健診で「尿酸値が高い」と言われたら|高尿酸血症・痛風の診断基準と治療のタイミング【港区・白金高輪の内科】
- 2026年9月2日
- 動脈硬化,内科一般,健康診断・人間ドック,糖尿病内科,お知らせ
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
健康診断や人間ドックの結果表で「尿酸値が高い」「高尿酸血症」と指摘され、どうすればよいのか気になっている方も多いと思います。結論から申し上げると、高尿酸血症は自覚症状がなくても放置すると痛風発作だけでなく、腎臓や血管にも影響が及ぶことがある代謝疾患です。一方で、数値や合併症の有無によって「生活習慣の見直しだけでよい場合」と「薬物療法が必要な場合」がはっきり分かれるのも特徴です。
この記事では、港区白金高輪で内科診療を行う五良会クリニック白金高輪の理事長・五藤良将が、高尿酸血症の診断基準、痛風発作の症状、放置するリスク、そして生活習慣の見直し方から薬物療法を始めるタイミングまで、わかりやすく解説します。
📋 この記事の内容(クリックで該当箇所へ)
1. 健診で「尿酸値が高い」と言われたら
健康診断の血液検査項目には必ず「尿酸(UA)」の項目があります。数値だけを見て「特に痛くもないから大丈夫」と自己判断される方も少なくありませんが、高尿酸血症は症状が出る前から治療対象になり得る点が、他の生活習慣病と少し異なるところです。
まずは、指摘された数値がどの程度のものなのか、放置してよい範囲なのかを正しく理解することが大切です。
2. 高尿酸血症の診断基準
日本痛風・尿酸核酸学会『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版[2022年追補版]』では、性別・年齢を問わず、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた場合を「高尿酸血症」と定義しています。男女で異なる基準値を設けている検査項目も多いなかで、尿酸値は一律の基準である点が特徴です。
| 血清尿酸値 | 目安 |
|---|---|
| 7.0mg/dL以下 | 正常範囲 |
| 7.0mg/dLを超える | 高尿酸血症(症状がなければ「無症候性高尿酸血症」) |
| 9.0mg/dL以上 | 合併症の有無にかかわらず薬物療法を検討する目安 |
なお、尿酸値は体調・脱水・食事内容によって変動しやすい値でもあります。1回の健診だけで判断せず、複数回の測定結果や他の血液検査項目とあわせて評価することが重要です。
3. 痛風発作とはどんな病気か
血液中で溶けきれなくなった尿酸は結晶化し、関節内に沈着します。この結晶が引き金となって急激な炎症が起こるのが「痛風発作」です。
⚠️ 痛風発作の典型的な特徴
▶ 足の親指の付け根(母趾MTP関節)に好発(他に足首・膝などにも起こる)
▶ 夜間から早朝にかけて突然始まることが多い
▶ 数時間でピークに達する激しい痛み・腫れ・熱感・発赤
▶ 治療しなくても1〜2週間程度で自然に軽快することが多い
▶ 30〜50代の男性に多く、閉経前の女性には少ない
女性に少ない理由は、女性ホルモン(エストロゲン)に尿酸の排泄を促す作用があるためと考えられています。そのため、閉経後の女性では男性と同様にリスクが上がる点にも注意が必要です。「痛くなくなったから治った」わけではなく、高尿酸血症そのものは発作の後も続いていることを理解しておいてください。
4. なぜ尿酸値が上がるのか
尿酸は体内でのプリン体の代謝産物で、「作られる量」と「排泄される量」のバランスが崩れると血液中に蓄積します。原因は主に3つに分けられます。
尿酸の産生が過剰になるタイプ
プリン体の多い食事の摂りすぎ、飲酒、肥満、激しい無酸素運動(筋肉内でのプリン体分解が進み尿酸産生が増える)などが関係します。体質的に尿酸が作られやすい方もいます。
尿酸の排泄が低下するタイプ
腎臓からの尿酸排泄能力には個人差があり、遺伝的要因のほか、脱水、腎機能低下、利尿薬・低用量アスピリンなど一部の薬剤の影響で排泄が低下することがあります。日本人の高尿酸血症は、この「排泄低下型」が多いとされています。
産生過剰と排泄低下が混在するタイプ
肥満やメタボリックシンドロームを背景に、産生過剰と排泄低下の両方が同時に起こっているケースも少なくありません。
5. 放置するとどうなるか
高尿酸血症は「痛くなければ様子を見ればよい」わけではありません。長期間放置すると、以下のような臓器への影響が指摘されています。
| 影響を受ける部位 | 主な問題 |
|---|---|
| 関節 | 痛風発作の再発、耳介・肘・アキレス腱などにできる「痛風結節」 |
| 腎臓 | 尿酸結晶の沈着による腎機能障害(痛風腎)、尿酸結石による尿路結石 |
| 血管・心臓 | 高血圧・脂質異常症・耐糖能異常を合併しやすく、心血管疾患のリスク上昇との関連が指摘されている |
