鉄欠乏とむずむず脚症候群──眠れない原因が、採血でわかることがあります
1. むずむず脚症候群とはどんな病気か
2. 診断のための4つの必須項目
| 項目 1 | 脚を動かしたくてたまらない衝動がある 多くの場合、脚の不快な感覚を伴います。腕や体幹に出ることもあります |
| 項目 2 | 安静にしていると始まる、または悪化する 座っているとき、横になっているときに強くなります |
| 項目 3 | 動かすと軽くなる 歩いたり、脚をさすったり伸ばしたりしているあいだは楽になります。これが最大の特徴です |
| 項目 4 | 夕方から夜にかけて強くなる 朝はほとんど気にならないのに、夜になると始まるという日内変動があります |
3. なぜ鉄が足りないと脚がむずむずするのか
そのため、鉄が足りない状態のまま強い薬を使っても効果が不十分になることがあり、まず鉄を補充することが治療の出発点とされています。実際、鉄剤の補充だけで症状が明らかに軽くなる方がいらっしゃいます。
4. 「貧血がない=鉄は足りている」ではありません
| 検査項目 | 何がわかるか |
|---|---|
| ヘモグロビン(Hb) | 貧血の有無。健診でよく見る項目ですが、これだけでは鉄不足を見逃します |
| フェリチン | 貯蔵鉄の量。RLSの評価で最も重要な項目です。健診には通常含まれていません |
| 血清鉄・TIBC・ トランスフェリン飽和度 |
鉄が実際にどれだけ運ばれているかを示します |
そのため国内外の最新の指針では、フェリチンが75 ng/mL以下、あるいはトランスフェリン飽和度が低い場合には鉄補充を検討するという考え方が採られています。経口鉄剤で改善が乏しい場合には、静注鉄剤が考慮されることもあります。
出典:日本神経治療学会「標準的神経治療:Restless legs症候群診療ガイドライン2024」、American Academy of Sleep Medicine(AASM)RLS治療ガイドライン 2025年改訂版。数値はあくまで目安であり、個々の状態により判断が異なります。
5. 背景に隠れている病気を探す
| 原因 | 内容と確認方法 |
|---|---|
| 消化管出血 | 胃・十二指腸潰瘍、胃がん、大腸がん、大腸ポリープ、痔など。少量ずつ長期間出血していると、自覚症状がないまま鉄が減ります。胃カメラ・大腸カメラで確認します |
| 月経過多・子宮筋腫 | 若年〜中年女性で最も多い原因です |
| 妊娠・授乳 | 需要が大きく増えるため、妊娠中はRLSの頻度が高まります(多くは出産後に軽快します) |
| 吸収の低下 | 萎縮性胃炎、ピロリ菌感染、胃切除後、セリアック病など |
| 腎機能低下・透析 | RLSの合併頻度が高いことが知られています |
| 摂取不足 | 極端な食事制限、菜食中心の食生活など |
また、消化管出血が疑われる場合には胃カメラ・大腸カメラを毎週土曜日を含めて実施しています。同日に胃カメラと大腸カメラを受けていただくことも可能で、鎮静剤を用いた検査にも対応しています。「採血で鉄が低い」から「その原因を突き止め、治療する」まで、当院内で完結できることが強みです。
鉄剤の飲み方の工夫や、経口鉄剤が合わない場合の静注鉄剤については、【徹底解説】貧血の鉄剤が合わない方へ|飲み方のコツと、静注鉄剤という選択肢で詳しく解説しています。
6. 症状を悪化させる薬・嗜好品
● 一部の抗うつ薬
● 吐き気止め・胃薬の一部(ドパミンの働きを抑えるタイプ)
● カフェイン(コーヒー・緑茶・エナジードリンク)
● アルコール
● ニコチン
7. 治療の考え方──鉄が第一歩です
| STEP 1 | 採血で貯蔵鉄を評価する フェリチンを含めて確認します。薬を始める前の必須ステップです |
| STEP 2 | 悪化因子を洗い出す 服用中のお薬、カフェイン、アルコール、喫煙を見直します |
| STEP 3 | 鉄が不足していれば補充する 同時に、なぜ不足しているのかを調べます(消化管の評価など) |
| STEP 4 | それでも症状が残る場合、薬物治療を検討する 症状の程度・年齢・持病・併用薬をふまえて選択します。当院で処方まで対応可能です |
日本で保険適用されている3つの治療薬
| 薬剤 | 分類・特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| レグナイト® (ガバペンチン エナカルビル) |
α2δリガンドと呼ばれる分類。神経の過剰な興奮を抑えることで症状をやわらげます。ドパミン系とは異なる作用機序です | 飲み始めにめまい・眠気が出ることがあります。腎機能に応じた用量調整が必要です |
| ビ・シフロール® (プラミペキソール) |
