糖尿病腎症は自覚症状がないまま進行します|尿アルブミン検査でわかる早期発見と腎臓を守る最新治療(病期分類2023対応)
糖尿病で通院中の方や、健康診断で「尿蛋白」「eGFR低下」を指摘されたことがある方の中には、「腎臓のことは気になるけれど、自覚症状がないから大丈夫だろう」と感じている方も多いのではないでしょうか。
糖尿病腎症は、視力を守る「網膜症」・足を守る「神経障害」と並ぶ糖尿病の三大合併症の一つで、初期にはほとんど自覚症状がないまま進行します。実は、透析が必要になる原因の第1位も糖尿病腎症です。しかし現在は、早期の尿検査で見つけ、新しいお薬で進行を抑えられる時代になっています。この記事では、2024年に改訂された「糖尿病性腎症病期分類2023」の内容や、早期発見のカギとなる尿アルブミン検査、腎臓を守る最新の治療薬について、白金高輪駅徒歩1分の五良会クリニック白金高輪 糖尿病内科医が解説します。
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
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1. 糖尿病腎症とは―自覚症状のないまま進む理由
糖尿病腎症は、高血糖の状態が長く続くことで、腎臓の中で血液をろ過している「糸球体」という毛細血管の塊がダメージを受け、老廃物や余分な水分を排出する機能が徐々に低下していく合併症です。糖尿病の三大合併症は「神経障害・網膜症(目)・腎症(腎臓)」で、「し・め・じ」の語呂合わせで覚えられることもあります。
腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、機能がかなり低下するまで自覚症状が出にくいという特徴があります。むくみや尿の泡立ちといった変化を感じたときには、すでに病気がある程度進行していることも少なくありません。だからこそ、症状が出る前の尿検査・血液検査による早期発見が重要になります。
こんな症状に気づいたときはすでに進行している可能性があります
足や顔のむくみが続く/尿の泡立ちがなかなか消えない/夜間尿の回数が増えた/貧血や倦怠感が続く/食欲が落ちてきた
2. 放置するとどうなる?透析導入原因の第1位というデータ
日本透析医学会の統計調査(JRDR)によると、2024年末時点で新たに透析を導入した患者さんの原疾患の第1位は糖尿病性腎症で37.6%を占め、2位の腎硬化症(19.1%)、3位の慢性糸球体腎炎(13.5%)を大きく上回っています。割合はここ数年やや低下傾向にあるものの、依然として長年にわたり原因疾患の第1位を占め続けています。
| 年(末時点) | 透析導入原因に占める糖尿病性腎症の割合 |
|---|---|
| 2021年 | 40.2%(第1位) |
| 2022年 | 38.7%(第1位) |
| 2023年 | 38.3%(第1位) |
| 2024年 | 37.6%(第1位) |
出典:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」各年版(JSDT Renal Data Registry)
透析が必要になると、多くの場合は週3回・1回4時間程度の通院透析が生涯にわたって必要となり、生活への影響は非常に大きくなります。また、腎機能が低下した糖尿病患者さんは、そうでない方に比べて心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクも高くなることが知られています。だからこそ、透析に至る前の段階での早期発見・早期治療が重要です。
3. 早期発見のカギ:尿アルブミン検査(ACR)
健診でよく行われる「尿蛋白(定性)」の検査は、簡便な反面、ごく早期のわずかな変化をとらえる感度が十分ではありません。糖尿病がある方の腎臓のチェックには、尿アルブミン/クレアチニン比(ACR:Albumin to Creatinine Ratio)という、より精度の高い検査が推奨されています。
尿アルブミン/クレアチニン比(ACR)の目安
30 mg/gCr未満:正常アルブミン尿
30〜299 mg/gCr:微量アルブミン尿(早期腎症のサイン)
300 mg/gCr以上:顕性アルブミン尿
ACRは、日を変えて複数回(目安として3回中2回以上)異常値が確認された場合に、より確実な診断となります。運動直後や発熱時、月経中などは一時的にアルブミンが増えることがあるため、体調の良いときに測定することも大切です。糖尿病診療ガイドラインでは、糖尿病のある方は少なくとも年1回、尿アルブミン検査を受けることが推奨されています。
4. 新しくなった「糖尿病性腎症病期分類2023」
2024年1月23日、日本糖尿病学会と日本腎臓学会による「糖尿病性腎症合同委員会」から、2014年以来約10年ぶりとなる「糖尿病性腎症病期分類2023」が公表されました。基本的な枠組みは維持しつつ、慢性腎臓病(CKD)の重症度分類や国際的な表記との整合性を重視し、病期の名称が変更されています。
| 病期 | 名称(2023年改訂後) | 目安となる状態 |
