便秘が続く・市販薬が効かないときは?慢性便秘症の治療と大腸内視鏡が必要な警告サイン【消化器病専門医が解説】
執筆: 五良会クリニック白金高輪|院長 玉井博修(日本内科学会 総合内科専門医・指導医/日本消化器病学会 専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医/日本肝臓学会 専門医・指導医)
共著: 医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
「もう何日も便が出ていない」「市販の下剤を飲み続けているのに、だんだん効かなくなってきた」――便秘のお悩みは、外来で非常によくご相談いただくテーマです。結論から申し上げると、週3回未満の排便や強いいきみ・残便感が慢性的に続く状態は「慢性便秘症」という治療対象の病気であり、我慢や市販薬の自己流連用でしのぐものではありません。また、便秘の陰に大腸がんや甲状腺疾患、薬の副作用などの「別の原因」が隠れていることがあり、特に血便・体重減少・貧血を伴う場合や50歳を過ぎてから始まった便秘では、大腸内視鏡検査による確認が重要です。
この記事では、日本消化管学会「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」に基づき、便秘を放置してはいけない理由、市販薬との正しい付き合い方、医療機関で使える新しい治療薬、そして大腸内視鏡検査を受けるべき警告サインを、白金高輪駅徒歩1分の当院での診療実感も交えて解説します。
1. 「たかが便秘」と放置してはいけない理由
便秘は非常にありふれた症状です。厚生労働省の国民生活基礎調査(平成28年)では、便秘の有訴者率は男性約2.5%・女性約4.6%と報告されており、若年〜中年層では女性に多く、60歳以降は男女とも加齢に伴って急増し、80歳以上では男女差がほぼなくなります。働き盛りの方から高齢の方まで、誰にとっても身近な症状です。
一方で、便秘は「体質だから」「恥ずかしいから」と受診されないまま長年放置されやすい症状でもあります。しかし近年の研究では、慢性便秘症はQOL(生活の質)や労働生産性の低下と関連するだけでなく、排便時の強いいきみが血圧の急上昇を招くことなどが知られており、「便通異常症診療ガイドライン2023」でも慢性便秘症は適切な診断と治療が必要な疾患として位置づけられています。
最も重要なこと:便秘は「結果」であって「診断名」ではないことがある
大腸がんによる狭窄、甲状腺機能低下症、糖尿病による腸の動きの低下、服用中の薬の副作用など、便秘の背後に治療すべき原因疾患が隠れている場合があります。特に「今までなかった便秘が中高年になって新しく始まった」場合は、原因の確認が先決です。
2. 慢性便秘症とは?診断基準と便の状態のチェック法
「便通異常症診療ガイドライン2023」(日本消化管学会編、日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本大腸肛門病学会協力)では、便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義しています。ポイントは「毎日出るかどうか」ではなく、「十分に・快適に」出せているかどうかです。
慢性便秘症の診断基準(以下のうち2項目以上・6か月以上前から症状があり直近3か月間持続)
| 項目 | 内容(排便の4回に1回超の頻度で起こる) |
|---|---|
| 排便回数の減少 | 自発的な排便が週3回未満 |
| 硬い便 | 兎糞状(ころころした便)または硬い便 |
| 強いいきみ | 排便時に強くいきむ必要がある |
| 残便感 | 出し切れていない感じが残る |
| 閉塞感・困難感 | 肛門や直腸で便がつかえる感じがする |
| 用手的介助 | 摘便など、手の助けが必要になる |
便の硬さの目安「ブリストル便形状スケール」
便の状態は1(硬いころころ便)〜7(水様便)の7段階で評価します。理想はタイプ3〜5(表面がなめらかなバナナ状〜やわらかい半固形)です。タイプ1〜2が続く方は、便秘治療の対象になる可能性があります。診察の際に「便の形・硬さ」をお伝えいただくと、診断と薬の調整が格段にスムーズになります。
