医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
「ぶつけた覚えがないのに、気づいたら足に大きなあざができていた」「以前より少しの衝撃で青あざができやすくなった」——このようなご相談は、白金高輪の内科・血液内科外来でも決して珍しくありません。多くは加齢に伴う血管の変化など心配のいらないものですが、なかには血小板の減少や血液を固める凝固因子の異常が背景に隠れていることもあります。
この記事では、五良会クリニック白金高輪の理事長で日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の五藤良将が、「様子を見てよいあざ」と「血液内科を受診すべきあざ」の見分け方、原因となりうる病気、検査の流れをまとめて解説します。港区・白金高輪駅周辺にお住まい・お勤めの方は、当院の血液内科専門外来(毎週日曜日・木曜日)もあわせてご検討ください。
1. 結論:様子を見てよいあざと、受診すべきあざの違い
先に結論からお伝えします。「ぶつけた記憶がはっきりあり、数か所・数センチ程度で、1〜2週間で自然に色が薄くなって消えていく」あざは、多くの場合、加齢に伴う血管の脆弱化(老人性紫斑)など心配のいらないものです。
こんなときは受診をご検討ください
▶ ぶつけた覚えがないのに、体幹・背中・太ももなど広範囲にあざができる
▶ あざと一緒に、歯ぐきの出血・鼻血・血尿・血便・月経過多がある
▶ 針で刺したような小さな赤い点状の出血(点状出血)が増えている
▶ 発熱・体重減少・強い倦怠感・リンパ節の腫れを伴う
▶ 高齢になってから初めて、広範囲の皮下出血が突然出現した
▶ 抗血小板薬・抗凝固薬を服用中で、あざの範囲や頻度が明らかに増えた
これらに当てはまる場合は、血小板の減少や凝固因子の異常が背景にある可能性があるため、血液内科での採血評価をおすすめします。以下、それぞれの原因と見分け方を詳しく解説します。
2. そもそも、なぜあざ(皮下出血)ができるのか
「あざ」は医学的には皮下出血・紫斑と呼ばれ、皮膚の下の毛細血管が何らかの理由で破れ、血液が皮下組織に漏れ出した状態です。通常は、次の3つの仕組みが正常に働くことで、小さな血管の傷はすぐにふさがります。
| 止血の仕組み |
役割 |
障害されると |
| 血管そのもの |
傷ついた血管が収縮する |
老人性紫斑、血管炎(IgA血管炎など) |
| 血小板 |
傷口に集まり一次的なふたをする |
ITP、血小板減少症、抗血小板薬 |
| 凝固因子 |
血小板のふたを繊維状の網で補強する |
血友病、後天性血友病A、肝疾患、抗凝固薬 |
この3つのどこに問題があるかによって、あざの現れ方に特徴があります。血小板の異常では点状出血や皮下出血が中心なのに対し、凝固因子の異常では筋肉内出血や関節内出血、抜歯後の止血困難など、より深部の出血を伴いやすいことが知られています。
3. 心配のいらない「よくあるあざ」-老人性紫斑・単純性紫斑病
老人性紫斑(老人性皮下溢血斑)
加齢や長年の紫外線暴露によって、皮膚の血管を支えるコラーゲン組織が弱くなることで生じます。手の甲・前腕の外側に、軽くこすれただけで濃い紫色〜赤紫色のあざができやすいのが特徴です。血液検査は正常であることがほとんどで、治療の必要はありません。ステロイド外用薬の長期使用や、抗血小板薬・抗凝固薬の服用があると、より起こりやすくなります。
単純性紫斑病
若い女性に多く、下肢を中心に数センチ程度のあざが繰り返し出現しますが、血液検査は正常で、他の出血症状(歯ぐきの出血、月経過多など)を伴わないのが特徴です。原因ははっきりしていませんが、健康に影響はなく経過観察でよいとされています。
✅ 様子を見てよい目安
①ぶつけた自覚がある ②数か所にとどまる ③1〜2週間で色が変化しながら消えていく ④他の出血症状がない――この4つがそろえば、まず心配はいりません。
4. 見逃してはいけない危険なサイン(レッドフラッグ)
以下のサインがある場合は、血液の病気が隠れている可能性があるため、早めの受診をおすすめします。
| サイン |
疑われる病態 |
| 針で刺したような赤い点状出血(点状出血) |
血小板減少(ITPなど) |
| ぶつけていないのに広範囲・体幹にできる大きなあざ |
血小板減少、凝固因子異常 |
| 歯ぐきの出血・鼻血が止まりにくい |
