大腸憩室があると言われたら|大腸カメラで指摘される「憩室症」の意味と、憩室出血・憩室炎の警告サイン【ガイドライン2026対応・白金高輪の消化器内科】
執筆:五良会クリニック白金高輪|院長 玉井博修(日本内科学会 総合内科専門医・指導医/日本消化器病学会 専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医/日本肝臓学会 専門医・指導医)
共著:医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)やCT検査のあとに、「大腸に憩室(けいしつ)がありますね」と言われて、不安になった経験はありませんか。港区・白金高輪でも、健診や人間ドックをきっかけに受けた検査で憩室を指摘され、「がんの前段階ですか」「手術が必要ですか」とご相談にみえる方が少なくありません。
結論からお伝えすると、大腸憩室そのものは病気ではなく、大腸がんになるものでもありません。日本人の大腸カメラ受診者のおよそ5人に1人にみられる、ごくありふれた所見です。ただし、ごく一部の方に憩室出血や憩室炎という合併症が起こり、これは放置してはいけないサインです。この記事では、日本消化管学会の最新ガイドライン(2026年改訂第2版)をふまえて、「憩室があると言われたら何に気をつければよいか」を消化器内視鏡専門医の立場から整理します。
📌 この記事の結論
大腸憩室が「ある」だけなら治療も食事制限も原則不要で、経過観察でかまいません。注意すべきは合併症です。痛みのない突然の血便は憩室出血、腹痛+発熱は憩室炎を疑うサインで、いずれも早めの受診が必要です。特に抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)や痛み止め(NSAIDs)を飲んでいる方は出血リスクが高く、注意が必要です。
1. 大腸憩室とは?なぜできるのか
大腸憩室とは、大腸の壁の一部が外側に袋状(ポケット状)に飛び出したものです。大きさは数ミリ〜1センチほどで、腸の壁のうち血管が貫いている「弱い部分」が、腸の内圧に押されて外へ膨らむことで生じます(仮性憩室と呼ばれ、日本人の大腸憩室の大半はこのタイプです)。
憩室が多発している状態を大腸憩室症といいます。ここで大切なのは、憩室は「できもの」でも「腫瘍」でもないという点です。大腸ポリープや大腸がんとはまったく別のもので、憩室が将来がんに変化することはありません。
憩室ができやすくなる要因
| 要因 | 解説 |
|---|---|
| 加齢 | 最大の要因です。年齢とともに腸壁の弾力が落ち、憩室が増えていきます。 |
| 食物繊維の不足 | 便が硬くなり、排便時に腸の内圧が上がることが憩室形成に関与すると考えられています。 |
| 便秘・いきみ | 慢性的に腸管内圧が高い状態が続くと、憩室ができやすくなります。 |
| 肥満・運動不足 | 憩室炎・憩室出血の発症リスクを高める要因として報告されています。 |
| 食生活の欧米化 | 近年、日本でも憩室保有率が上昇しており、食習慣の変化が背景にあると考えられています。 |
2. どのくらいの人にある?日本人の憩室の特徴
「自分だけ特殊なのでは」と心配される方が多いのですが、大腸憩室は非常にありふれた所見です。日本で行われた大腸内視鏡検査28,192例の検討では、21.2%、つまりおよそ5人に1人に大腸憩室が認められたと報告されています。
● 60歳以上:およそ30〜40%
● 80歳以上:およそ42〜60%
年齢を重ねるほど保有率が上がる、加齢に伴う変化といえます。
日本人は「右側」に多いのが特徴
欧米では左側(S状結腸)の憩室が主体ですが、日本人では右側(盲腸・上行結腸)に多いという特徴があります。そして年齢が上がるにつれて左側の憩室の割合が増える傾向が知られています。
この違いは症状の出方にも影響します。欧米の教科書では「憩室炎=左下腹部痛」と書かれていますが、日本では右下腹部の痛みで発症する憩室炎も多く、虫垂炎(盲腸)と紛らわしいことがあります。診断にCT検査が重要になる理由のひとつです。
3. 「憩室がある」と言われただけなら、治療は必要ありません
