夏こそ注意したい帯状疱疹|2025年から定期接種に。ワクチン2種類の違いと選び方【白金高輪の内科が解説】
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
夏の疲れがたまってくるこの時期、「体の片側にピリピリとした痛みが出てきた」「赤い水ぶくれが帯のように広がってきた」といったご相談が増えてきます。その多くが帯状疱疹(たいじょうほうしん)です。暑さや寝不足で体力が落ち、免疫の力が下がりやすい夏から初秋は、帯状疱疹が出やすい季節のひとつです。
帯状疱疹は「一度かかれば終わり」ではなく、加齢とともに発症リスクが高まり、後遺症として痛みが長く残ることもある病気です。そして、2025年4月から65歳の方などを対象に、帯状疱疹ワクチンが予防接種法に基づく定期接種になりました。この記事では、帯状疱疹という病気の正体、夏に注意したい理由、そして2種類あるワクチンの違いと選び方を、内科・予防接種の観点からわかりやすく解説します。
📌 この記事のいちばん大切なこと
帯状疱疹はワクチンで予防できる病気です。50歳以上の方、そして2025年4月から定期接種の対象になった65歳の方は、この機会にワクチン接種をご検討ください。持病や免疫を抑える治療を受けている方は、より早い時期からの予防が望まれます。
1. 帯状疱疹とはどんな病気か
帯状疱疹は、子どもの頃にかかった水ぼうそう(水痘)のウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が原因で起こります。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体の中の神経節にひそかに潜み続けています。ふだんは免疫の力で抑え込まれていますが、加齢や疲労、ストレス、病気などで免疫が下がると、ウイルスが再び活動を始め、神経に沿って皮膚に症状を出します。これが帯状疱疹です。
典型的には、体の左右どちらか片側に、ピリピリ・チクチクとした痛みが出た後、数日して赤い発疹と水ぶくれが「帯」のように帯状に広がります。胸や背中、お腹、顔などに多くみられます。日本人では50歳代から発症が急に増え、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を経験すると報告されています。
💡 ポイント
帯状疱疹は人にうつる病気というより、自分の中に潜んでいたウイルスが再び暴れ出す病気です。ただし、水ぼうそうにかかったことのない乳幼児などには、接触によって水ぼうそうとしてうつることがあるため、水ぶくれがある間は注意が必要です。
2. なぜ夏〜初秋に注意が必要なのか
帯状疱疹は一年を通じて発症しますが、体力や免疫が落ちやすい時期に出やすいという特徴があります。夏から初秋にかけては、次のような要因が重なりやすく、注意が必要です。
| 夏〜初秋に免疫が下がりやすい理由 | 体への影響 |
|---|---|
| 強い紫外線・暑さによる疲労 | 全身の消耗、体力低下 |
| 熱帯夜による睡眠の質の低下 | 回復力・免疫の低下 |
| 冷房・冷たい飲食による自律神経の乱れ | 体調のゆらぎ |
| 夏バテによる食欲不振・栄養の偏り | 体力・免疫の維持が難しくなる |
「夏の疲れが出てきたな」と感じる頃に、体の片側の痛みや違和感が現れたら、帯状疱疹の可能性も念頭に置いてください。とくにお盆前後から9月にかけては、夏の疲労が蓄積して体調を崩しやすい時期です。
3. こんな症状は要注意 ― 早期受診のサイン
帯状疱疹は、できるだけ早く抗ウイルス薬による治療を始めることが、症状を軽くし、後遺症を防ぐうえでとても大切です。目安として、発疹が出てから72時間(3日)以内の治療開始が望ましいとされています。次のような症状があれば、早めにご相談ください。
・痛みのある場所に、赤い発疹や水ぶくれが帯状に出てきた
・顔・額・目のまわり・耳に症状が出ている
・発疹が広い範囲に広がってきた、または高熱を伴う
⚠️ 特に注意していただきたいケース
顔(特に目や額、耳)に帯状疱疹が出た場合は、視力や聴力、顔の神経に影響が及ぶことがあります。目の痛み・充血、まぶたの腫れ、耳の痛みやめまい、顔の動かしにくさを伴うときは、早急に医療機関を受診してください。
4. こわいのは「帯状疱疹後神経痛」
帯状疱疹の皮膚症状は、多くの場合3〜4週間ほどで治まります。しかし、皮膚が治った後も痛みだけが長く続くことがあります。これを帯状疱疹後神経痛(PHN:post-herpetic neuralgia)と呼びます。
帯状疱疹後神経痛は、「衣服が触れるだけでも痛い」「焼けるような、電気が走るような痛みが続く」といった形で、数か月から、時に数年にわたって生活の質を大きく損なうことがあります。年齢が高いほど、また急性期の痛みや発疹が強いほど、後神経痛に移行しやすいことが知られています。だからこそ、発症したら早く治療を始めること、そしてそもそも発症しないようワクチンで予防することが重要になります。
参考:日本皮膚科学会ほか 帯状疱疹に関する診療情報
5. 2025年4月から定期接種に ― 対象者と経過措置
2025年(令和7年)4月から、高齢者を対象とした帯状疱疹ワクチンが予防接種法に基づく「定期接種(B類疾病)」になりました。これにより、対象となる方は自治体の助成を受けて接種を受けられるようになりました。