3. 便秘の原因と種類|薬や病気が隠れていることも
慢性便秘症は、大きく「一次性(機能性)」と「二次性(別の原因による)」に分けられます。治療方針がまったく異なるため、この見極めが診察の最初のステップです。
| 分類 | 主な原因・特徴 |
|---|---|
| 一次性(機能性)便秘 | 大腸の動きの低下(排便回数減少型)、直腸・肛門でうまく出せない(排便困難型)など。食物繊維不足・運動不足・排便の我慢癖も関与 |
| 二次性:病気によるもの | 大腸がん・腸の狭窄、甲状腺機能低下症、糖尿病(自律神経障害)、パーキンソン病、うつ状態 など |
| 二次性:薬剤性便秘 | オピオイド(医療用麻薬)、一部の抗うつ薬・抗コリン薬、咳止め(コデイン類)、一部の血圧の薬(カルシウム拮抗薬)、鉄剤 など |
⚠️ 糖尿病の方の便秘は「血糖コントロールのサイン」のことも
長年の高血糖は腸を動かす自律神経を傷つけ、頑固な便秘の原因になります。糖尿病治療中で便秘が悪化してきた方は、血糖管理の見直しも含めてご相談ください。当院は消化器内科と糖尿病内科の両方を院内で連携できる体制です。
4. 大腸内視鏡検査を受けるべき「警告サイン」
便秘の診療で最も重要なのは、「危険な便秘」を見逃さないことです。以下の警告サイン(アラームサイン)がある方は、下剤で様子を見る前に、大腸がんなどの器質的疾患を除外するための大腸内視鏡検査(大腸カメラ)をおすすめします。
🚨 ひとつでも当てはまれば大腸内視鏡検査を検討してください
☑ 血便が出た・便に血が混じる/便潜血検査で陽性になった
☑ 意図しない体重減少(半年で数kg以上)
☑ 貧血を指摘された
☑ 50歳以上で新たに始まった便秘、または便秘と下痢を繰り返すようになった
☑ 便が急に細くなった/腹痛・腹部のしこりを伴う
☑ ご家族に大腸がんの方がいる
大腸がんは日本人のがんの中でも罹患数が最も多いがんの一つですが、早期に発見できれば内視鏡治療で完結できる場合も多い病気です。「便秘がきっかけで検査を受けたら早期のポリープ・がんが見つかった」というケースは、実際の診療で決して珍しくありません。
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5. 市販の下剤との正しい付き合い方
ドラッグストアで買える下剤の多くは、センナ・センノシド・ビサコジルなどの「刺激性下剤」です。腸を直接刺激して動かすため効き目を実感しやすい一方、毎日の連用で効きにくくなり(耐性)、量が増えていくことが問題になります。ガイドラインでも刺激性下剤は「必要最小限を頓用(出ないときだけ使う)」が原則とされています。
| 市販薬のタイプ | 位置づけ | 注意点 |
|---|---|---|
| 酸化マグネシウム(浸透圧性) | 便に水分を集めてやわらかくする。連日使用の基本薬 | 腎機能が低下した方・高齢の方は高マグネシウム血症に注意。長期使用では血中マグネシウム値の定期確認が推奨されます |
| センナ・センノシド等(刺激性) | 出ないときだけの頓用・レスキュー | 毎日の連用で効きにくくなる。腹痛を起こしやすい |
| 浣腸・坐薬 | 直腸に便が溜まって出せないときの一時手段 | 常用はせず、繰り返し必要なら受診を |
「刺激性下剤を毎日・何年も」は要注意です
「市販の下剤を毎日飲まないと出ない」「昔より錠数が増えた」という方は、薬をやめられなくなる悪循環に入りかけています。叱られることはありませんので、そのままの状態でぜひ一度ご相談ください。薬の種類を整理し、連用に適した薬へ計画的に切り替えていくことが可能です。
6. 医療機関での便秘治療|新しい治療薬の選択肢
便秘の治療薬はこの約10年で大きく進歩しました。2012年以降、作用の仕組みが異なる新しい薬が相次いで登場し、「刺激性下剤に頼らない、連日使える薬」の選択肢が大きく広がっています。ガイドラインでは、まず酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤を基本とし、効果不十分な場合に以下の薬剤を病態に応じて使い分けることが推奨されています。
