健診で「MCVが高い」と言われたら|大球性貧血とビタミンB12欠乏のサイン――しびれ・物忘れ、メトホルミン内服中の方は要注意【白金高輪の血液内科】
- 2026年8月15日
- 貧血・血液内科,内科一般,健康診断・人間ドック
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
② MCVとは?健診の赤血球の項目(MCV・MCH・MCHC)の読み方
③ 大球性(MCVが高い)の主な原因一覧
④ ビタミンB12が不足する5つの理由
⑤ 貧血より怖い「神経のサイン」――しびれ・歩行のふらつき・物忘れ
⑥ 検査の進め方|血中濃度・抗体・胃カメラで原因を突き止める
⑦ 治療|内服と注射の使い分け、葉酸だけを飲んではいけない理由
⑧ 糖尿病でメトホルミンを飲んでいる方へ
⑨ 「B12もMCVも異常なのに原因が分からない」ときに考えること
⑩ 受診の目安と、当院での進め方
⑪ よくあるご質問(FAQ)
⑫ 理事長コメント
⑬ まとめ
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1. 結論:MCV高値+しびれ・物忘れがあれば、すぐにビタミンB12を測ってください
⚠️ 早めの受診をおすすめする方
・手足の先がしびれる・じんじんする、感覚が鈍い
・歩くとふらつく、暗いところで足元が不安定になった
・物忘れ・集中力低下が以前より目立つ
・舌がヒリヒリする・つるつるして赤い(Hunter舌炎)
・胃の手術(胃全摘・胃切除)を受けたことがある
・メトホルミン(糖尿病の薬)を数年以上飲んでいる
・菜食中心で、肉・魚・卵・乳製品をほとんど摂らない
2. MCVとは?健診の赤血球の項目(MCV・MCH・MCHC)の読み方
| 項目 | 意味 | おおよその基準範囲 |
|---|---|---|
| MCV 平均赤血球容積 |
赤血球1個の大きさ | 約80〜100 fL (施設により85〜102など幅あり) |
| MCH 平均赤血球ヘモグロビン量 |
赤血球1個に含まれるヘモグロビンの量 | 約27〜34 pg |
| MCHC 平均赤血球ヘモグロビン濃度 |
赤血球の中のヘモグロビンの濃さ | 約31〜36 % |
| 分類 | MCV | 代表的な原因 |
|---|---|---|
| 小球性 | 低い(およそ80未満) | 鉄欠乏性貧血、慢性炎症、サラセミアなど |
| 正球性 | 基準範囲内 | 出血直後、腎性貧血、溶血、慢性疾患に伴う貧血など |
| 大球性 | 高い(およそ100〜102超) | ビタミンB12欠乏・葉酸欠乏、アルコール、肝疾患、甲状腺機能低下症、骨髄異形成症候群など |
貧血がなくてもMCVだけ高いことがあります
ビタミンB12や葉酸の不足は、ヘモグロビンが下がるより先にMCVが上がることが少なくありません。「Hbは正常だからスルーでよい」と判断せず、MCV高値そのものを手がかりに調べることが、早期発見につながります。
3. 大球性(MCVが高い)の主な原因一覧
| タイプ | 原因 | ポイント |
|---|---|---|
| 巨赤芽球性 | ビタミンB12欠乏 | 悪性貧血、胃切除後、萎縮性胃炎、薬剤、極端な菜食など。神経症状を伴いうる |
| 葉酸欠乏 | アルコール多飲、偏食、妊娠、抗てんかん薬・メトトレキサートなど | |
| 非巨赤芽球性 | アルコール多飲・肝疾患 | 日常診療でよく遭遇。禁酒・節酒でMCVが下がることがある |
| 甲状腺機能低下症 | だるさ・むくみ・体重増加を伴うことがある | |
| 網赤血球の増加 | 溶血・出血後の回復期。若い赤血球は大きい | |
| 骨髄異形成症候群(MDS)など | 高齢者で、白血球・血小板も一緒に低い場合は要注意。血液内科での精査対象 |
4. ビタミンB12が不足する5つの理由
① 悪性貧血(自己免疫性萎縮性胃炎)
② 胃の手術(胃全摘・胃切除)を受けた方
③ ピロリ菌による萎縮性胃炎
④ 薬剤(メトホルミン・胃酸を抑える薬)
⑤ 極端な菜食・摂取不足
5. 貧血より怖い「神経のサイン」――しびれ・歩行のふらつき・物忘れ
⚠️ 「貧血がない=安心」ではありません
ビタミンB12欠乏では、血液の異常がまだ軽い段階で神経症状が先行することがあります。しびれや歩きにくさが数か月続いている場合は、整形外科的な原因だけでなく、B12欠乏の可能性も一度は検討する価値があります。
6. 検査の進め方|血中濃度・抗体・胃カメラで原因を突き止める
| STEP 1 | 血算・網赤血球・末梢血塗抹 白血球・血小板も一緒に低くないか、赤血球の形や好中球の核の分節過剰(過分葉)がないかを確認します。 |
| STEP 2 | 血清ビタミンB12・葉酸 まずここで大半が判別できます。あわせてフェリチン(鉄)も測ります(鉄欠乏が併存するとMCVが見かけ上正常化するため)。 |
| STEP 3 | 甲状腺機能・肝機能・LDH・間接ビリルビン 甲状腺機能低下症、肝疾患、無効造血や溶血の有無を確認します。 |
