでは約7割にその痕跡が見つかったことから、「自分も原因菌を持っているのでは」「ピロリ菌のように除菌できないの?」というご質問を、外来でもいただくようになりました。
結論から申し上げると、原因菌を調べて除菌する予防法は、まだ研究段階です。一方で、大腸がんは「早く見つければ治せるがん」であることに変わりはありません。この記事では、話題の毒素「コリバクチン」とは何か、何がわかって何がまだわからないのか、そしていま私たちにできる確実な対策を、理事長の五藤良将が解説します。
THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY
医療法人社団 五良会 理事長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。
1. 何がわかったのか|日本人大腸がんの約半数に「毒素の痕跡」
大腸がんは、日本人でかかる人がもっとも多いがんの一つです。これまで「食生活の欧米化」が増加の主な理由と考えられてきましたが、それだけでは説明しきれない部分が残っていました。
今回の研究では、東京と大阪の大腸がん患者さん200例について、がん細胞の遺伝子をすべて読む全ゲノム解析を行い、遺伝子に残された「傷のつき方のパターン」を調べました。
▶ 40歳未満で発症した若年大腸がんでは約70%。年齢が上がるほど割合は低下
▶ 1965年以降に生まれた世代で高頻度
▶ 欧米を含む他国を対象とした2025年の国際共同研究では5〜20%程度で、日本人は突出して高い
▶ コリバクチンの痕跡をもつがんでは、がん化の最初の一歩となる遺伝子(APC)の変異が10歳未満ですでに起きていた可能性
出典:Shibata S, Yachida S, et al. Nature Genetics. 2026年8月10日オンライン公開(DOI: 10.1038/s41588-026-02692-x)/大阪大学・東京大学医科学研究所・東京科学大学・国立がん研究センター中央病院 共同プレスリリース
2. 毒素「コリバクチン」とは?
私たちの腸には数百種類以上の細菌がすんでおり、まとめて腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と呼ばれます。そのなかで大腸菌が占める割合はごくわずかで、さらにその一部の大腸菌だけが「コリバクチン」という毒素をつくります。
コリバクチンはDNAを直接傷つける「遺伝毒素」です。腸の粘膜細胞の遺伝子に傷が入り、それが長い年月をかけて積み重なることで、がん化が進むと考えられています。研究チームは、この毒素が遺伝子に残す特徴的な「傷跡のパターン」を手がかりに、がんとの関係を突き止めました。
📖 用語解説
pks陽性大腸菌(コリバクチン産生大腸菌):コリバクチンをつくる遺伝子のまとまり(pksアイランド)をもつ大腸菌のこと。大腸菌そのものは誰の腸にもいる常在菌で、多くはこの遺伝子をもっていません。
変異シグネチャー:発がん要因ごとに異なる「遺伝子の傷のつき方のクセ」。たばこ・紫外線・加齢などにもそれぞれ固有のパターンがあり、コリバクチンの場合はSBS88・ID18と呼ばれるパターンが残ります。いわば犯人の指紋のようなものです。
ドライバー遺伝子(APC など):変異が起きるとがん化を直接押し進める遺伝子。APC遺伝子の変異は、大腸がんの多くで最初期に起きる変化とされています。
全ゲノム解析:遺伝子の一部ではなく、DNAの全塩基配列を読み取って調べる解析方法です。
3. なぜ若い世代の大腸がんに多いのか
大腸がんは、1回の遺伝子の傷ですぐにできるわけではありません。複数のがん関連遺伝子に変異が段階的に積み重なり、数十年かけてがんになります。
赤ちゃんは生まれる前は腸内細菌をもっておらず、出産時やその後の家族との接触を通じて菌を受け取り、10代ごろまでに腸内細菌叢が安定していきます。研究者らは、幼い時期にコリバクチン産生菌が定着すると、最初の遺伝子変異が早い年齢で入り、その後の段階も前倒しで進むため、若くしてがんが発症しやすくなるのではないかと考えています。
この見方は海外の研究とも一致します。2025年にNature誌に発表された11か国・981例の大腸がんの国際共同研究でも、コリバクチン関連の変異は40歳未満で診断された人では、70歳以上で診断された人の約3.3倍多く見られ、その曝露は生後10年以内に起きている可能性が示されました。
⚠️ 「子どもの抗菌薬」について誤解のないように
報道では、研究者の見解として「幼少期の抗菌薬投与が、この菌の定着に影響しているかもしれない」という仮説も紹介されています。ただしこれはまだ検証されていない仮説です。肺炎や尿路感染症など、抗菌薬が本当に必要な場面で使用をためらうことのないようにしてください。一方で、かぜ(ウイルス感染)に抗菌薬は効かないため、「念のため」の抗菌薬を求めないことは、薬剤耐性対策の観点からも大切です。
4. 「原因菌を持っている=がんになる」ではありません
報道によると、日本人の便を調べた研究では、50歳未満の健康な人でも3人に2人程度がコリバクチン産生菌を持っていたと紹介されています。つまり、この菌を持っていることは決して珍しくなく、持っている人の大部分は大腸がんになりません。
発症に至るかどうかには、菌が定着した時期のほか、飲酒・喫煙・肥満・運動不足などの生活習慣、体質など、複数の要因が関わると考えられていますが、詳しい仕組みはまだわかっていません。必要以上に不安になる必要はありません。
・だからこそ、症状がなくても検診を受け、早期発見につなげること
・確立した生活習慣のリスク(飲酒・喫煙・肥満・運動不足)を減らすこと
5. ピロリ菌のように除菌できる?検査は受けられる?