| 薬剤(一般名) | はたらき | 特徴・向いている方 |
|---|---|---|
| ポリエチレングリコール製剤(マクロゴール配合) | 水分を保持して便をやわらかくする浸透圧性下剤 | 水に溶かして飲むタイプ。用量調整がしやすく、小児(2歳以上)から高齢者まで使いやすい |
| ルビプロストン | 小腸からの水分分泌を増やす(上皮機能変容薬) | 硬い便が続く慢性便秘症に。若い女性では吐き気が出ることがある |
| リナクロチド | 水分分泌を増やし、腹痛・腹部不快感もやわらげる | 便秘型過敏性腸症候群(お腹の痛みを伴う便秘)にも適応 |
| エロビキシバット | 胆汁酸の再吸収を抑え、大腸の動きと水分分泌を促す | 大腸の動き自体が落ちているタイプの便秘に。食前内服 |
| ラクツロース製剤 | 糖類による浸透圧性下剤 | ゼリータイプもあり、高齢の方や腎機能が気になる方の選択肢 |
どの薬が合うかは、便秘のタイプ・年齢・腎機能・併用薬・ライフスタイルによって異なります。「効き目がマイルドで物足りない」「お腹が痛くなる」といった場合も、薬剤の変更や組み合わせで多くは解決できます。自己判断で中断せず、外来で一緒に調整していきましょう。
7. 今日からできる生活習慣の工夫
薬とあわせて、生活習慣の見直しは便秘治療の土台です。次の4点から始めてみてください。
2. 朝食を抜かない――朝の食事は大腸を動かす最大のスイッチ(胃結腸反射)です。朝食後にトイレに座る習慣をつけましょう。
3. 便意を我慢しない――我慢を繰り返すと直腸の感覚が鈍り、便秘が固定化します。
4. 排便時は前傾姿勢+足台――足元に15〜20cmの台を置き、前かがみ(考える人のポーズ)をとると直腸と肛門の角度が開き、いきまずに出しやすくなります。
8. 白金高輪・港区で便秘のご相談|当院の大腸内視鏡検査
五良会クリニック白金高輪は、東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪駅」2番出口から徒歩1分。港区・白金・高輪・三田・麻布エリアはもちろん、南北線・三田線沿線からも通院しやすい立地です。
便秘の診療では、問診と診察で便秘のタイプと警告サインの有無を確認し、必要に応じて血液検査(甲状腺・腎機能・貧血など)や大腸内視鏡検査をご案内します。
当院の大腸内視鏡検査の特徴
✅ 日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医が検査を担当
✅ 土曜・日曜・祝日も内視鏡検査に対応――平日はお仕事で忙しい方も受けやすい体制です
✅ 鎮静剤を用いた、苦痛に配慮した検査が可能
✅ ポリープが見つかった場合、日帰り切除に対応(大きさ・形状による)
✅ 胃カメラとの同日実施のご相談も可能
9. よくあるご質問(FAQ)
10. 院長・理事長コメント
11. まとめ
✅ 血便・貧血・体重減少・50歳以降に始まった便秘は警告サイン。下剤の前に大腸内視鏡検査で原因の確認を
✅ 市販の刺激性下剤の毎日連用は悪循環のもと。「出ないときだけ」が原則
✅ 治療薬はこの10年で大きく進歩し、連日使える薬の選択肢が豊富。タイプに合わせた使い分けが可能
✅ 当院は白金高輪駅徒歩1分・土日祝も診療。消化器病専門医による便秘外来と大腸内視鏡検査で対応します
【参考文献・出典】
・日本消化管学会編「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」南江堂、2023年7月13日発刊(日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本大腸肛門病学会協力)
・厚生労働省「国民生活基礎調査」(便秘の有訴者率)
・厚生労働省・PMDA「酸化マグネシウム製剤の適正使用(高マグネシウム血症)に関する注意喚起」
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