糖尿病の方が知っておくべき膵臓がん・大腸がんリスク|早期発見のための内視鏡検査のすすめ
糖尿病をお持ちの方、あるいは最近急に血糖値が上昇した方、ご家族に膵臓がんや糖尿病の方がいらっしゃる方へ。本記事では、糖尿病と膵臓がん・大腸がんなど各種がんとの関係について、国立がん研究センターや日本糖尿病学会・日本癌学会による公的な大規模研究データをもとに解説します。そして、リスクを有する方にとって特に重要な早期発見のための内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)についてもご案内いたします。
この記事のポイント
- 糖尿病の方は膵臓がん・大腸がん・肝臓がんのリスクが高いことが国内大規模研究で判明しています
- 特に「糖尿病を発症して1年以内」は膵臓がんリスクが約6.7倍と極めて高くなります
- 喫煙男性は非喫煙者に比べ膵臓がんリスクが1.59倍、女性は1.81倍です
- 糖尿病のある方は、年齢に応じた胃がん・大腸がん検診の受診が推奨されています
- 当院では胃カメラ・大腸カメラ・腹部エコーによる早期発見、チャンピックス・ニコチネルTTSを用いた禁煙外来、オンライン診療にも対応しております
1. 膵臓がんの現状:日本における深刻な統計
膵臓がんは、日本においてがん死亡原因の第4位(男性)、第3位(女性)を占める極めて予後不良のがんです。国立がん研究センターの最新がん統計によると、2019年の膵臓がん罹患数は約43,865人、2021年の膵臓がんによる死亡数は38,579人に達しています。
膵臓がんが恐れられる最大の理由は、初期症状に乏しく、発見時にはすでに進行していることが多い点にあります。そのため、リスク因子を正しく理解し、リスクのある方は早期からの定期検査によって異常を察知することが何よりも重要です。
2. 膵臓がんの主なリスク因子
国立がん研究センター東病院および「がん情報サービス」では、膵臓がんの主なリスク因子として以下を挙げています。
| リスク因子 | 内容 |
|---|---|
| 糖尿病 | 膵癌診療ガイドライン(日本膵臓学会)において、糖尿病のある方の膵臓がん発症リスクは、ない方の約2倍と記載されています |
| 喫煙 | 国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類でGroup 1(確実)に分類。日本人対象のプール解析で、現在喫煙者は男性1.59倍、女性1.81倍のリスク上昇 |
| 家族歴 | 血縁者に膵臓がん患者が複数いる場合、発症リスクが増加。遺伝性膵癌(BRCA1/2、PALB2、ATM等)の関与も指摘されています |
| 慢性膵炎・IPMN | 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や慢性膵炎は、膵臓がん発生の高リスク病変として経過観察が必要です |
| 肥満 | IARCは膵臓を含む複数臓器のがんリスクを肥満が高めると報告しています |
| 飲酒 | 過度の飲酒は、独立した膵臓がんリスク因子として国立がん研究センター東病院の資料に記載されています |
| 男性 | 罹患率は男性がやや高く、日本の膵臓がん死亡数でも男性が上回る傾向にあります |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 予防・検診」、国立がん研究センター東病院「膵がん」、国立がん研究センター多目的コホート研究(JPHC Study)、日本膵臓学会「膵癌診療ガイドライン2022」
3. 糖尿病と膵臓がん:特に重要な関係
糖尿病と膵臓がんの関係は非常に重要なテーマです。日本膵臓学会の膵癌診療ガイドライン2022に記載されたデータによれば、糖尿病発症からの経過年数別に膵臓がんの発症リスクは以下のように変化します。
| 糖尿病発症からの期間 | 膵臓がん発症リスク |
|---|---|
| 1年未満(新規発症期) | 約6.7倍 |
| 1〜4年 | 約1.86倍 |
| 5〜9年 | 約1.72倍 |
| 10年以上 | 約1.36倍 |
出典:日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会(編集)『膵癌診療ガイドライン2022』金原出版
特に注意すべきサイン
これまで正常だった血糖値が急に悪化した、糖尿病治療中にHbA1cが理由なく上昇した、生活習慣は変わらないのに急に体重が減ったーこれらは、膵臓がんが隠れている可能性を示すサインとなり得ます。国立がん研究センターの「がん情報サービス」でも、「膵臓がんになると、糖尿病が発症したり、悪化したりすることがあるため、血糖値などの異常を指摘されたときは、膵臓の検査について医師と相談するとよい」と明記されています。