|---|---|---|
| 第1期 | 正常アルブミン尿期 | ACR 30未満、腎機能はほぼ正常 |
| 第2期 | 微量アルブミン尿期 | ACR 30〜299、早期腎症に相当 |
| 第3期 | 顕性アルブミン尿期 | ACR 300以上、尿蛋白が持続的に陽性 |
| 第4期 | GFR高度低下・末期腎不全期 | 腎機能が高度に低下 |
| 第5期 | 腎代替療法期 | 透析または腎移植が必要な段階 |
出典:日本糖尿病学会・日本腎臓学会 糖尿病性腎症合同委員会「糖尿病性腎症病期分類2023の策定」(2024年1月23日公表、学会誌「糖尿病」66巻11号掲載)
⚠️ 注意
糖尿病のある方のCKDは、この糖尿病性腎症病期分類と、腎臓病全般で使われるCKD重症度分類の両方を組み合わせて評価することが望ましいとされています。どちらか一方だけでは実際のリスクを正確に把握できないことがあるためです。
5. 病期ごとの症状・検査のタイミング
第1期・第2期はほとんど無症状で、健診や外来での尿検査・血液検査で初めて見つかることがほとんどです。第3期になると尿の泡立ちが目立つようになり、むくみを自覚し始める方も出てきます。第4期に進むと、強いむくみ、貧血、倦怠感、食欲低下など全身の症状が現れやすくなります。
検査の目安
糖尿病で通院中の方は、少なくとも年1回の尿アルブミン検査に加えて、血液検査でのeGFR(推算糸球体ろ過量)のチェックをおすすめします。すでに微量アルブミン尿を指摘されている方や、血圧が高めの方、罹病期間が長い方は、主治医と相談のうえ、より頻回な検査を検討します。
6. 治療の基本:血糖・血圧・体重の総合管理
糖尿病腎症の進行を防ぐ治療の土台は、血糖・血圧・体重の総合的な管理です。血糖コントロール(個別化されたHbA1c目標の達成)に加え、糖尿病を合併するCKDでは血圧130/80mmHg未満を目安に管理することが多く、減塩や適正な蛋白質摂取量の調整、禁煙も重要な要素です。腎保護効果が確立しているACE阻害薬・ARB(レニン・アンジオテンシン系阻害薬)は、以前から糖尿病腎症治療の標準治療として広く使われています。
7. 進行を防ぐ新しい腎保護薬
近年、血糖を下げるだけでなく、腎臓そのものを保護する効果が確認された薬剤が相次いで登場し、糖尿病腎症の治療は大きく進歩しています。
SGLT2阻害薬(フォシーガ/ダパグリフロジン)
フォシーガ(ダパグリフロジン)は、2021年8月25日に厚生労働省より「慢性腎臓病」の効能・効果の追加承認を取得しました。第III相DAPA-CKD試験の結果に基づく承認で、2型糖尿病を合併しているかどうかにかかわらず使用できる、国内で初めての慢性腎臓病治療薬です。ただし末期腎不全や透析中の方には使用できず、eGFRが25mL/min/1.73m²未満の場合は腎保護作用が十分に得られない可能性があるとされています。
非ステロイド型MR拮抗薬(ケレンディア/フィネレノン)
ケレンディア(フィネレノン)は、2022年3月28日に「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」を対象として承認された、非ステロイド型の選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬です。MRの過剰な活性化を抑えることで、腎臓や心血管の障害の進行を抑制する働きが期待されています。こちらも末期腎不全・透析施行中の方には使用できません。
🔬 ポイント:血糖を下げる薬から「腎臓を守る薬」へ
これらの薬剤は、単に血糖値を下げることが目的ではなく、腎機能の低下速度そのものを緩やかにすることを目的として使われる点が従来の糖尿病治療薬と異なります。使用できるかどうかは病期・腎機能・他の合併症によって異なるため、必ず主治医と相談のうえで検討してください。
健診で尿アルブミン・尿蛋白の異常を指摘された方や、糖尿病の治療を続けているのに腎臓の数値が気になる方は、五良会クリニック白金高輪 糖尿病内科(03-6432-5353)までお気軽にご相談ください。
8. 白金高輪でできる検査と診療体制
五良会クリニック白金高輪(港区高輪、白金高輪駅2番出口徒歩1分)では、糖尿病協会登録医による糖尿病内科外来で、尿アルブミン検査・eGFRを含む血液検査・持続血糖モニター(CGM)による血糖管理、そして今回ご紹介したSGLT2阻害薬やMR拮抗薬を含めた薬物療法の調整まで、一貫してご相談いただけます。腎機能低下に伴う貧血が疑われる場合は、血液内科専門外来(毎週日曜日・木曜日)とも連携して対応します。健診結果をお持ちいただければ、そのまま評価に活用できます。
9. 理事長コメント
💬 理事長 五藤良将より
「糖尿病腎症は、網膜症や神経障害と同じく、気づいたときにはある程度進んでいることが多い合併症です。ですが今は、尿アルブミン検査で早く見つけ、腎臓を守る新しいお薬で進行を抑えられる時代になりました。健診で尿や腎機能の数値を指摘された方、糖尿病治療中で腎臓の状態が気になる方は、遠慮なくご相談ください。血糖・血圧・腎臓を一緒に診ていきます。」
よくあるご質問(FAQ)