実際に、憩室をもつ方の大多数は生涯なんの症状も起こさずに過ごします。合併症を起こすのは一部の方に限られます。ですから、「憩室がある」と言われたときにやるべきことは、過度に心配することではなく、合併症のサインを知っておくことです。次章から、その2つの合併症を具体的にみていきます。
4. 合併症1:大腸憩室出血(痛くない血便)
大腸憩室出血は、憩室の底を走る血管が破れて出血する状態です。もっとも特徴的なのは、腹痛をほとんど伴わないことです。
🚨 憩室出血の典型的な症状
前ぶれなく突然、鮮血〜暗赤色の血液が便に混じる/血液そのものが出る。お腹は痛くない。トイレで大量の血を見て驚いて受診されるケースが典型的です。「痛くないから痔だろう」と自己判断するのは危険です。
出血しやすい人の特徴
| リスク因子 | ポイント |
|---|---|
| NSAIDs(消炎鎮痛薬) ロキソプロフェン、イブプロフェン等 |
市販の痛み止めも含みます。憩室出血・再出血のリスクを高めることが知られています。常用している方は要注意です。 |
| 抗血栓薬 抗血小板薬(アスピリン等)・抗凝固薬 |
出血リスク・再出血リスクを高めます。ただし自己判断での中止は脳梗塞・心筋梗塞の危険があり厳禁です。必ず主治医と相談してください。 |
| 高齢・高血圧・肥満 | いずれも憩室出血の発症に関連する因子として報告されています。 |
多くは自然に止まる。ただし「再出血」が課題
憩室出血は、絶食・点滴など保存的な対応で70〜90%が自然に止血するとされています。一方で問題になるのが再出血の多さで、1年以内におよそ20〜35%、2年以内におよそ33〜42%が再出血すると報告されています。とくに抗血栓薬を内服中の方では再出血率が高くなります。
出血源が特定できた場合には、大腸内視鏡でクリップによる止血や内視鏡的バンド結紮術(EBL)などの止血処置が行われます。出血量が多い場合や貧血が進んでいる場合は、入院管理・輸血が必要になるため、当院では速やかに連携医療機関へご紹介します。
⚠️ 血便を「憩室出血」と決めつけないことも大切です
憩室があるからといって、血便の原因が必ず憩室とは限りません。大腸がん・大腸ポリープ・虚血性大腸炎・炎症性腸疾患・痔など、他の原因が隠れていることがあります。だからこそ、血便が出たときは自己判断せず、大腸カメラで原因をきちんと確認することが重要です。
5. 合併症2:大腸憩室炎(腹痛と発熱)
憩室炎は、憩室の中に便がたまるなどして細菌感染・炎症を起こした状態です。憩室出血とは対照的に、痛みが主役になります。
| 項目 | 憩室出血 | 憩室炎 |
|---|---|---|
| 主な症状 | 突然の血便(鮮血〜暗赤色) | 持続する腹痛、発熱 |
| 腹痛 | ほとんどない | あり(日本では右下腹部も多い) |
| 血便 | 主症状 | 通常はみられない |
| 主な検査 | 大腸内視鏡検査 | 腹部CT検査・血液検査 |
| 急性期の大腸カメラ | 出血源検索のため行う | 穿孔リスクのため原則行わない |
診断の中心は腹部CT
憩室炎の診断には腹部CT検査が中心的な役割を果たします。CTの診断能は感度94%・特異度99%と高く、憩室の存在に加えて、周囲の脂肪織濃度の上昇や腸管壁の肥厚といった炎症所見を確認できます。さらに、膿瘍・穿孔といった重い合併症の有無や、虫垂炎など他の腹痛の原因の見分けにも役立ちます。
🚨 憩室炎の重い合併症(複雑性憩室炎)
膿瘍(膿のかたまり)、穿孔(腸に穴があく)、腹膜炎、瘻孔(腸と膀胱などがつながる)、腸管狭窄(腸が細くなる)。これらは入院治療や外科手術、ドレナージ処置が必要になることがあります。強い腹痛・高熱・お腹全体の痛みがあるときは、様子をみずに医療機関を受診してください。
治療の基本
| STEP 1 | 診断と重症度の評価 問診・診察・血液検査(白血球・CRP)・腹部CTで、単純性か複雑性かを判断します。 |
| STEP 2 | 腸管安静と薬物治療 合併症のない軽症例では、食事制限(絶食〜低残渣食)と補液を中心に、必要に応じて抗菌薬を用います。外来で治療できることも多くあります。 |
| STEP 3 | 入院・外科的対応の判断 膿瘍・穿孔・腹膜炎、経口摂取が困難、高熱が続くなどの場合は入院が必要です。当院では速やかに連携医療機関へご紹介します。 |
