食べ物が「つかえる」「飲み込みにくい」を繰り返す方へ|好酸球性食道炎(EoE)の症状・内視鏡診断と治療【消化器内視鏡専門医が解説】
執筆:五良会クリニック白金高輪|院長 玉井博修(日本内科学会 総合内科専門医・指導医/日本消化器病学会 専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医/日本肝臓学会 専門医・指導医)
共著:医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
「お肉やパンが喉のあたりでつかえる」「よく噛まないと飲み込みにくい」「食事のたびに水で流し込む癖がついた」——そんな症状に心当たりはありませんか。港区・白金高輪でも、健診の胃カメラや、繰り返す胸やけの精査をきっかけに、食道の粘膜から好酸球性食道炎(EoE:Eosinophilic Esophagitis)が見つかる方が増えています。
好酸球性食道炎は、食物などに対するアレルギー反応によって好酸球という白血球が食道の粘膜に集まり、慢性の炎症を起こす病気です。胃酸の逆流が原因の逆流性食道炎とは異なるメカニズムで起こり、市販の胃薬だけでは改善しないことも少なくありません。放置すると食道が硬く狭くなり、食べ物が完全に詰まって救急受診が必要になる(食物嵌頓)こともあるため、正しい理解と診断が大切です。この記事では、症状の特徴から内視鏡診断、最新の治療の考え方まで、消化器内視鏡専門医の立場から整理します。
📌 この記事の結論
「つかえ感」「飲み込みにくさ」「食後の胸のつかえ」が数か月〜数年単位で繰り返す場合は、胃酸の逆流だけでなく好酸球性食道炎の可能性があります。診断には上部消化管内視鏡(胃カメラ)と生検(組織検査)が必須で、血液検査だけでは診断できません。治療の第一選択はプロトンポンプ阻害薬(PPI)で、効果が不十分な場合はのみ込むステロイドや食物除去食を組み合わせます。喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎をお持ちの方は特にリスクが高い病気です。
1. 好酸球性食道炎とは?逆流性食道炎との根本的な違い
好酸球性食道炎は、食物などの抗原に対するアレルギー反応が食道に慢性の炎症を引き起こす疾患です。好酸球はもともとアレルギー反応や寄生虫感染に関わる白血球の一種で、通常は食道の粘膜にはほとんど存在しません。好酸球性食道炎では、この好酸球が食道の粘膜に異常に集まり(浸潤し)、炎症とそれに伴う組織のこわばり(線維化)を引き起こします。
よく混同されるのが逆流性食道炎(胃食道逆流症)です。逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流することで粘膜が傷つく病気ですが、好酸球性食道炎はアレルギー・免疫反応が主体という点で成り立ちが異なります。両者は症状が似ており合併することもあるため、市販の胃薬や医師の処方するPPIだけで様子を見ていて診断が遅れるケースが少なくありません。
指定難病としての位置づけ
好酸球性食道炎は、好酸球性胃腸炎などとともに「好酸球性消化管疾患」(指定難病98)として、厚生労働省により2015年度から指定難病に位置づけられています。すべての患者さんが対象になるわけではなく、症状・内視鏡所見・組織所見から一定以上の重症度と判定された場合に医療費助成の対象となります。詳しくは後述のFAQでも解説します。
2. どんな症状が出る?つかえ感・食物嵌頓(食べ物が詰まる)
成人の好酸球性食道炎で最も特徴的な症状は嚥下困難(飲み込みにくさ)とつかえ感です。特徴的なのは、症状が徐々に進行するため、患者さん自身が無意識のうちに「よく噛む」「水で流し込む」「肉やパンなど硬いものを避ける」といった食べ方の工夫(適応的な食行動)で症状をやり過ごしてしまい、受診が遅れる点です。
| 年代 | 出やすい症状 |
|---|---|
| 成人 | 嚥下困難、食後のつかえ感、胸やけ様症状、胸痛、まれに体重減少 |
| 小児 | 哺乳・摂食不良、嘔吐、腹痛、食事拒否、成長・体重増加の停滞 |
