夏のレジャーのケガと破傷風|大人こそ危ない「10年ごとの追加接種」と1967年生まれの落とし穴|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

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夏のレジャーのケガと破傷風|大人こそ危ない「10年ごとの追加接種」と1967年生まれの落とし穴|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

夏のレジャーのケガと破傷風|大人こそ危ない「10年ごとの追加接種」と1967年生まれの落とし穴

医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)

夏はキャンプやガーデニング、海や川でのレジャー、農作業など、屋外で土や砂に触れる機会が一気に増える季節です。転んで擦りむいたり、木のトゲやサビた釘を踏んだり――そんな「よくある小さなケガ」から発症するのが破傷風(はしょうふう)です。ありふれた傷が入り口になるにもかかわらず、発症すると全身のけいれんを起こし、日本でも毎年5〜9人の方が命を落としている、決して過去の病気ではありません。

破傷風はワクチン(破傷風トキソイド)で確実に予防できる病気です。ところが、成人の多くは子どもの頃に受けた免疫が年月とともに薄れ、いざというときに守られていないことが少なくありません。とくに1967年(昭和42年)以前に生まれた世代は、そもそも基礎免疫を持っていない可能性が高いことがわかっています。この記事では、破傷風という病気の正体と、世代ごとに異なる「あなたの守り」の考え方、けがをしたときの対応までを、五良会クリニック白金高輪の理事長が整理してお伝えします。

⚠️ まず結論

破傷風はワクチンで防げます。小児期の定期接種を終えた方も免疫は約10年で減衰します。最後の接種から10年以上たっている方、屋外活動が多い方、そして1967年以前生まれで接種歴が不明な方は、追加接種(ブースター)や基礎接種のご相談をおすすめします。

1. 破傷風とはどんな病気か

破傷風は、破傷風菌(Clostridium tetani)という細菌が傷口から体内に入り、菌が作り出す毒素(テタノスパスミン)によって、全身の筋肉が自分の意思とは無関係にけいれんを起こす病気です。うつる(人から人へ感染する)病気ではなく、菌の入った傷から自分が発症するタイプの感染症です。

破傷風菌は「芽胞(がほう)」という硬い殻をまとった状態で、世界中の土の中にごく普通に存在しています。芽胞は熱や乾燥、消毒薬にも強く、環境中で長く生き残ります。この芽胞が傷の奥の空気の少ない場所(酸素を嫌う嫌気性の環境)に入り込むと発芽・増殖し、毒素を出し始めます。

💡 ポイント

破傷風菌はどこにでもいる「土の常在菌」です。つまり、土や砂に触れる屋外での傷はすべて感染の入り口になり得ます。大きな傷だけでなく、トゲ・釘・すり傷など小さな傷でも発症することがあります。

2. なぜ夏のレジャーで注意が必要なのか

破傷風は一年を通じて発生しますが、屋外で土や砂に触れる機会が増える夏場は、感染の入り口となる「けが」そのものが増えます。次のような場面は、いずれもありふれた日常ですが、破傷風菌の入り口になり得ます。

注意したい夏の場面

場面 想定されるけが
キャンプ・登山・アウトドア 枝・岩での擦り傷、テント設営時の刺し傷
ガーデニング・農作業・草むしり 土いじりでの切り傷、トゲ・園芸用具による傷
海・川・砂浜での遊び 貝殻・流木・砂の中の異物による切創・刺創
バーベキュー・DIY サビた釘・金属・道具による刺し傷
災害(台風・水害後の片づけ) がれき・泥にまみれた傷(過去の震災でも発生報告あり)

とくに「泥や土で汚れた傷」「深い刺し傷」「動物に咬まれた傷」は破傷風のリスクが高いとされます。こうした傷を負ったときは、たとえ小さくても放置せず、まず流水でよく洗い、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。

3. 症状の進み方――「口が開かない」から始まる

破傷風の潜伏期間は、傷を負ってからおよそ3〜21日(多くは2週間前後)とされます。潜伏期が短いほど重症になりやすいと言われます。症状は特徴的な順序で進行します。

第1期 局所のこわばり
口が開きにくい(開口障害/牙関緊急)、首や肩のこわばり、飲み込みにくさ。最初は「顎が疲れた」「肩こり」と勘違いされやすい段階です。
第2期 顔・首へ拡大
表情筋がこわばり、口が横に引きつれて笑ったように見える「痙笑(けいしょう)」が現れます。
第3期 全身けいれん
背中を弓なりに反らす「後弓反張(こうきゅうはんちょう)」など、全身の激しいけいれん発作が起こります。光・音・接触が刺激となって誘発されます。
第4期 呼吸への影響
呼吸に関わる筋肉がけいれんし、窒息や呼吸不全に至ることがあります。集中治療室(ICU)での全身管理が必要になります。

受診の目安

屋外でのけがのあと、数日〜数週間して「口が開きにくい」「首や肩がこわばる」「飲み込みにくい」といった症状が出たときは、破傷風の初期症状の可能性があります。すぐに医療機関を受診し、けがの経緯を伝えてください。

4. 日本での発生状況と致死率

「破傷風はもう見ない病気」と思われがちですが、日本では現在も毎年およそ100例前後の届出があり、決してまれではありません。国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所)の情報によると、全身性破傷風の致死率は10〜20%とされ、日本では毎年5〜9人ほどが破傷風で亡くなっています。

📊 発生の特徴
・年間届出数:約100例前後(近年)
・致死率(全身性):10〜20%
・発生の約6割が65歳以上の高齢者
出典:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト/厚生労働省