除菌は「まだできない」
胃がんの主な原因であるピロリ菌は、抗菌薬で胃から除菌できます。しかし大腸で同じことをすると、大切な腸内細菌叢全体を傷つけ、かえって健康を損なうおそれがあります。大腸菌そのものは誰にでもいる常在菌であり、「毒素をつくる一部の菌だけ」を狙い撃ちにする方法が必要です。
現在、特定の細菌だけに感染するウイルス「ファージ」の酵素を使って狙った菌だけを倒す研究や、IgA抗体で菌の増殖を抑える研究などが進められていますが、いずれも動物実験などの段階です。
| 項目 | ピロリ菌(胃がん) | コリバクチン産生大腸菌(大腸がん) |
|---|---|---|
| 菌の性質 | 本来いなくてよい病原菌 | 常在菌である大腸菌の一部 |
| 検査 | 保険診療で確立(呼気・便・血液・内視鏡) | 便中の毒素遺伝子を調べる方法は研究段階 |
| 除菌 | 抗菌薬による除菌治療が確立 | 確立した方法なし(ファージ・IgA抗体などを研究中) |
| いまできる対策 | 検査・除菌+胃内視鏡 | 便潜血検査+大腸内視鏡で早期発見 |
「原因菌の検査」は受けたほうがいい?
便に含まれるコリバクチン産生遺伝子を調べることで、菌の有無を推定することは技術的には可能です。ただし、結果が陽性でも陰性でも、その後の対応(除菌・予防法)が確立していないのが現状です。陰性だったから検診は不要、ということにもなりません。
当院としては、現時点で菌の有無を調べることよりも、便潜血検査と大腸内視鏡検査で「がんやポリープそのもの」を早く見つけることを優先していただくようおすすめしています。
6. いまできる確実な対策|便潜血検査と大腸カメラ
腸内細菌のコントロールはまだ難しくても、大腸がんは早期に見つければ治せる可能性が高いがんです。大腸がんの多くは、良性のポリープ(腺腫)が時間をかけてがん化するため、ポリープの段階で見つけて切除することが、がんそのものの予防にもつながります。
▶ 全大腸内視鏡検査(大腸カメラ):検診としての推奨グレードはC。人間ドックなど任意型検診では、利益と不利益を医師と共有したうえで個人の判断で選択
▶ 便潜血陽性となった方の精密検査としての大腸カメラの重要性は変わらない
出典:国立がん研究センター「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン 2024年度版」(2024年11月27日公表)
あなたに合った受け方の目安
| こんな方 | おすすめ |
|---|---|
| 40歳以上で症状のない方 | 毎年の便潜血検査(港区在住の方は区の大腸がん検診を自己負担なしで受けられます) |
| 便潜血検査で「陽性」と言われた方 | 1回陽性なら必ず大腸カメラ。「もう一度便の検査」「痔のせい」で済ませないでください |
| 親・きょうだいに大腸がんの方がいる方 | 年齢にかかわらず、一度医師にご相談ください。大腸カメラを含めた計画を立てます |
| 過去に大腸ポリープを切除した方 | ポリープの種類・数に応じた間隔で、定期的な大腸カメラ |
| 20〜30代でも症状がある方 | 検診の対象年齢を待たずに受診(次章の症状をご確認ください) |
生活習慣でできること
腸内細菌の影響とは別に、大腸がんには生活習慣のリスクもはっきりしています。お酒を控える、たばこをやめる、適正体重を保つ、体を動かす、加工肉・赤身肉をとり過ぎない、といった基本的な対策は、今日から始められる確実な予防です。肥満や糖尿病の管理も大切で、当院では生活習慣病の診療とあわせてご相談いただけます。
7. 年齢に関係なく受診してほしい症状
今回の研究が示したように、大腸がんは「中高年だけの病気」ではありません。若い方は「まさか自分が」と受診が遅れやすく、発見時に進行しているケースもあります。次のような症状があれば、年齢に関係なくご相談ください。
🚨 早めの受診をおすすめする症状
・便に血が混じる、黒っぽい便が出る(「痔だと思っていた」は要注意)
・便秘と下痢をくり返す、便が細くなったなど便通の変化が続く
・残便感、おなかの張りや痛みが続く
・健康診断で貧血を指摘された、疲れやすい・動悸・息切れがある
・理由のわからない体重減少
8. よくあるご質問(FAQ)
9. 理事長コメント
当院は白金高輪駅から徒歩1分、土日祝も診療しており、港区の大腸がん検診から大腸カメラ、貧血などの血液の異常、生活習慣病の管理まで同じクリニックで対応しています。ニュースを見て不安になった方も、まずはお気軽にご相談ください。」