⚠️ 食物嵌頓(しょくもつかんとん)は緊急事態です
お肉やパンなどの塊が食道に完全に詰まり、飲み込めない・つばも飲み込めない状態を食物嵌頓といいます。窒息や食道穿孔のリスクがあるため、緊急内視鏡による除去が必要です。好酸球性食道炎の方は、診断される前にこの食物嵌頓で救急搬送されて初めて病気が判明することも珍しくありません。
3. なぜ増えている?好発年齢とアレルギー疾患との関係
好酸球性食道炎は男性に多く(男女比はおよそ4対1)、30〜50歳代での発症が目立ちますが、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層でみられます。欧米の報告では人口10万人あたり約50〜90人程度の有病率とされ、内視鏡検査の普及や疾患概念の認知度向上とともに、日本でも診断される件数が増加傾向にあります。
4. 診断の流れ:内視鏡検査と生検(組織検査)
好酸球性食道炎は、症状(嚥下困難・つかえ感など)+内視鏡検査+生検による組織診断の3つを組み合わせて診断します。血液検査だけで確定することはできません。
内視鏡で見られる特徴的な所見
| 所見 | 内容 |
|---|---|
| 縦走溝 | 食道の粘膜に縦方向の溝状のへこみが複数本みられる、最も典型的な所見 |
| 輪状溝・気管様食道 | 食道が輪状の溝で区切られ、気管のような見た目になる所見 |
| 白色滲出物 | 好酸球の集簇を反映した白い斑点状の付着物 |
| 狭窄・脆弱粘膜 | 病状が進むと食道内腔が狭くなり、粘膜が薄い紙のように裂けやすくなる |
⚠️ 内視鏡所見が「正常」に見えることもあります
好酸球性食道炎の患者さんの一部では、内視鏡で明らかな異常が確認しづらいこともあります。そのため、症状から疑った場合は所見の有無にかかわらず複数か所から生検を行うことが推奨されています。生検で食道の上皮に好酸球が1視野(400倍・HPF)あたり15個以上認められることが、診断の中心的な基準です。
2025年の診断の考え方のアップデート
かつては「PPIを一定期間内服しても好酸球浸潤が改善しない場合のみ好酸球性食道炎と診断する」というPPI診断的治療の考え方が用いられていました。しかし2025年1月に米国消化器病学会(ACG)が公表した診療ガイドラインでは、PPIへの反応性を診断の必須条件から外し、PPIは診断のためのテストではなく治療の選択肢の一つとして位置づける方向に整理されています。国内でも今後のガイドライン改訂で同様の考え方が反映されるか、引き続き学会動向を注視する必要があります。
5. 逆流性食道炎・機能性ディスペプシアとの見分け方
「胸やけ」「胃もたれ」「つかえ感」はいずれもよくある消化器症状のため、自己判断で市販薬に頼ってしまいがちです。以下のような特徴があるときは、単なる胃酸の逆流や胃もたれと決めつけず、一度内視鏡での精査をおすすめします。
| 病気 | 主な症状の特徴 | 診断の決め手 |
|---|---|---|
| 好酸球性食道炎 | 固形物中心のつかえ感・嚥下困難、食物嵌頓の既往 | 内視鏡+生検で好酸球15個/HPF以上 |
| 逆流性食道炎 | 胸やけ、呑酸(酸っぱいものが上がる感じ)、食後に悪化 | 内視鏡での粘膜びらん、PPIで速やかに改善 |
| 機能性ディスペプシア | みぞおちの痛み・胃もたれが中心、つかえ感は目立たない | 内視鏡で器質的異常なし |
6. 治療1:まずはPPI(プロトンポンプ阻害薬)
好酸球性食道炎と診断された場合、副作用が少なく開始しやすいことからPPI(プロトンポンプ阻害薬)が第一選択として推奨されています。逆流性食道炎の治療薬というイメージが強い薬ですが、好酸球性食道炎そのものの炎症を抑える効果(抗炎症作用)も報告されており、約半数程度の患者さんで組織学的な改善が得られるとされています。効果判定には、治療開始から一定期間後に内視鏡と生検を再度行い、好酸球数の変化を確認することが重要です。
7. 治療2:のみ込むステロイド・食物除去食
PPIで十分な改善が得られない場合は、以下の治療を単独または組み合わせて検討します。
局所(嚥下)ステロイド療法
