ABC検診(胃がんリスク層別化検査)でC判定・D判定と言われたら|ペプシノゲン法・ピロリ抗体の見方と胃カメラの目安【白金高輪の消化器内視鏡専門医が解説】
- 2026年9月14日
- 健康診断・人間ドック,消化器内科,胃カメラ,お知らせ
執筆:五良会クリニック白金高輪|院長 玉井博修(日本内科学会 総合内科専門医・指導医/日本消化器病学会 専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医/日本肝臓学会 専門医・指導医)
共著:医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
人間ドックや健康診断のオプションで「胃がんリスク検診(ABC検診)」を受け、「C判定」「D判定」と書かれた結果表を見て不安になっている方も多いと思います。ABC検診は、血液検査だけで胃がんそのものを見つける検査ではなく、胃の粘膜がどれくらい「ピロリ菌に荒らされてきたか」を推定するリスク分類です。判定の意味を正しく理解しないまま放置すると、本当に内視鏡検査が必要な方を見逃してしまう危険があります。
この記事では、白金高輪駅徒歩1分・港区の五良会クリニック白金高輪の消化器内視鏡専門医が、ABC検診の仕組み、A〜D判定それぞれのリスクの違い、判定基準となる数値、そして「除菌治療を受けたことがある方はABC分類だけでは正しく判定できない」という重要な注意点まで、わかりやすく解説します。
1. ABC検診とは―ペプシノゲン法とピロリ抗体を組み合わせる理由
「胃がんリスク層別化検査(ABC検診)」は、以下の2種類の血液検査を組み合わせて、胃がんになりやすい状態かどうかを4段階(A・B・C・D)で分類する検査です。
| 検査 | わかること |
|---|---|
| ヘリコバクター・ピロリ抗体検査 | 胃がんの最大の原因であるピロリ菌に感染したことがあるか(現在または過去の感染歴)を血液中の抗体で調べます。 |
| 血清ペプシノゲン(PG)検査 | ペプシノゲンは胃粘膜から分泌される消化酵素のもとになる物質です。胃粘膜の萎縮(老化・炎症で薄くなった状態)が進むほど数値が低下するため、胃粘膜の状態を推定できます。 |
ピロリ菌感染は胃粘膜の慢性炎症(萎縮性胃炎)を引き起こし、この萎縮性胃炎が長期間続くことで胃がんが発生しやすくなることがわかっています。ABC検診は、「感染歴の有無」×「萎縮の進み具合」という2つの軸を組み合わせることで、胃がんリスクをA〜Dの4群に振り分ける仕組みです。
2. A・B・C・D 4つの判定区分と胃がんリスクの違い
| 判定 | ピロリ抗体 | ペプシノゲン法 | 胃粘膜の状態と胃がんリスク |
|---|---|---|---|
| A群 | 陰性(−) | 陰性(−) | 未感染で萎縮なし。胃がんリスクは低いとされる群です。 |
| B群 | 陽性(+) | 陰性(−) | 現在感染しているが、萎縮はまだ軽度〜中等度。A群よりリスクが上がります。 |
| C群 | 陽性(+) | 陽性(+) | 感染歴があり、萎縮も進行。B群よりさらにリスクが高い群です。 |
| D群 | 陰性(−) | 陽性(+) | 萎縮が高度に進行し、ピロリ菌がすみかを失って抗体価が下がった状態であることが多く、4群の中で最も胃がんリスクが高いとされます(詳しくは⑤で解説)。 |
⚠️ 注意
ABC検診は胃がんの有無を診断する検査ではありません。あくまで「将来胃がんが発生しやすい粘膜かどうか」を推定するリスク分類であり、実際に胃がんがあるかどうかを確認できるのは胃内視鏡検査(胃カメラ)のみです。
3. 判定に使われる数値の基準(カットオフ値)
一般的に用いられているペプシノゲン法の陽性基準(カットオフ値)は、次のとおりです。
ペプシノゲン法「陽性」の目安
血清ペプシノゲンⅠ値 ≦ 70 ng/mL かつ ペプシノゲンⅠ/Ⅱ比 ≦ 3.0
この両方を満たした場合に「ペプシノゲン法陽性(胃粘膜の萎縮あり)」と判定されます。
※カットオフ値は測定キットや検診実施機関によって若干異なる場合があります。
ピロリ抗体検査の陽性・陰性の判定も、使用する測定キットごとに設定されたカットオフ値によります。健診結果票に記載された数値だけで自己判断せず、総合的な判定(A〜D)を確認したうえで、必要な場合は消化器内科を受診することが大切です。
4. 【要注意】ピロリ除菌歴がある方は正しく判定できないことがある