10. まとめ
✅ 幼い時期に菌が定着することで、若くして発症しやすくなる可能性がある
✅ 健康な人でも保菌は珍しくなく、「保菌=がん」ではない
✅ 原因菌の検査・除菌による予防は、まだ研究段階
✅ いまできる確実な対策は、40歳からの毎年の便潜血検査と、陽性時の大腸カメラ
✅ 血便・便通の変化・貧血などがあれば、年齢に関係なく受診を
🏥 11. 白金高輪で診るという選択(当院が選ばれる理由)
大腸がんの対策は、検診を受けることと、異常があったときにすぐ精密検査につなげることがセットです。当院では、その流れを一つのクリニックで完結できる体制を整えています。
理由① 検診から大腸カメラまで一貫対応
港区の大腸がん検診(便潜血検査・40歳以上)を実施しており、陽性となった場合の大腸カメラも当院で受けられます。
理由② 鎮静剤を使った内視鏡検査
ご希望に応じて静脈麻酔による鎮静下で検査を行います。ポリープは大きさや形により、検査中にその場で切除できます。
理由③ 土日祝も内視鏡検査
日曜・祝日は10:00〜15:00、土曜も第1・第2・第4週に内視鏡検査を行っています。平日に休みにくい方もご相談ください。
理由④ 貧血など血液の異常にも対応
血液内科を併設しています。健診で指摘された貧血の原因検索から、消化管出血を疑う場合の内視鏡まで連携して進めます。
理由⑤ 生活習慣病の管理も同じ場所で
大腸がんのリスクにも関わる肥満・糖尿病などの生活習慣病を、日本糖尿病協会登録医の理事長が診療しています。
理由⑥ 白金高輪駅2番出口 徒歩1分
東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪駅」2番出口から徒歩1分、プレミストタワー白金高輪1Fです。
ニュースを見て不安になった方、便潜血が陽性だった方は、一度ご相談ください。
参考文献・出典
- Shibata S, Yachida S, et al. Nature Genetics. 2026 Aug 10. DOI: 10.1038/s41588-026-02692-x
- 大阪大学大学院医学系研究科・東京大学医科学研究所ほか プレスリリース「日本人大腸がんの主要な原因は”腸内細菌”だった」2026年8月10日
- Díaz-Gay M, et al. Geographic and age variations in mutational processes in colorectal cancer. Nature. 2025;643:230-240.
- 国立がん研究センター「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン 2024年度版」2024年11月27日公表
- 日本経済新聞 電子版「大腸がんに実は『原因菌』、日本人患者の半数に関与 駆除で予防なるか」2026年10月24日
- 港区 健康診査・がん検診のご案内(令和8年度)
AUTHOR / SUPERVISOR
医療法人社団 五良会 理事長 五藤 良将(ごとう よしまさ)
- 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
- 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
- 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
- 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
- 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
- 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数
執筆・監修責任について
本記事は、五藤良将が公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆・監修しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、五良会クリニック白金高輪(03-6432-5353)までお知らせください。
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