国立循環器病研究センターが実施したFREED試験では、高尿酸血症を伴う高齢患者に対して尿酸生成抑制薬(フェブキソスタット)を用いた治療が、脳心腎血管関連イベントの発現抑制と関連する可能性が報告されています。尿酸値のコントロールは、痛風予防だけでなく全身の血管を守る意味でも重要です。
6. メタボリックシンドロームとの関係
高尿酸血症はメタボリックシンドロームの診断基準そのものには含まれていませんが、内臓脂肪の蓄積やインスリン抵抗性が、尿酸の産生を増やし、腎臓からの排泄を低下させることがわかっており、両者は高頻度に合併します。
健診での見方
腹囲・血圧・血糖・脂質のいずれかで指摘を受けている方が、同時に尿酸値も高い場合は、生活習慣病がまとまって進行しているサインとも言えます。尿酸値だけでなく、体重・血圧・血糖・脂質もあわせて確認することをおすすめします。
7. 生活習慣の見直し
高尿酸血症の治療は、薬物療法の有無にかかわらず、生活習慣の見直しが土台になります。
✅ 生活習慣の見直しポイント
✅ 飲酒量を見直す(お酒の種類を問わず、飲酒自体が尿酸値を上げる)
✅ 水分を十分にとる(目安として1日2L程度、尿酸の排泄を促す)
✅ 肥満がある場合は緩やかに減量する(急激な減量・絶食は逆効果)
✅ 有酸素運動を中心にする(激しい無酸素運動は尿酸値を上げやすい)
✅ 清涼飲料水(果糖)の摂りすぎに注意する
✅ 水分を十分にとる(目安として1日2L程度、尿酸の排泄を促す)
✅ 肥満がある場合は緩やかに減量する(急激な減量・絶食は逆効果)
✅ 有酸素運動を中心にする(激しい無酸素運動は尿酸値を上げやすい)
✅ 清涼飲料水(果糖)の摂りすぎに注意する
「お酒をやめれば大丈夫」と思われがちですが、ビールに限らず飲酒そのものが尿酸値を上げる方向に働きます。あわせて、急激なダイエットや絶食は体内の細胞が壊れて尿酸が急に放出されるため、かえって痛風発作の引き金になることがある点にも注意してください。
8. 注意したい食品とプリン体
プリン体の摂取だけが高尿酸血症の原因ではありませんが、日々の食事の積み重ねは無視できません。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| プリン体が多く注意したいもの | レバー類、白子、あん肝、干物・かつお節・煮干しなどの乾物、エビ・カニなど |
| 飲酒 | ビール(プリン体+アルコール)、日本酒・焼酎・ウイスキーなど(アルコール自体が尿酸値を上げる) |
| 尿酸値を下げる方向に働くとされるもの | 乳製品、野菜、果物(ビタミンC)、十分な水分摂取 |
「プリン体ゼロ」の飲料を選んでも、飲酒量自体が多ければ尿酸値は上がります。食品の内容だけでなく、全体の食事量・飲酒量・体重管理とあわせて考えることが大切です。
9. 治療を始めるタイミング
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版[2022年追補版]では、薬物療法を検討する目安が示されています。
| 状態 | 薬物療法を検討する目安 |
|---|---|
| 痛風発作・痛風結節がある | 尿酸値6.0mg/dL以下を目標に薬物療法を開始 |
| 無症候性で合併症あり(腎障害・尿路結石・高血圧・虚血性心疾患・糖尿病など) | 尿酸値8.0mg/dL以上で薬物療法を検討 |
| 無症候性で合併症なし | 尿酸値9.0mg/dL以上で薬物療法を検討(8.0mg/dL未満は生活指導が基本) |
数値だけで機械的に判断するのではなく、合併症の有無や生活背景を踏まえて総合的に判断します。健診結果票の数値と、過去に痛風発作を経験したかどうかをあわせてご相談ください。
10. 薬物療法(尿酸生成抑制薬・尿酸排泄促進薬)
薬物療法が必要と判断された場合、尿酸値を下げる薬は大きく2種類に分けられます。原因のタイプ(産生過剰型か排泄低下型か)や腎機能、尿路結石の既往などを踏まえて選択します。
| 分類 | 代表的な薬剤 | 特徴 |
|---|---|---|
| 尿酸生成抑制薬 | フェブリク(フェブキソスタット)、ザイロリック(アロプリノール)など | 尿酸を作る過程(キサンチンオキシダーゼ)を阻害する。腎機能が低下している方でも比較的使いやすい |
| 尿酸排泄促進薬 | ユリノーム(ベンズブロマロン)、ユリス(ドチヌラド)など | 腎臓での尿酸の再吸収を抑え、尿中への排泄を促す。尿路結石の既往がある方は水分摂取・尿のアルカリ化とあわせて慎重に使用 |
フェブリク(フェブキソスタット)は2011年1月21日に、ユリス(ドチヌラド、選択的尿酸再吸収阻害薬〔SURI〕)は2020年1月23日に、それぞれ日本で製造販売承認を取得した薬剤です。いずれも1日1回の内服から開始し、尿酸値をみながら少しずつ用量を調整していきます。自己判断での中断・減量は、痛風発作の再発につながることがあるため、医師の指示のもとで継続することが大切です。
