海外赴任・留学前のワクチンスケジュール完全ガイド|出発日から逆算する組み立て方
- 2026年8月16日
- 渡航外来(トラベルクリニック),トラベルワクチン,予防接種・ワクチン
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)/日本旅行医学会認定医
1. 渡航ワクチンは「出発日から逆算」で考えます
渡航前相談で必ずお聞きする5項目
① 出発日 ② 渡航先の国と都市(地方部に行くかどうか) ③ 滞在期間 ④ 現地での活動内容(オフィス勤務か、農村部での活動か等) ⑤ これまでの接種歴(母子健康手帳・接種証明書があれば必ずお持ちください)
⚠️ 理想は出発の2〜3か月前のご相談です
複数回接種が必要なワクチンが重なると、標準スケジュールでは半年近くかかるものもあります。渡航が決まった時点でご相談いただければ、無理のない配置が可能です。もちろん、出発が迫っている場合でも取れる選択肢はありますので、あきらめずにご来院ください。
2. 渡航先と滞在期間で必要なワクチンは変わります
| 渡航パターン | 優先度の高いワクチン | 状況により追加 |
|---|---|---|
| アジアへの短期出張(都市部・1〜2週間) | A型肝炎、破傷風 | B型肝炎、日本脳炎 |
| アジアへの長期赴任(1年以上) | A型肝炎、B型肝炎、破傷風、日本脳炎、狂犬病 | 腸チフス、麻疹風疹(抗体確認) |
| 南アジア(インド・ネパール等) | A型肝炎、破傷風、狂犬病、腸チフス | B型肝炎、日本脳炎 |
| アフリカ | A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、黄熱(入国要件となる国あり) | 腸チフス、髄膜炎菌、マラリア予防薬の相談 |
| 欧米への留学 | 麻疹・風疹・水痘・ムンプス(学校提出用の証明が必要なことが多い)、破傷風 | B型肝炎、髄膜炎菌(寮生活の場合) |
黄熱ワクチンは接種できる施設が限られます
黄熱ワクチンは、検疫所など指定された接種機関でのみ接種可能です。アフリカ・南米の一部の国では入国時に接種証明書(イエローカード)の提示が求められます。渡航先が該当する場合は、予約が取りにくいこともありますので早めにご相談ください。当院では接種機関のご案内と、その他のワクチンとの日程調整を行います。
3. 主な渡航ワクチンの接種回数と間隔(一覧表)
| ワクチン | 主な製剤 | 回数と間隔 | 承認 |
|---|---|---|---|
| 狂犬病 | ラビピュール筋注用 ChiroRab(輸入) |
3回 0日 → 7日 → 21日または28日 |
ラビピュール:国内承認 ChiroRab:国内未承認 |
| A型肝炎 | エイムゲン | 3回 0日 → 2〜4週後 → 初回から24週後 ※急ぐ場合は2週間隔で2回 |
国内承認 |
| B型肝炎 | ヘプタバックス-II ビームゲン |
3回 0日 → 4週後 → 初回から20〜24週後 |
国内承認 |
| 破傷風 | 沈降破傷風トキソイド | 接種歴あり:1回(追加免疫) 接種歴なし・不明:3回 0日 → 3〜8週後 → 初回免疫後6か月以上 |
国内承認 |
| 日本脳炎 | エンセバック ジェービックV |
初回免疫2回 0日 → 1〜4週後 追加免疫は約1年後に1回 |
国内承認 |
| 腸チフス | タイフィム ブイアイ注シリンジ Typbar TCV(輸入) |
1回で完了 再接種の目安はタイフィム約3年/Typbar TCV約5年 |
タイフィム:国内承認 Typbar TCV:国内未承認 |
| A型・B型肝炎混合 | Twinrix | 3回 0日 → 1か月後 → 6か月後 |
国内未承認(輸入) |
腸チフスワクチンは2種類から選べるようになりました