| STEP 4 | 炎症が落ち着いてから大腸カメラ 症状が改善して数週間後に、背景に大腸がんなどが隠れていないかを確認するために大腸内視鏡検査を行うのが一般的です。 |
6. すぐ受診すべき「警告サイン」チェックリスト
■ 腹痛が半日以上続き、発熱を伴う
■ 同じ場所の腹痛が繰り返し起こる
■ 抗血栓薬・痛み止めを飲んでいて便に血が混じった
■ 血便のあとにふらつき・立ちくらみ・動悸がある(貧血・出血量が多いサイン)
7. 憩室と上手につきあう食事・生活習慣
「憩室があるから、あれもこれも食べてはいけない」と思い込んでおられる方が多いのですが、実際にはそこまで厳しい制限は必要ありません。ポイントを整理します。
日常で意識したいこと
| 項目 | 具体策 |
|---|---|
| 食物繊維をしっかりとる | 野菜・果物・海藻・きのこ・豆類・全粒穀物。便をやわらかく保ち、腸管内圧の上昇を防ぎます(※急性期・炎症中は逆に低残渣食が必要です)。 |
| 便秘を放置しない | 強くいきむ習慣は腸管内圧を上げます。水分摂取・適度な運動・必要に応じた便秘治療で整えましょう。 |
| 体重管理・運動 | 肥満は憩室炎・憩室出血のリスク因子です。ウォーキングなどの有酸素運動が推奨されます。 |
| 痛み止めの使い方を見直す | NSAIDsの常用は出血リスクになります。頻繁に使っている方は、代替薬を含めて医師にご相談ください。 |
| 禁煙・節酒 | 喫煙は憩室炎の合併症リスクを高めると報告されています。大腸がん予防の観点からも重要です。 |
8. 憩室があるときの大腸カメラの受け方
「憩室があると大腸カメラは危ないのでは」と心配される方がいますが、炎症を起こしていない時期の大腸内視鏡検査は、通常どおり安全に受けていただけます。むしろ憩室のある方こそ、血便やお腹の症状が出たときに「本当に憩室が原因なのか」を確かめるうえで大腸カメラが重要になります。
一方で、憩室炎の急性期(痛みや発熱がある最中)の大腸内視鏡は、穿孔のおそれがあるため原則として行いません。この時期はCTで診断し、炎症が落ち着いてから改めて大腸カメラで大腸がんなどの有無を確認する、という流れが標準的です。
なお、憩室が多い方や腸が長い方では、内視鏡の挿入に技術を要する場合があります。当院では日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医が検査を担当し、鎮静剤を用いた苦痛の少ない内視鏡を土曜・日曜・祝日も含めて実施しています。
💡 便潜血陽性・血便で見つかる憩室に要注意
健診の便潜血検査が陽性で大腸カメラを受け、憩室が見つかることはよくあります。しかし「憩室があったから便潜血陽性の説明がついた」と考えるのは危険です。憩室と大腸ポリープ・大腸がんは併存しうるため、大腸全体をていねいに観察することが欠かせません。
9. 院長・理事長コメント
10. よくあるご質問(FAQ)
11. まとめ
✅ 憩室そのものは腫瘍ではなく、がんになることはありません。無症状なら治療も食事制限も原則不要です
✅ 注意すべきは合併症。痛みのない血便=憩室出血、腹痛+発熱=憩室炎を疑います
✅ 憩室出血の70〜90%は自然に止まりますが、1年以内に20〜35%が再出血します。NSAIDs・抗血栓薬内服中の方は特に注意を
✅ 血便を「痔」「憩室のせい」と自己判断せず、大腸カメラで大腸がんなどを除外することが大切です
✅ ナッツ・種子を避ける必要はありません。食物繊維・便秘対策・体重管理が現実的な予防策です
✅ 白金高輪駅徒歩1分、土日祝も内視鏡対応。気になる症状はお早めにご相談ください
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医が、鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査を行っております。
✅ 健診の便潜血検査が陽性だった方
✅ 繰り返す腹痛・便通異常が気になる方
✅ 40歳以上でまだ大腸カメラを受けたことがない方
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