定期接種の対象となる方(2025年度〜)
・その年度に65歳になる方
・60〜64歳で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
さらに、これまで対象年齢を過ぎていた方にも接種の機会を確保するため、2025年度から2029年度までの5年間の経過措置が設けられています。
⚠️ 費用・実施方法は自治体ごとに異なります
自己負担額、使用できるワクチンの種類、接種期限は市区町村によって異なります。定期接種は期間内に接種しないと対象外になるため、対象年度の方はお早めにご検討ください。港区にお住まいの方をはじめ、詳細はお住まいの自治体の通知をご確認いただくか、当院までお問い合わせください。
6. 2種類のワクチンの違いと選び方
帯状疱疹の予防に使えるワクチンは、現在2種類あります。「生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)」と、「組換えワクチン(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン、商品名シングリックス)」です。それぞれ特徴が異なるため、年齢・体質・持病・費用などを踏まえて選ぶことが大切です。
| 項目 | 生ワクチン(水痘ワクチン) | 組換えワクチン(シングリックス) |
|---|---|---|
| 種類 | 弱毒化した生ワクチン | 不活化(組換えサブユニット)ワクチン |
| 接種回数 | 1回(皮下注射) | 2回(筋肉注射/通常2か月間隔) |
| 予防効果の高さ | 組換えワクチンより低め | 高い(50歳以上で約97%、70歳以上でも約90%) |
| 効果の持続 | 数年程度で低下しやすい | 長く持続(少なくとも約10年) |
| 免疫を抑える治療中の方 | 原則接種できない | 接種できる場合が多い(要相談) |
| 副反応 | 比較的軽い | 接種部位の痛み・腫れ、発熱・筋肉痛などが出やすい |
組換えワクチン(シングリックス)は、50歳以上の方で約97%、70歳以上でも約90%という高い予防効果が臨床試験で示されており、効果が長く持続する点が大きな利点です。一方で2回の接種が必要で、接種後に痛みや発熱などの副反応がやや出やすいという特徴があります。生ワクチンは1回で済み副反応も軽めですが、効果はやや控えめで、免疫を抑える治療中の方などには使えません。
💡 選び方の考え方(一例)
・しっかり長く予防したい方、後神経痛を強く避けたい方:組換えワクチン(シングリックス)が有力な選択肢です。
・持病があり免疫を抑える治療中の方:生ワクチンが使えないため、組換えワクチンが選択肢になります。
・1回で手軽に、副反応を軽くしたい方:生ワクチンを検討します。
最終的には、年齢・持病・お住まいの自治体の助成内容を踏まえて、医師とご相談のうえで決めるのが安心です。
7. 糖尿病・免疫を抑える治療中の方へ
帯状疱疹は誰にでも起こり得ますが、免疫の力が下がりやすい方は、より発症しやすく、重症化・後神経痛のリスクも高くなります。具体的には、糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方、悪性腫瘍の治療中の方、膠原病やリウマチなどで免疫を抑える薬(ステロイド、生物学的製剤など)を使っている方などが該当します。
こうした方々は、帯状疱疹の予防メリットが特に大きい一方で、生ワクチン(生きたウイルスを弱毒化したワクチン)は原則として接種できないため、ワクチンの選択に注意が必要です。当院は糖尿病内科・血液内科を併設しており、持病の状態や治療内容を踏まえて、接種の可否やタイミング、ワクチンの種類を一緒に検討できます。持病のある方こそ、自己判断せず一度ご相談ください。
8. 理事長コメント
9. まとめ
✅ 夏〜初秋は体力・免疫が落ちやすく、片側の痛みや帯状の発疹に注意
✅ 発疹が出たら72時間以内の治療開始が望ましく、顔・目・耳の症状は特に早急な受診を
✅ 皮膚が治った後も痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」に要注意
✅ 2025年4月から65歳の方などが定期接種の対象に。70〜100歳の経過措置もあり
✅ ワクチンは生ワクチンと組換えワクチン(シングリックス)の2種類。年齢・持病・費用を踏まえて選ぶ
10. よくあるご質問(FAQ)
参考・出典
・厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」(定期接種の対象・経過措置に関する情報)
・一般財団法人阪大微生物病研究会(BIKEN財団)「2025年4月から帯状疱疹ワクチンが定期接種に」
・シングリックス筋注用 添付文書・臨床試験成績(ZOSTER-006、ZOSTER-022試験の有効率)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針に代わるものではありません。制度の詳細・費用はお住まいの自治体、接種の可否は診察のうえでご確認ください。
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