また、QLife「がんプラス」の解説によれば、膵臓がん患者の約60〜80%で糖尿病が認められ、4〜5%の患者では糖尿病の増悪が膵臓がん発見のきっかけになっているとされています。糖尿病は膵臓がんのリスク因子であると同時に、膵臓がんの「警告サイン」にもなり得るのです。
4. 喫煙と膵臓がん:日本人を対象とした大規模研究
国立がん研究センターは、日本を代表する10コホート研究(JPHC Study I・II、JACC研究、宮城県コホート研究など)から35万人以上のデータを統合したプール解析を実施し、専門誌Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention(2019年8月号)に結果を発表しています。
平均約13年の追跡期間中に1,779人(男性961人、女性818人)が膵臓がんを発症。生涯非喫煙者と比較した現在喫煙者のリスクは以下の通りでした。
| 性別 | 非喫煙者との比較 |
|---|---|
| 男性 現在喫煙者 | 1.59倍 |
| 女性 現在喫煙者 | 1.81倍 |
出典:Matsuo K, et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2019 Aug;28(8):1370-1378.(国立がん研究センター プール解析)
さらに、国立がん研究センターJPHC研究では、男性喫煙者で糖尿病歴のあるグループはBMIが低いほど膵がんリスクが高くなるという結果も報告されており、「糖尿病+喫煙+痩せ」の組み合わせは特に注意が必要です。
禁煙は、今日から始められる最も確実ながん予防です
喫煙は、膵臓がんだけでなく、肺がん・食道がん・膀胱がん・咽頭がんなど多くのがんの確実な原因です。しかし、禁煙は「意志の力」だけに頼るものではなく、医学的なサポートで成功率を高められる”治療”です。当院では、チャンピックス(バレニクリン)およびニコチネルTTS(貼付型ニコチン製剤)を用いた禁煙外来を保険診療で実施しております。詳細は本記事後半および関連記事をご覧ください。
5. 糖尿病と膵臓がん以外のがんリスク
糖尿病が関係するのは膵臓がんだけではありません。日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会報告(2013年)および国立がん研究センター多目的コホート研究(JPHC Study)により、糖尿病と各種がんの関連が明らかになっています。
合同委員会報告では、日本人2型糖尿病の方の全がん発症リスクは約1.2倍に上昇し、特に大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが高いと結論されています。日本の8件のコホート研究のプール解析(津金昌一郎氏ら、国立がん研究センター)では、糖尿病患者のがんリスクは部位別に以下のように報告されています。
| がん種 | 男性のリスク | 女性のリスク |
|---|---|---|
| 肝臓がん | 2.24倍 | 1.94倍 |
| 腎臓がん | 1.92倍 | ― |
| 膵臓がん | 1.85倍 | ― |
| 胃がん | 1.23倍 | 1.61倍 |
| 大腸がん | 1.36倍 | ― |
出典:日本糖尿病学会・日本癌学会合同委員会「糖尿病と癌に関する委員会報告」糖尿病 56: 374, 2013/国立がん研究センター多目的コホート研究(Inoue M, et al. Arch Intern Med. 2006;166(17):1871-1877.)/国立国際医療研究センター糖尿病情報センター
特に注目すべきは、胃がんと大腸がんというまさに内視鏡検査で早期発見できるがんが、糖尿病によってリスク上昇するという事実です。糖尿病の方にとって、胃カメラ・大腸カメラは極めて有用な検診ツールとなります。
6. なぜ糖尿病でがんが増えるのか:メカニズム
国立がん研究センターおよび国立国際医療研究センター糖尿病情報センターは、そのメカニズムとして以下を挙げています。
- 高インスリン血症:2型糖尿病ではインスリン抵抗性を補うためインスリンが過剰分泌され、これが細胞増殖因子として発がんに関与する可能性があります
- IGF-I(インスリン様成長因子1)の増加:肝臓・膵臓などの臓器で腫瘍細胞の増殖を刺激
- 慢性炎症:糖尿病患者さんに見られる全身の慢性炎症が、発がん環境を形成
- 酸化ストレス:高血糖による酸化ストレスがDNAを損傷させ、遺伝子調節を狂わせる