血小板減少、凝固因子異常 |
| 関節や筋肉の中に出血し腫れて痛む |
血友病、後天性血友病A |
| 月経量が急に増えた・経血量が多い |
フォン・ヴィレブランド病、血小板異常 |
| 発熱・体重減少・寝汗・リンパ節腫脹を伴う |
血液がん(白血病・悪性リンパ腫など)の可能性 |
| 高齢者に突然出現した広範な皮下出血 |
後天性血友病A(まれだが見逃せない) |
5. 血小板減少による出血傾向-ITP(免疫性血小板減少症)
血小板の基準値はおおむね15万〜35万/µL程度(検査施設により幅があります)とされ、これを下回ると出血しやすくなります。血小板減少の原因として代表的なのがITP(免疫性血小板減少症、旧称:特発性血小板減少性紫斑病)です。自己抗体が自分の血小板を壊してしまうことで発症し、成人・小児いずれにも起こります。
血小板数と症状の目安
血小板5万/µL以下:ぶつけた後の紫斑が目立ちやすくなる
血小板1万/µL以下:鼻血・歯ぐきの出血・血尿など自然出血のリスクが上がる
※あくまで目安であり、実際の治療方針は出血症状の有無とあわせて総合的に判断します。
ITPの診断は、他の血小板減少の原因(薬剤性、肝疾患、感染症、他の血液疾患など)を除外したうえで行う除外診断です。厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究班」による「成人免疫性血小板減少症診断参照ガイド2023年版」、および治療については「成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019年改訂版」に基づき、血小板数と出血症状の程度から治療の必要性を層別化して判断します。
軽症で出血症状がなければ経過観察のみのこともありますが、治療が必要な場合は、副腎皮質ステロイドを第一選択とし、効果不十分な場合はTPO受容体作動薬(エルトロンボパグ〔レボレード、2010年12月薬価収載〕、ロミプロスチム〔ロミプレート、2011年3月薬価収載〕、アバトロンボパグ〔ドプテレット〕など、いずれも慢性ITPに対する保険適用あり)や、抗CD20抗体リツキシマブ、脾摘(脾臓摘出術)が選択肢となります。ピロリ菌陽性例では除菌治療で血小板数が改善することもあり、当院でも必要に応じてピロリ菌検査を組み合わせて評価します。
6. 凝固因子の異常-見逃せない「後天性血友病A」
⚠️ 特に高齢の方に知っていただきたい病気です
後天性血友病Aは、それまで出血しやすい体質ではなかった方(多くは高齢者)に、突然、広範な皮下出血や筋肉内出血が出現する、まれですが見逃してはいけない病気です。血液を固める第VIII因子に対する自己抗体(インヒビター)が生じることで発症し、悪性腫瘍・自己免疫疾患・妊娠後などに合併することもありますが、原因不明のことも少なくありません。
日本血栓止血学会「後天性血友病A診療ガイドライン2017年改訂版」によると、出血傾向の既往のない高齢者に突然の広範な皮下出血が出現し、血液検査でAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)のみが延長している場合は、本症を疑って精査を進めるべきとされています。診断は第VIII因子活性の著減とインヒビター検出により確定し、治療は副腎皮質ステロイドや免疫抑制療法に加え、出血予防としてエミシズマブ(ヘムライブラ)の定期投与が保険適用となっています。頻度は高くありませんが、「今まで何ともなかったのに、急に広範囲のあざが出た」という高齢の患者さんを診た際には、必ず念頭に置くべき疾患です。
7. アレルギー性紫斑病(IgA血管炎)
子どもや若い方に多く、感染症(かぜなど)をきっかけに、両足のすねを中心に触ってわかる盛り上がった紫斑(触知可能な紫斑)が左右対称に出現するのが特徴です。関節痛、腹痛、まれに腎臓の炎症(IgA血管炎性腎炎)を合併することがあり、血小板数や凝固機能自体は正常です。多くは自然に軽快しますが、腹痛や血尿・蛋白尿を伴う場合は経過観察が必要になるため、小児科・内科と連携して診療にあたります。
8. お薬が原因のあざ・出血-抗血小板薬・抗凝固薬
脳梗塞や心筋梗塞、心房細動の予防に使われる抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど)や抗凝固薬(ワルファリン、DOAC〔直接経口抗凝固薬〕など)は、その作用の性質上、あざができやすくなります。これは薬が正しく効いているサインでもあり、多くの場合は治療の中止を意味しません。