これにより現在は、国内承認品と輸入品の2種類から選べるようになっています。当院ではいずれもご用意しています。
| 項目 | タイフィム ブイアイ注シリンジ | Typbar TCV(タイバー) |
|---|---|---|
| 日本での承認 | 国内承認(2024年6月承認/2025年6月30日発売) | 国内未承認(輸入) |
| ワクチンの型 | 精製Vi多糖体ワクチン(多糖体型) | 結合型ワクチン(TCV) |
| 接種回数 | 1回(0.5mL・通常は筋肉内、皮下も可) | 1回 |
| 対象年齢 | 2歳以上 | 生後6か月以上 |
| 効果の持続 | 有効性は1年目69%、2年目59%、3年累積55%。持続はおおむね2〜3年 | 有効性87.1%と報告され、持続性に優れます |
| 再接種の目安 | 約3年ごと | 約5年ごと |
| 健康被害の救済 | 予防接種健康被害救済制度の対象 | 国の制度は対象外(輸入代行業者の補償制度) |
| 当院の費用(税込) | 13,000円 | 12,000円 |
どちらを選ぶか
国内承認であることや救済制度を重視される方にはタイフィム ブイアイを、長期滞在で効果の持続を優先される方や2歳未満のお子さまにはTypbar TCVをご提案することが多くなります。WHOは、腸チフス流行国における生後6か月以上の乳幼児・小児の定期接種に結合型ワクチンを推奨しています。
なお、いずれもパラチフスには効果がありません。飲食物への注意は引き続き必要です。
この表から読み取れる、スケジュールの「ネック」
A型肝炎の3回目は初回から24週後、B型肝炎の3回目は20〜24週後、破傷風の3回目も6か月以上あとです。つまり「3回目までフルに完了させるには半年かかる」のが渡航ワクチンの実情です。裏を返せば、出発前に2回目まで済ませ、3回目は帰国後や一時帰国時に回すという組み方が現実的な解になります。
4. 出発まで3か月以上ある場合の標準スケジュール
| 1回目 0日 |
狂犬病① + A型肝炎① + B型肝炎① + 破傷風① + 日本脳炎① 渡航前相談・接種歴の確認もこの日に行います |
| 2回目 7日 |
狂犬病② 狂犬病は間隔が短いため、この回は狂犬病が中心になります |
| 3回目 28日 |
狂犬病③ + A型肝炎② + B型肝炎② + 破傷風② + 日本脳炎② ここで狂犬病は3回完了。他も2回目まで到達します |
| 4回目 約6か月後 |
A型肝炎③ + B型肝炎③ + 破傷風③ 出発後であれば、一時帰国時または現地の医療機関で受けます |
✔ 狂犬病の0・7・28日を骨格にすると、他のワクチンの間隔がきれいに乗ります
✔ 出発時点で、狂犬病3回・A型肝炎2回・B型肝炎2回・破傷風2回・日本脳炎2回が完了しています
5. 出発まで1か月しかない場合の短縮スケジュール
| 1回目 0日 |
狂犬病① + A型肝炎① + B型肝炎① + 破傷風① + 日本脳炎① |
| 2回目 7日 |
狂犬病② + 日本脳炎②(日本脳炎は1〜4週間隔のため7日でも可能です) |
| 3回目 21日 |
狂犬病③ + A型肝炎② + 破傷風② 狂犬病は21日スケジュールで3回完了。A型肝炎は2〜4週間隔、破傷風は3週以上の間隔を満たします |
⚠️ 短縮スケジュールで割り切る点
B型肝炎の2回目は4週間隔が必要なため、3週間では間に合いません。B型肝炎は1回のみで出発し、残りは現地または一時帰国時とするのが現実的です。腸チフスは1回で完了しますので、間に合わない他のワクチンより優先することもあります。何を優先し何を後回しにするかは、渡航先のリスクに応じて個別に判断します。
6. 同時接種で通院回数を減らす
生ワクチンが混ざる場合だけ注意が必要です