- 共通のリスク因子:肥満・運動不足・喫煙・過剰飲酒など、糖尿病とがんに共通する危険因子の存在
7. 糖尿病の方へ:推奨される検査と検診
国立国際医療研究センター糖尿病情報センターでは、糖尿病の方に対し「厚生労働省が定める がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づくがん検診を推奨しています。この指針では、胃、子宮頸部、乳房、肺、大腸の5つのがんについて検診が定められています。
特に糖尿病の方にとって重要な検査は以下の通りです。
| 検査 | 目的・対象 |
|---|---|
| 上部消化管内視鏡 (胃カメラ) |
糖尿病で胃がんリスクが男性1.23倍、女性1.61倍に上昇。50歳以上の方は2年に1回の胃内視鏡検査が厚生労働省指針により推奨されています |
| 下部消化管内視鏡 (大腸カメラ) |
糖尿病で大腸がんリスクが男性1.36倍に上昇。便潜血検査陽性例や、40歳以上で一度も受けたことのない方、ポリープ既往のある方は積極的な受診が望まれます |
| 腹部超音波検査 | 膵臓・肝臓・胆嚢・腎臓を一度に評価できる侵襲の少ない検査。特に膵臓・肝臓がんリスクの高い糖尿病の方には定期的な受診が推奨されます |
| 血液検査 (腫瘍マーカー含む) |
CA19-9、CEAなどの膵臓・大腸関連マーカー。単独で診断に使えるものではありませんが、経過観察の補助として有用です |
8. 当院の内視鏡検査について
五良会クリニック白金高輪では、消化器内視鏡専門医による胃カメラ・大腸カメラ検査を実施しております。糖尿病をお持ちの方、膵臓がんや消化器がんのご家族歴のある方、気になる症状のある方は、ぜひ一度ご相談ください。
胃カメラ(上部消化管内視鏡)
- 経鼻・経口の両方に対応
- 鎮静剤使用によるリラックスした検査も選択可能
- ピロリ菌検査・生検も同時に実施可能
- 胃がん・食道がん・十二指腸潰瘍などの早期発見に有効
大腸カメラ(下部消化管内視鏡)
- 最新機器による高精細観察
- ポリープがあればその場で切除可能(日帰り)
- 鎮静下での苦痛の少ない検査
- 大腸がん・ポリープ・炎症性腸疾患の診断に有用
こんな方は特にご相談ください
- 糖尿病をお持ちで胃カメラ・大腸カメラを受けたことがない、または数年受けていない方
- 最近急にHbA1cが上昇した、血糖コントロールが悪化した方
- 原因不明の体重減少、腹痛、背部痛、食欲不振などの症状がある方
- 血縁者(親・兄弟姉妹・子)に膵臓がんの方がいらっしゃる方
- 慢性膵炎やIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)を指摘されたことのある方
- 健康診断で便潜血陽性、腹部エコー異常を指摘された方
9. 当院の禁煙外来:チャンピックス・ニコチネルTTSによる禁煙治療
喫煙は、膵臓がん・肺がん・大腸がんをはじめ、数多くのがんの確実なリスク因子です。糖尿病をお持ちの方にとって、禁煙は血糖コントロールの改善・心血管イベント予防・がんリスク低減の「三重の効果」が期待できる最も重要な生活習慣介入の一つです。
五良会クリニック白金高輪では、2025年10月に供給再開されたチャンピックス(バレニクリン)の処方を保険診療で実施しております。また、従来から貼付型ニコチン製剤であるニコチネルTTSによる禁煙治療にも対応しており、患者さまの状況に応じて最適な治療法をご提案いたします。診療の詳細・料金・通院スケジュールは、当院の禁煙外来ページでもご確認いただけます。
関連記事のご案内
チャンピックス再開の経緯、作用機序、服用スケジュール、通院スケジュール(計5回・12週間)、副作用、港区の助成金情報などは、以下の記事で詳しく解説しております。
2つの禁煙補助薬の使い分け
| チャンピックス(バレニクリン) | ニコチネルTTS(貼付型ニコチン製剤) |
|---|---|
|
・内服薬(1日2回) ・ニコチンを含まない非ニコチン製剤 ・脳内ニコチン受容体に部分的に結合し、禁断症状と喫煙満足感の両方を軽減 ・2025年10月供給再開 |
・皮膚に貼るテープ剤(1日1回) ・ニコチンを皮膚から少量ずつ補充しながら徐々に減量 ・内服が苦手な方、仕事中に服薬を忘れがちな方に向く ・安定して継続処方が可能 |
オンライン診療にも対応しております
当院では、禁煙外来・糖尿病管理・生活習慣病の継続診療についてオンライン診療もご利用いただけます。お仕事が忙しい方、通院時間を短縮したい方、通院のために休暇を取りづらい方にも継続的な治療をご提供できるよう体制を整えております。