⚠️ 注意
自己判断でこれらのお薬を中断すると、脳梗塞・心筋梗塞などのリスクが上がる可能性があります。あざが増えて心配な場合は、薬を処方している医師にまず相談し、量の調整や採血での評価が必要か判断してもらってください。
NSAIDs(痛み止め)の常用、ステロイド外用薬・内服薬の長期使用、一部のサプリメント(高用量の魚油、イチョウ葉エキスなど)も出血傾向を強めることがあるため、あざが気になる場合は服薬・サプリメントの状況もあわせてお伝えください。
9. 血液内科で行う検査の流れ
| STEP 1 |
問診・視診 あざの部位・数・出現時期、他の出血症状(鼻血・歯ぐき・月経量)、服用中の薬、家族歴を確認します。 |
| STEP 2 |
血算(血球算定) 血小板数・白血球数・赤血球数・ヘモグロビン値を確認し、血小板減少の有無、他の血球系の異常(白血病などの除外)をみます。 |
| STEP 3 |
凝固機能検査(PT・APTT) 凝固因子の異常がないかを調べます。APTTのみの延長がある場合は、後天性血友病Aなどインヒビターの検索を追加します。 |
| STEP 4 |
末梢血塗抹標本・追加検査 血小板や白血球の形態を顕微鏡で確認します。必要に応じて骨髄検査、フェリチン、肝機能、自己抗体、ピロリ菌検査などを追加します。 |
| STEP 5 |
結果説明・方針決定 経過観察でよいのか、専門的な治療や大学病院・専門施設への紹介が必要かを、検査結果に基づいてご説明します。 |
初診時の採血は保険診療で行い、結果は通常数日〜1週間程度でお伝えできます(緊急性が高いと判断した場合は即日〜翌日にご連絡します)。骨髄検査など専門性の高い検査・治療が必要な場合は、連携する高度医療機関へご紹介いたします。
10. 治療の考え方(原因別)
| 原因 |
治療の考え方 |
| 老人性紫斑・単純性紫斑病 |
治療不要。経過観察。皮膚の保湿、打撲予防で十分。 |
| ITP(軽症・出血症状なし) |
経過観察。血小板数を定期的にフォロー。 |
| ITP(治療対象) |
副腎皮質ステロイドが第一選択。効果不十分ならTPO受容体作動薬、リツキシマブ、脾摘を検討。 |
| 後天性血友病A |
速やかに専門施設と連携し、免疫抑制療法と出血予防治療(エミシズマブ等)を開始。 |
| アレルギー性紫斑病 |
多くは自然軽快。腎症状があれば経過フォローを継続。 |
| 薬剤性(抗血小板薬・抗凝固薬) |
自己判断で中止せず、処方医と用量・薬剤の見直しを相談。 |
11. 白金高輪・港区エリアでの受診の目安
五良会クリニック白金高輪は、東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪駅」2番出口から徒歩1分、港区高輪1丁目に位置し、内科・血液内科を1Fで診療しています。血液内科専門医による外来は毎週日曜日・木曜日に行っており、平日お忙しい方も受診しやすい体制を整えています。健康診断で血小板・白血球の異常を指摘された方、あざや出血が気になる方は、まずは一般内科の採血からでも構いませんので、お気軽にご相談ください。
12. 理事長コメント
💬 理事長 五藤良将より
「あざは誰にでもできるありふれた症状だからこそ、『どこまでが正常で、どこからが受診の目安か』を判断するのが難しいご相談のひとつです。特に、今まで出血しやすい体質ではなかった方に急に広範囲のあざが出た場合や、高齢の方で新たに出現した場合は、念のため採血で血小板数と凝固機能を確認することをおすすめしています。当院では血液内科専門外来(日曜・木曜)に加え、健康診断のフォローアップ、内視鏡検査による出血源の検索まで一貫して対応可能です。気になる症状がありましたら、遠慮なくご相談ください。」
13. まとめ
📝 この記事のポイント
✅ ぶつけた自覚があり、数か所・1〜2週間で消えるあざは多くの場合心配なし
✅ 広範囲・点状出血・歯ぐきの出血などを伴う場合は血小板減少の可能性
✅ 高齢で急に広範な皮下出血が出た場合は「後天性血友病A」も念頭に
✅ 抗血小板薬・抗凝固薬服用中の方は自己判断で中止せず処方医に相談
✅ 検査は血算・凝固機能(PT・APTT)から。当院血液内科は毎週日曜・木曜
14. よくある質問(FAQ)