高齢者に多いのには理由があります。日本で破傷風を含む定期予防接種(三種混合ワクチン)が始まったのは1968年(昭和43年)です。それ以前に生まれた世代は、子どもの頃にワクチンを受ける機会がなく、基礎免疫を持っていない可能性が高いのです。この「世代の壁」については、⑥で詳しく説明します。

5. 破傷風はワクチンで防げる

破傷風は、破傷風トキソイドというワクチンで確実に予防できます。トキソイドとは、菌が作る毒素を無毒化して免疫だけを作れるようにしたワクチンで、接種することで体内にあらかじめ「毒素を打ち消す抗体」を用意しておくものです。

子どもの定期接種スケジュール

現在の日本では、破傷風は乳幼児期からの定期接種に組み込まれています。

時期 内容
第1期(生後2か月〜) 四種混合・五種混合ワクチンとして、初回3回+追加1回の計4回
第2期(11〜12歳) 二種混合(DT)ワクチンとして1回

💡 免疫は「一生もの」ではありません

定期接種をきちんと受けても、破傷風の免疫はおおむね10年程度で徐々に低下します。第2期(11〜12歳)が最後の接種になる方が多いため、20代半ば以降は免疫が薄れていることが少なくありません。だからこそ、成人期の「追加接種」が意味を持ちます。

6. 世代で違う「あなたの免疫」――1967年生まれが分かれ目

ご自身の破傷風への守りは、生まれた年によって大きく異なります。ここが破傷風予防のもっとも重要なポイントです。

✅ 1968年(昭和43年)以降に生まれた方
子どもの頃に定期接種で基礎免疫ができている世代です。ただし前述のとおり免疫は年々低下するため、最終接種から10年以上たっている方は、10年ごとの追加接種(トキソイド1回)が望ましいとされています。
⚠️ 1967年(昭和42年)以前に生まれた方
定期接種が始まる前の世代にあたり、基礎免疫そのものを持っていない可能性が高いグループです。破傷風の発生の約6割が65歳以上に集中するのは、この世代が「守られていない」ことが背景にあります。この世代の方は、追加1回では不十分で、初回免疫としての3回接種(基礎接種)が必要になります。屋外活動が多い方はとくにご相談ください。

⚠️ 接種歴が分からないとき

母子手帳が見つからない、過去の接種歴がはっきりしない――という方は少なくありません。その場合は「未接種」に準じて考え、基礎接種からの計画を立てるのが安全です。判断に迷うときは、医療機関でご相談ください。

7. 10年ごとの追加接種と、けがをしたときの対応

平時の追加接種(ブースター)

基礎免疫のある方は、10年ごとに破傷風トキソイドを1回追加することで、免疫を高いレベルに保てます。海外渡航(とくに医療事情の異なる地域や長期滞在)、屋外での仕事や趣味が多い方は、この機会に接種歴を見直しておくと安心です。三種混合(百日せき・ジフテリア・破傷風)ワクチンで追加接種を行い、百日せきの免疫も同時に補う考え方もあります。

⚠️ 費用について

成人が受ける破傷風の追加接種は、法律上の定期接種ではないため原則として自費(保険適用外)です。費用は医療機関により異なります。当院での費用・スケジュールについてはお問い合わせください。

けがをしてしまったときの対応

土や泥で汚れた傷、深い刺し傷などを負ったときは、接種歴と傷の状態に応じて対応が決まります。医療機関では、次のような判断を行います。

状況 主な対応
傷口の処置 まず流水でよく洗い、汚れや異物を除去。医療機関で創部の洗浄・処置を行います。
免疫が十分な方 接種歴により、破傷風トキソイドの追加接種を行うことがあります。
接種歴が不明・不十分な方や汚染の強い傷 トキソイドに加え、抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)による受動免疫を併用することがあります。

💡 大切なこと

けがをしてからの対応も重要ですが、ふだんから免疫を保っておくことが最善の備えです。いざというときに「守られている状態」であれば、慌てずに済みます。

8. 理事長コメント

💬 理事長 五藤良将より
「破傷風は、感染症の中でも『予防できるのに、防がれていない』ことが最も惜しい病気のひとつです。とくに1967年以前生まれの世代は、ご自身に免疫がないことに気づいていないまま屋外で過ごされていることが多く、私が診療で最も気にかけている点です。当院は渡航医学認定医が2名在籍し、ワクチン全般のご相談を日常的にお受けしています。母子手帳をお持ちでない方も、接種歴に応じた計画を一緒に立てられます。夏の楽しい思い出を安心して重ねられるよう、この機会にご自身の『守り』を確認してみてください。」

9. まとめ

📝 この記事のポイント
✅ 破傷風菌は土の中にごく普通にいて、屋外の小さな傷でも発症しうる
✅ 夏はレジャー・園芸・アウトドアでけがが増え、リスクが高まる
✅ 症状は「口が開きにくい」から始まり、全身けいれん・呼吸不全へ進む
✅ 日本でも年間約100例、致死率10〜20%、発生の約6割が65歳以上
✅ ワクチン(破傷風トキソイド)で確実に予防できる
✅ 免疫は約10年で低下。基礎免疫のある方は10年ごとの追加接種を
✅ 1967年以前生まれで接種歴が不明な方は、基礎接種からの検討を

接種歴の確認・追加接種のご相談を承っています

五良会クリニック白金高輪では、ワクチン全般のご相談に対応しています。03-6432-5353/WEB予約もご利用ください。

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