ドパミン受容体作動薬。効果の立ち上がりが早いのが特徴です | 長期使用でオーグメンテーション(症状増強)が起こりやすいことが知られています。吐き気、突発的な眠気にも注意が必要です |
| ニュープロパッチ® (ロチゴチン) |
ドパミン受容体作動薬の貼付剤。1日1回貼ることで血中濃度が安定します | 貼付部位のかぶれが起こることがあります。ドパミン系のため、こちらもオーグメンテーションに注意が必要です |
さらに、判断に迷う症例や神経学的な精査が必要と考えられる場合には、同じ法人グループの五良ファミリークリニックセンター南に在籍する脳神経内科の専門医・指導医と連携して方針を検討できる体制を整えています。すでに他院でドパミン作動薬を長く続けており、症状の出方が変わってきたという方のご相談にも対応いたします。
2025年に改訂された米国睡眠医学会(AASM)のガイドラインでは、この問題を重くみて、ドパミン作動薬を第一選択から外す方向へ大きく舵が切られました。日本でも2024年に日本神経治療学会から「Restless legs症候群診療ガイドライン2024」が公表されており、治療の考え方は更新されています。すでにドパミン作動薬を長く続けていて症状が変化してきた方は、一度見直しをご相談ください。当院で処方内容の再検討まで対応いたします。
8. 白金高輪での検査の流れ
| STEP 1 | 外来受診・問診 脚の症状の性質、出る時間帯、動かすと楽になるかを詳しく伺います。服用中のお薬もすべてご確認します |
| STEP 2 | 採血 血算に加えて、フェリチン・血清鉄・TIBCなど鉄代謝の項目、腎機能、甲状腺機能などを評価します |
| STEP 3 | 結果説明・原因の検討 鉄欠乏があれば、その原因を検討します。必要に応じて内視鏡検査をご提案します |
| STEP 4 | 治療と経過観察 鉄補充と悪化因子の調整を行い、症状の変化を確認しながら方針を調整します。経口鉄剤が合わない場合は静注鉄剤、症状が残る場合は薬物治療と、当院で治療まで継続して対応します |
9. よくあるご質問
10. 理事長コメント
そして忘れてはならないのが、鉄が足りない「理由」です。当院には血液内科専門医・総合内科専門医が在籍し、土曜日も対応可能な内視鏡検査を備えていますので、原因の追究から治療まで一貫して行えます。鉄で改善しきらない場合の薬物治療も当院で対応でき、必要なときは同じ法人グループの脳神経内科専門医とも相談しながら進められます。
脚の違和感で眠れない日が続いている方、あるいは何年も睡眠薬を飲み続けているという方は、どうか一度ご相談ください。一本の採血が糸口になることがあります。
11. まとめ
✅ 診断の鍵は「動かすと楽になる」「夕方から夜に強くなる」の2点です
✅ 脳内でドパミンをつくるには鉄が必須で、鉄不足が症状の背景にあることが多くあります
✅ 貧血がなくても貯蔵鉄は不足しえます。フェリチンは健診には通常含まれていません
✅ 最新の指針では、フェリチン75 ng/mL以下を目安に鉄補充を検討します
✅ 鉄が足りない「原因」を調べることが不可欠で、とくに男性・閉経後女性では消化管出血の評価が必要です
✅ 市販の睡眠改善薬に含まれる抗ヒスタミン薬は、症状を悪化させることがあります
✅ 保険適用の治療薬は3剤あり、ドパミン系はオーグメンテーションに注意が必要です
✅ 当院には血液内科専門医・総合内科専門医が在籍し、採血評価から静注鉄剤、毎週土曜日を含む内視鏡検査、薬物治療まで一貫して対応できます
✅ 必要に応じて、同じ法人グループの脳神経内科専門医・指導医とも連携して方針を検討します
参考文献・出典
2. American Academy of Sleep Medicine. Clinical practice guideline for the treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder in adults(2025年改訂)
3. American Academy of Sleep Medicine. International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed.(ICSD-3)
4. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」2024年2月
5. 日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」
6. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「レグナイト®錠300mg」「ビ・シフロール®錠」「ニュープロパッチ®」各電子添文
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