麻疹・風疹・水痘・ムンプス・黄熱は生ワクチンです。不活化ワクチンとの同時接種は可能ですが、生ワクチン同士を別々の日に打つ場合は27日以上の間隔が必要になります。欧米留学で麻疹風疹の証明を求められる方は、この点でスケジュールが伸びやすいため、特に早めのご相談をおすすめします。
7. 国内承認ワクチンと輸入ワクチンの違い
なお腸チフスについては、長らく国内に承認された製剤がありませんでしたが、2025年6月30日にタイフィム ブイアイ注シリンジが国内で発売され、状況が変わりました。国内承認品と輸入品を比較して選べるようになっています。
| 項目 | 国内承認ワクチン | 輸入(国内未承認)ワクチン |
|---|---|---|
| 健康被害の救済 | 予防接種健康被害救済制度の対象 | 国の制度は対象外。輸入代行業者が独自に設けている補償制度が適用されます |
| 入手 | 通常の流通経路 | 医師の責任で個別に輸入するため、取り寄せに日数がかかります |
| 費用 | 自費(渡航目的の場合) | 自費。国内承認品より高額になる傾向があります |
「国の制度の対象外」=「補償が何もない」ではありません
輸入ワクチンには、輸入代行業者が独自に設けている副作用被害補償制度があります。その業者を通じて輸入したワクチンが適正な目的で適正に使用されたにもかかわらず重篤な副作用が生じ、医師の無過失が認められ、ワクチンとの因果関係が認定された場合に補償が行われる仕組みです。補償内容の一例としては、死亡2,000万円/障害1級1,000万円/障害2級500万円といった水準が定められています。
ただし国の制度とは仕組みが異なります。因果関係の認定は確定判決が原則とされていること、年間の補償上限額があり上限を超える場合は按分されること、補償内容が代行業者ごとに異なることは、あらかじめご理解ください。
出典:輸入代行業者の補償制度の一例(つばめLabo「輸入ワクチン副作用被害補償制度」)
8. 帰国後・滞在中に残った接種をどうするか
| 選択肢1 | 一時帰国のタイミングで当院にて接種 最も確実です。帰国予定が決まっている方には、あらかじめその日程に合わせて計画を立てます |
| 選択肢2 | 現地の医療機関で接種 製剤が日本と異なる場合があるため、接種済みのワクチン名・接種日・接種経路を英文で記載した書類をお渡しします |
| 選択肢3 | 帰任後にまとめて完了 間隔が空きすぎても、多くの場合やり直しにはなりません。自己判断で放置せずご相談ください |
9. 費用・英文証明書・会社への請求
| 項目 | 費用(税込・1回あたり) |
|---|---|
| 狂犬病ワクチン(ラビピュール筋注用・国産) | 18,700円 |
| 狂犬病ワクチン(ChiroRab・輸入) | 16,280円 |
| A型肝炎ワクチン(エイムゲン・国産) | 16,500円 |
| A型肝炎ワクチン(輸入) | 14,000円 |
| B型肝炎ワクチン(ビームゲン) | 6,000円 |
| A型・B型肝炎混合ワクチン(Twinrix・輸入) | 16,000円 |
| 破傷風ワクチン(沈降破傷風トキソイド) | 5,000円 |
| 三種混合ワクチン(トリビック・国産) | 8,800円 |
| Tdapワクチン(輸入) | 13,200円 |
| 日本脳炎ワクチン | 6,000円 |
| 腸チフスワクチン(タイフィム ブイアイ・国内承認) | 13,000円 |
| 腸チフスワクチン(Typbar TCV・輸入) | 12,000円 |
| 髄膜炎菌ワクチン4価(ニメンリックス) | 25,000円 |
| MR(麻しん風しん)ワクチン | 10,000円 |
| 不活化ポリオワクチン(イモバックス) | 11,000円 |
| 渡航前相談・診察料 | 初診 3,300円/再診 1,500円 |
| 英文接種証明書 | 8,000円 |