| STEP 4 | 抗内因子抗体・抗胃壁細胞抗体 悪性貧血が疑われる場合に追加します。抗内因子抗体は感度は約50%と高くありませんが、特異度は約90%と高く、陽性であれば診断的価値が高い検査です。 |
| STEP 5 | 上部消化管内視鏡(胃カメラ) 萎縮性胃炎の有無・ピロリ菌感染・腫瘍性病変の確認。自己免疫性萎縮性胃炎は胃がん・胃カルチノイドのリスクが高いことが知られています。 |
血清ビタミンB12の数値の目安
・200 pg/mL未満:低値。欠乏と判断されます
・200〜300 pg/mL:境界域。症状や他の検査とあわせて判断します
・300 pg/mL以上:欠乏の可能性は低いと考えます
※ただしカットオフを200 pg/mLとした場合の感度は65〜95%、特異度は50〜60%と報告されており、数値だけで白黒はつきません。また、抗内因子抗体の力価が高い悪性貧血では、測定上の干渉により血清B12が偽性に正常〜高値を示すことがあると報告されています。症状がそろっていれば、数値が正常でも欠乏を否定しません。
| 健診結果を持ってご相談ください(WEB予約はこちら) |
7. 治療|内服と注射の使い分け、葉酸だけを飲んではいけない理由
| 補充方法 | 向いている方 | 補足 |
|---|---|---|
| 注射(筋注) | 悪性貧血、胃全摘後、神経症状がある方、吸収障害が明らかな方 | 内因子がなくても確実に体内に入ります。導入期は頻回、その後は維持投与に移行します |
| 内服 | 摂取不足が主体の方、薬剤性、軽度の低下 | 高用量では内因子を介さない受動拡散でも一定量が吸収されます。効果は採血で確認します |
⚠️ 自己判断で「葉酸サプリだけ」を飲まないでください
ビタミンB12欠乏の状態で葉酸だけを投与すると、貧血は改善しても神経症状は改善せず、かえって悪化させることがあると指摘されています。市販のマルチビタミンやサプリメントで数値だけが「隠れて」しまい、診断が遅れることもあります。まず採血で原因を確かめてから補充を始めるのが安全です。
8. 糖尿病でメトホルミンを飲んでいる方へ
見落とされやすい落とし穴
糖尿病の方の手足のしびれは、まず糖尿病神経障害と考えられがちです。しかし、メトホルミンを長期に内服している方では、ビタミンB12欠乏による神経障害が重なっている可能性があります。血糖コントロールが良好なのにしびれが進む場合、ビタミンB12を一度測ってみることをおすすめします。
9. 「B12もMCVも異常なのに原因が分からない」ときに考えること
・MCVが年々じわじわ上昇している
・輸血が必要なほどの貧血が進行している
・原因不明の発熱・体重減少・寝汗を伴う
・末梢血塗抹で赤血球や白血球の形の異常を指摘された
10. 受診の目安と、当院での進め方
| 受診の目安 | おすすめの窓口 |
|---|---|
| MCV高値を指摘された/原因を調べたい | 内科(平日・土日祝も診療)で採血から |
| 血球が複数低い/血液疾患の経過観察中 | 血液内科専門外来(毎週日曜日・木曜日) |
| 萎縮性胃炎・ピロリ菌・胃の症状も確認したい | 内視鏡検査(土曜・日曜・祝日も毎週実施) |
| 糖尿病でメトホルミン内服中、しびれが気になる | 糖尿病内科(B12測定と薬剤調整をあわせて) |
11. よくあるご質問(FAQ)
12. 理事長コメント
13. まとめ
✅ 大球性の代表的原因はビタミンB12欠乏・葉酸欠乏。ほかにアルコール、肝疾患、甲状腺機能低下症、骨髄異形成症候群など
✅ ビタミンB12欠乏は貧血より先にしびれ・歩行障害・物忘れなどの神経症状が出ることがある
✅ 悪性貧血・胃切除後・萎縮性胃炎・メトホルミン長期内服・極端な菜食が主なリスク
✅ 血清B12は200 pg/mL未満で低値、200〜300は境界域。ただし数値だけでは白黒つかない
✅ 葉酸だけの補充は神経症状を悪化させうるため、原因確認前の自己判断はしない
✅ 神経症状は早く見つけて早く補うほど回復が期待できる
・廣川誠「Ⅲ.診断と治療 3.悪性貧血」日本内科学会雑誌 第103巻 第7号(2014年7月10日)
・MSDマニュアル プロフェッショナル版「ビタミンB12欠乏症」「自己免疫性萎縮性胃炎」(2026年8月時点)
・メトホルミン塩酸塩錠 添付文書(「その他の副作用」にビタミンB12減少、長期使用による吸収不良の注記)
・日経メディカル「メトホルミン長期投与でビタミンB12欠乏に注意」(長期投与例における定期的なビタミンB12測定の考慮)
・LSIメディエンス WEB総合検査案内「ビタミンB12(シアノコバラミン)」(血清B12の判定区分・感度/特異度)
・臨床神経学「血清ビタミンB12の異常な上昇がありながら、悪性貧血と亜急性脊髄連合変性症と診断しえた1例」(2025年)
・厚生労働省 eJIM「ビタミンB12(医療者向け)」
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や検査値の解釈は個人差がありますので、必ず医療機関にご相談ください。
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