Q. 少しぶつけただけで大きなあざができます。何科を受診すればいいですか?
A. まずは一般内科・血液内科で構いません。血算と凝固機能(PT・APTT)の採血で、多くの原因のあたりをつけることができます。当院では血液内科専門外来を毎週日曜日・木曜日に設けています。
Q. 血小板の基準値はどれくらいですか?
A. 検査施設によって多少幅がありますが、おおむね15万〜35万/µL程度が基準範囲とされています。基準値をわずかに下回る程度であれば、経過観察のみで問題ないことも多くあります。
Q. 高齢になってから急にあざができやすくなりました。年のせいでしょうか?
A. 加齢による老人性紫斑が最も多い原因ですが、「今まで何ともなかったのに突然広範囲に出た」場合は、後天性血友病Aのようなまれな病気が隠れていることもあります。念のため一度、血算と凝固機能の採血を受けることをおすすめします。
Q. 血液サラサラの薬(抗凝固薬)を飲んでいて、あざが増えました。自分で中止してよいですか?
A. 自己判断での中止はおすすめしません。脳梗塞・心筋梗塞などの原疾患のリスクが上がる可能性があります。あざが明らかに増えた、他の出血症状が出てきたという場合は、処方している医師に必ずご相談ください。
Q. 子どもによくあざができます。心配ですか?
A. 活発なお子さんでは、すねなどに多数のあざができるのはよくあることです。ただし、体幹や背中に多数できる、ぶつけていないのに大きなあざができる、鼻血や歯ぐきの出血を伴う場合は、血小板異常や血友病などの評価が必要なことがありますので、小児科・血液内科にご相談ください。
Q. 月経の出血量が多いのも関係がありますか?
A. あざができやすいことと月経過多が両方ある場合、血小板の異常やフォン・ヴィレブランド病(先天性の凝固因子異常)の可能性があります。婦人科的な原因の検索とあわせて、血液内科での評価が有用です。
Q. あざと一緒に発熱やだるさ、リンパ節の腫れがあります。
A. 血小板減少に発熱・体重減少・寝汗・リンパ節腫脹が加わる場合、白血病や悪性リンパ腫などの血液がんも鑑別に入ってきます。頻度は高くありませんが、早めに血算検査を受けることをおすすめします。
Q. 検査にはどのくらいの時間・費用がかかりますか?
A. 初診の問診・採血は保険診療で行い、血算・凝固機能検査であれば数日〜1週間程度で結果をご説明できます(3割負担で数千円程度が目安です)。追加の精密検査が必要な場合は、その都度内容と費用をご説明します。
参考文献・出典
厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究班」ITP診断参照ガイド作成委員会『成人免疫性血小板減少症診断参照ガイド2023年版』臨床血液64(10):1245, 2023/同研究班ITP治療の参照ガイド作成委員会『成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019年改訂版』臨床血液60(8):877, 2019/日本血栓止血学会『後天性血友病A診療ガイドライン2017年改訂版』日本血栓止血学会誌28(6):715-747, 2017/MSDマニュアル家庭版「あざと出血」/ロミプレート・レボレード・ドプテレット各添付文書・PMDA医療用医薬品情報。
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理事長 五藤 良将