※ 記載の費用はいずれも税込で、2026年8月時点のものです。ワクチンの仕入価格の変動等により改定する場合がありますので、最新の費用はお問い合わせください。また、接種計画によって総額は変わりますので、お一人ずつの費用は診察時にご案内いたします。
⚠️ 上記以外のワクチンについて
一覧に記載のないワクチンについては、渡航先とご希望をうかがったうえで手配の可否・費用をご案内いたします。輸入ワクチンはお取り寄せに日数を要しますので、お早めにお問い合わせください。
📌 未承認医薬品に関する明示事項
上記一覧のうち、ChiroRab(狂犬病)、A型肝炎ワクチン(輸入)、Twinrix(A型・B型肝炎混合)、Tdapワクチン(輸入)、Typbar TCV(腸チフス)は、日本国内において薬事承認を受けていない医薬品です。
② 入手経路
医師の判断のもと、個人輸入代行業者を通じて輸入しています。
③ 国内の承認医薬品等の有無
狂犬病はラビピュール筋注用、A型肝炎はエイムゲン、B型肝炎はビームゲン、破傷風は沈降破傷風トキソイド、腸チフスはタイフィム ブイアイ注シリンジが国内で承認されており、当院ではいずれもご用意しています。
④ 諸外国における安全性等に係る情報
いずれも欧米・アジア各国で広く使用されている製剤です。ただし日本国内における副作用報告制度の対象外であり、国内での使用実績に基づく安全性情報は限られます。
⑤ 健康被害が生じた場合の補償
国の予防接種健康被害救済制度の対象外となりますが、輸入代行業者が設けている副作用被害補償制度が適用されます(詳細は接種前にご説明します)。
10. よくあるご質問
11. 理事長コメント
白金高輪では、日本旅行医学会認定医と日本渡航医学会認定医の渡航医学認定医2名が在籍し、出発日から逆算した接種計画をその場で組み立ててお渡ししています。土曜・日曜・祝日も診療していますので、平日にお時間の取れない方もご利用ください。赴任や留学が決まったら、なるべく早い段階で一度ご相談いただければと思います。」
12. まとめ
✅ 接種歴の確認が接種回数を左右します。母子健康手帳は必ずお持ちください
✅ A型肝炎・B型肝炎・破傷風は3回目が半年後になるため、出発前は2回目までが現実的です
✅ 狂犬病の0・7・21日(または28日)を骨格にすると、他のワクチンがきれいに乗ります
✅ いずれも不活化ワクチンで同時接種が可能。来院3回で大半を完了できます
✅ 腸チフスは2025年6月に国内承認品(タイフィム ブイアイ)が発売され、輸入の結合型(Typbar TCV)と選べるようになりました
✅ TwinrixやTypbar TCVは国内未承認。国の救済制度の対象外ですが、輸入代行業者の補償制度があります
✅ 出発まで1か月しかなくても、優先順位をつければ打てるものがあります
参考文献・出典
2. エイムゲン 添付文書(PMDA)
3. ヘプタバックス-II/ビームゲン 添付文書(PMDA)
4. 沈降破傷風トキソイド 添付文書(PMDA)
5. エンセバック皮下注用/ジェービックV 添付文書(PMDA)
6. 日本環境感染学会「医療関係者のためのワクチンガイドライン 追補(破傷風ワクチン)」
7. 東京医科大学病院 渡航者医療センター「ワクチンの解説」
8. 濱田篤郎. 海外渡航者向けワクチンの開発および使用方法の現状. 日本化学療法学会雑誌. 2019;67(3):355.
9. 厚生労働省検疫所 FORTH「海外渡航のためのワクチン」
海外渡航前のワクチン接種・健康相談を一括して承っております。
✅ 黄熱・髄膜炎菌・狂犬病など輸入ワクチンも対応
✅ 英文接種証明書・診断書の発行
✅ 同日複数接種・出発までの最適スケジュール提案
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