吸入用のステロイド製剤を吸わずに、のみ込んで食道の粘膜に直接作用させる治療法です。全身に吸収される量がごく少ないため、内服ステロイドに比べて全身性の副作用は抑えられますが、口腔・食道のカンジダ症(口腔内カビ感染)を防ぐため、使用後のうがいが重要です。
食物除去食
乳製品・小麦・卵・大豆・ナッツ類・魚介類など、原因となりやすい食品を一定期間除去し、内視鏡と生検で改善を確認しながら少しずつ食品を戻していく方法です。効果が期待できる一方、栄養面の管理や食生活への負担が大きいため、管理栄養士や専門医と相談しながら計画的に進めることが望まれます。血液検査(特異的IgE抗体)や皮膚テストだけで原因食品を正確に絞り込むことは難しいとされている点にも注意が必要です。
8. 新しい治療の動向:生物学的製剤と国内の状況
近年、アレルギー疾患の炎症に関わる物質(IL-4・IL-13)の働きを抑える生物学的製剤・デュピルマブが、好酸球性食道炎の新しい治療選択肢として注目されています。米国では2022年5月20日にFDAが12歳以上・体重40kg以上の患者を対象に承認し、好酸球性食道炎に対する世界初の治療薬となりました。その後、より若い年齢層への適応拡大も進んでいます。
一方、日本国内では2026年8月時点で、デュピルマブ(デュピクセント)は気管支喘息・アトピー性皮膚炎・慢性副鼻腔炎(鼻茸を伴う)などへの適応はあるものの、好酸球性食道炎に対する適応は承認されていません。PPI・局所ステロイド・食物除去食で改善が乏しい難治例における今後の選択肢として、国内での適応拡大の動向を引き続き注視していく必要があります。
9. 放置するとどうなる?食道が狭くなる・詰まるリスク
好酸球性食道炎の炎症が長期間コントロールされずに続くと、食道の壁に線維化(組織が硬くなる変化)が進み、食道が狭くなったり、伸展性が失われたりします。この状態になると、内視鏡による食道拡張術(バルーンやブジーで狭窄部を広げる処置)が必要になることもあり、粘膜が脆弱なため処置後に食道が裂ける・穴が開くといった合併症のリスクにも注意が必要です。
また、前述の食物嵌頓を繰り返す方もいます。「詰まったら水を飲めば大丈夫」と自己対応を続けるのではなく、一度専門的な評価を受け、炎症のコントロールを図ることが将来のリスクを減らすことにつながります。なお、症状・内視鏡所見・組織所見から重症度が一定以上と判定された場合には、指定難病としての医療費助成の対象になることがあります。
10. 院長・理事長コメント
11. よくあるご質問(FAQ)
12. まとめ
✅ 主な症状は「つかえ感」「飲み込みにくさ」で、進行すると食べ物が完全に詰まる「食物嵌頓」という緊急事態を招くことがあります
✅ 男女比は約4:1で男性に多く、30〜50歳代に好発。喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎の合併が多くみられます
✅ 診断には胃カメラと生検が必須で、食道粘膜の好酸球が1視野15個以上であることが基準です。血液検査だけでは診断できません
✅ 治療の第一選択はPPI。効果不十分な場合はのみ込むステロイドや食物除去食を検討します
✅ 米国承認の生物学的製剤(デュピルマブ)は2026年8月時点で日本ではこの病気への適応は未承認です
✅ 重症度によっては指定難病(好酸球性消化管疾患)として医療費助成の対象になることがあります
✅ 白金高輪駅徒歩1分、土日祝も内視鏡対応。つかえ感や食物嵌頓の既往がある方はお早めにご相談ください
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医が、鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査を行っております。
✅ 以前に食べ物を喉や食道に詰まらせたことがある方
✅ 胸やけが市販薬・PPIで改善しない方
✅ 喘息・アトピー性皮膚炎・食物アレルギーをお持ちで消化器症状もある方
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