11. 痛風発作が起きたときの対処法
すでに痛風発作を起こしてしまった場合、まず優先するのは炎症を鎮めることです。
| STEP 1 | 患部の安静・冷却 痛みのある関節を動かさず、氷などで冷やして炎症の広がりを抑えます。 |
| STEP 2 | 消炎鎮痛薬・コルヒチン・ステロイドによる治療 症状の程度や合併症の有無に応じて、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、コルヒチン、ステロイドなどを使い分けて炎症を抑えます。 |
| STEP 3 | 発作が落ち着いてから尿酸降下薬を検討 発作の最中に尿酸降下薬を新規に開始したり、急に用量を変更したりすると、尿酸値の急激な変動によって発作が悪化・遷延することがあります。すでに内服中の薬は自己判断で中止せず、医師の指示に従います。 |
⚠️ 注意
複数の関節に痛みが及ぶ、発熱を伴う、痛みが1〜2週間たっても改善しない場合は、痛風以外の関節炎(感染性関節炎など)の可能性もあるため、早めに受診してください。
12. 理事長コメント
💬 理事長 五藤良将より
「尿酸値が高い」というだけで痛みがなければ後回しにされがちですが、高尿酸血症は血圧・血糖・脂質と同じく、静かに血管や腎臓に負担をかけていく生活習慣病のひとつです。当院では健診結果をもとに、生活習慣の見直しから薬物療法まで、患者さんの数値と合併症の有無にあわせた治療方針をご提案しています。「痛風の発作は治まったから大丈夫」と自己判断せず、一度数値をしっかり確認しにいらしてください。
13. まとめ
📝 この記事のポイント
✅ 高尿酸血症は血清尿酸値7.0mg/dL超(男女共通の基準)
✅ 症状がなくても、数値や合併症の有無によっては治療対象になる
✅ 放置すると痛風発作の再発だけでなく、腎臓や血管にも影響しうる
✅ 飲酒量・水分摂取・体重管理など生活習慣の見直しが治療の土台
✅ 薬物療法は尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬を使い分ける
✅ 痛風発作中は尿酸降下薬の新規開始・急な調整を避け、まず炎症を抑える
✅ 症状がなくても、数値や合併症の有無によっては治療対象になる
✅ 放置すると痛風発作の再発だけでなく、腎臓や血管にも影響しうる
✅ 飲酒量・水分摂取・体重管理など生活習慣の見直しが治療の土台
✅ 薬物療法は尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬を使い分ける
✅ 痛風発作中は尿酸降下薬の新規開始・急な調整を避け、まず炎症を抑える
14. よくある質問(FAQ)
Q. 健診の尿酸値がいくつからが「高尿酸血症」ですか?
A. 男女問わず、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版[2022年追補版])。
Q. 症状がなくても治療は必要ですか?
A. 痛風発作や痛風結節がない「無症候性高尿酸血症」でも、数値や合併症の有無によっては生活指導や薬物療法の対象になります。自覚症状の有無だけで判断しないことが大切です。
Q. 痛風発作はどんな症状ですか?
A. 足の親指の付け根(母趾MTP関節)を中心に、突然の激しい痛み・腫れ・発赤が起こるのが典型的です。夜間から早朝にかけて始まることが多いとされています。
Q. ビールをやめれば大丈夫ですか?
A. ビールはプリン体が多い上にアルコール自体が尿酸値を上げるため注意が必要ですが、日本酒やウイスキーなどでも飲酒量が多ければ尿酸値は上がります。お酒の種類を変えるだけでなく、全体の飲酒量の見直しが大切です。
Q. 痛風発作中に尿酸値を下げる薬を飲み始めてもいいですか?
A. 発作中に尿酸降下薬を新規に開始すると、尿酸値の急激な変動によって発作が悪化・遷延することがあります。まずは炎症を抑える治療を優先し、発作が落ち着いてから尿酸降下薬の開始・調整を検討するのが一般的です。
Q. 女性は痛風にならないのですか?
A. 女性ホルモン(エストロゲン)に尿酸の排泄を促す作用があるため、閉経前の女性では痛風は少ないとされています。ただし閉経後は男性と同様にリスクが上がるため、注意が必要です。
Q. 薬物療法はどのくらいの期間続けるのですか?
A. 数週間〜数か月かけて尿酸値を目標値(目安として6.0mg/dL以下)まで下げ、その後も内服を継続しながら値を維持していくのが基本です。自己判断で中断すると、再び尿酸値が上昇し発作を繰り返すことがあります。
Q. 健康診断で毎年「要経過観察」と言われています。放置していいですか?
A. 症状がなくても、腎機能・血圧・血糖など合併症のチェックは重要です。数値の推移や合併症の有無を一度医療機関で確認し、生活習慣の見直しが必要かどうかを相談することをおすすめします。
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