Q. 健診の尿検査で「タンパクは正常」と言われれば、腎症の心配はないですか?
A. 健診で一般的に行われる尿蛋白の定性検査は、早期のごくわずかなアルブミン漏出を捉えるには感度が十分でないことがあります。糖尿病のある方は、より精度の高い尿アルブミン/クレアチニン比(ACR)での評価をおすすめします。
Q. 糖尿病腎症は治りますか?
A. 早期の微量アルブミン尿期であれば、血糖・血圧管理や新しい腎保護薬によって改善・進行抑制が期待できます。ただし進行した段階では機能の完全な回復は難しく、それ以上の悪化を防ぐことが治療の中心になります。だからこそ早期発見が重要です。
Q. 血糖値のコントロールが良ければ腎症にはならないのでしょうか?
A. 血糖コントロールは重要な要素ですが、それだけで発症を完全に防げるわけではありません。血圧、脂質、罹病期間、体質、加齢など複数の要因が関わるため、血糖・血圧・脂質・体重を総合的に管理することが大切です。
Q. 尿アルブミン検査はどのくらいの頻度で受ければよいですか?
A. 糖尿病診療ガイドラインでは、糖尿病のある方は少なくとも年1回の尿アルブミン検査が推奨されています。すでに微量アルブミン尿などの異常を指摘されている方は、主治医と相談のうえ、より頻回な検査を検討します。
Q. フォシーガやケレンディアは、糖尿病がなくても使える薬ですか?
A. フォシーガ(ダパグリフロジン)は2型糖尿病合併の有無にかかわらず慢性腎臓病に使用できますが、ケレンディア(フィネレノン)は2型糖尿病を合併する慢性腎臓病が適応です。いずれも末期腎不全・透析施行中の方には使用できず、使用可否は医師の判断が必要です。
Q. 健診で「eGFR低下」と「尿蛋白」を同時に指摘されました。すぐ受診すべきですか?
A. はい、早めの受診をおすすめします。特に糖尿病のある方は腎機能が低下するスピードが速いことがあるため、両方の異常が重なっている場合は放置せず、腎臓の状態を詳しく評価することが大切です。
まとめ
📝 この記事のポイント
✅ 糖尿病腎症は自覚症状がないまま進行し、透析導入原因の第1位(2024年37.6%)を占める
✅ 早期発見には尿アルブミン/クレアチニン比(ACR)の測定が有用。年1回の検査が目安
✅ 2024年に病期分類が改訂され「正常アルブミン尿期〜腎代替療法期」の5段階に整理された
✅ 血糖・血圧・体重の総合管理に加え、SGLT2阻害薬やMR拮抗薬などの新しい腎保護薬が選択肢に
✅ 健診で尿や腎機能の異常を指摘されたら、放置せず早めに相談することが腎臓を守る近道
✅ 早期発見には尿アルブミン/クレアチニン比(ACR)の測定が有用。年1回の検査が目安
✅ 2024年に病期分類が改訂され「正常アルブミン尿期〜腎代替療法期」の5段階に整理された
✅ 血糖・血圧・体重の総合管理に加え、SGLT2阻害薬やMR拮抗薬などの新しい腎保護薬が選択肢に
✅ 健診で尿や腎機能の異常を指摘されたら、放置せず早めに相談することが腎臓を守る近道
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最新の経口薬・GLP-1製剤・持続血糖モニター(CGM)にも対応。
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✅ 健診で尿蛋白・尿アルブミン・eGFR低下を指摘された方
✅ 糖尿病治療中で腎臓の状態が気になる方
✅ 血糖・血圧・脂質も含めた包括的管理を希望の方
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