オンライン診療でできること
- 禁煙外来:初診は対面で、2回目以降の経過観察はオンラインで対応可能
- 糖尿病の継続診療:HbA1c推移の確認、生活指導、薬剤調整
- 生活習慣病の管理:高血圧・脂質異常症などの定期フォロー
- 検査結果のご説明:採血・画像検査の結果確認
※初診や精密検査が必要な場合、内視鏡検査については対面診療が必要です。
※オンライン診療の詳細・ご予約方法は、オンライン診療のご案内ページをご覧ください。
港区にお住まいの方は禁煙外来の助成金制度があります
港区では、禁煙外来の治療費に対する助成制度が設けられています。保険診療の自己負担分に対し、一定額の助成が受けられる場合があります。詳細は港区「禁煙外来治療費助成のご案内」のページでご確認いただくか、当院スタッフまでお尋ねください。
当院の禁煙外来の診療内容・料金・ご予約についてはこちら(禁煙外来ページ)をご覧ください。
10. まとめ:早期発見のために今できること
膵臓がんは「発見されたときには進行している」ことが多いがんですが、糖尿病や喫煙・家族歴などのリスク因子をお持ちの方が、症状が出る前から定期的な検査を受けることで、早期発見の可能性を高めることができます。
また、糖尿病の方は胃がん・大腸がんのリスクも上昇することが、国立がん研究センターの大規模研究で明らかになっています。胃カメラ・大腸カメラは、これらのがんを早期段階で発見できる最も確実な検査方法です。
さらに、禁煙は膵臓がんを含むあらゆるがんの発症リスクを低減させる最も効果的な介入です。「意志の力だけでは続かなかった」という方こそ、当院の禁煙外来(チャンピックス・ニコチネルTTS)でぜひ医学的サポートをご活用ください。
「忙しくて検査の時間がとれない」「検査が怖い」といった理由で先延ばしにされている方こそ、一度ご相談いただきたいと考えております。五良会クリニック白金高輪では、対面診療・内視鏡検査・オンライン診療を組み合わせて、お一人おひとりの状況に合わせた無理のない検査・治療計画をご提案いたします。
参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん」「最新がん統計」
- 国立がん研究センター東病院「膵(すい)がん」
- 国立がん研究センター多目的コホート研究(JPHC Study)「糖尿病とその後のがん罹患との関連について」「肥満指数・運動量、喫煙・糖尿病歴と膵がんとの関連について」「喫煙と膵臓がんリスク」
- Inoue M, et al. Diabetes mellitus and the risk of cancer: results from a large-scale population-based cohort study in Japan. Arch Intern Med. 2006;166(17):1871-1877.
- Matsuo K, et al. Cigarette Smoking and Pancreatic Cancer Risk: An Analysis from the Pooling Project of Prospective Studies in Japan. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2019;28(8):1370-1378.
- 日本糖尿病学会・日本癌学会合同委員会「糖尿病と癌に関する委員会報告」糖尿病 56: 374, 2013
- 日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会(編集)『膵癌診療ガイドライン2022』金原出版
- 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(令和7年一部改正)
- 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「がん」
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の代わりとなるものではありません。症状やご不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。記載データは執筆時点の公開資料に基づいており、最新データは各出典の公式サイトでご確認ください。
五良会クリニック白金高輪 理事長 五藤良将
GORYOKAI CLINIC SHIROKANETAKANAWA
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