過去にピロリ菌の除菌治療を受けたことがある方へ
ABC検診(ピロリ抗体検査)は、除菌治療歴がある方には正しく適用できません。除菌に成功すると抗体価は徐々に低下していきますが、除菌から2年経過しても抗体が陰性化する方は約半数程度にとどまり、除菌後長期間が経過しても抗体価が十分に下がらず陽性域にとどまる例も少なくありません。そのため、除菌歴のある方が今回あらためてABC検診を受けても、過去の感染歴を正確に反映した判定にはならないのです(日本ヘリコバクター学会「血清抗体法を用いたヘリコバクター・ピロリ感染診断に関する注意喚起」2021年5月)。
除菌治療を受けたことがある方は、ピロリ菌に感染していた事実そのものが胃がんのリスク因子として残るため、ABC分類の判定結果にかかわらず、定期的な胃内視鏡検査による経過観察が推奨されます。「除菌したから安心」ではなく、「除菌したからこそ、これまでの萎縮の程度を内視鏡で確認し続ける」という考え方が重要です。
5. なぜ「D群」がもっとも注意すべき判定なのか
D群は「ピロリ抗体陰性・ペプシノゲン法陽性」という組み合わせです。一見すると「ピロリ菌に感染していないのに、胃粘膜の萎縮だけがある」矛盾した結果に見えますが、これは胃粘膜の萎縮があまりに高度に進行した結果、ピロリ菌がすみかとする胃粘膜自体が失われ、菌が生息できなくなって自然に消失し、それに伴って抗体価も低下した状態であることが多いためです。
D群は「感染していないから安全」ではない
D群は、A〜D群の中で最も進行した萎縮性胃炎を示している可能性がある群です。「ピロリ抗体陰性」という文字だけを見て安心してしまうと、本来もっとも早く内視鏡検査を受けるべき方を見逃すことになりかねません。健診結果でD判定を受けた方は、自覚症状がなくても速やかに消化器内科を受診してください。
6. 判定別・次にすべきこと(内視鏡検査の目安)
| 判定 | 次にすべきこと(目安) |
|---|---|
| A群 | 原則として内視鏡検査は必須ではありませんが、症状がある場合や不安が強い場合はご相談ください。 |
| B群 | 数年に1回程度の胃内視鏡検査を検討します。ピロリ菌感染が確認されれば、除菌治療の適応となります。 |
| C群 | 1〜2年に1回程度の胃内視鏡検査が推奨されます。除菌治療がまだであれば早めの実施を検討します。 |
| D群 | 年1回程度の胃内視鏡検査が強く推奨されます。自覚症状がなくても早めの受診をおすすめします。 |
📅 内視鏡検査は土日祝も毎週実施しています
当院では鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃内視鏡検査を土曜・日曜・祝日も毎週行っています。健診結果票をお持ちいただければ、判定内容を踏まえてそのままご相談いただけます。
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7. 市区町村の「対策型検診」との違い
ABC検診と混同されやすいのが、市区町村が実施する「対策型胃がん検診」です。両者は目的も対象もまったく異なります。
| 項目 | ABC検診(胃がんリスク層別化検査) | 対策型胃がん検診(住民検診) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 人間ドック等の任意型検診のオプション | 市区町村が実施する対策型(住民)検診 |
| 目的 | 将来の胃がんリスクを推定する | 胃がんそのものを見つけ、死亡率を減らす |
| 対象・頻度 | 医療機関ごとに設定(人間ドック時など) | 50歳以上、2年に1回(胃部X線検査は当分の間40歳台も対象とする自治体あり) |
| 検査方法 | 血液検査(ピロリ抗体+ペプシノゲン) | 胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査 |
対策型胃がん検診は、日本消化器がん検診学会「対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル2024改訂第2版」「胃がん検診のための胃X線検査マニュアル2025改訂第3版」および厚生労働省「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」に基づいて運用されています。ABC検診で異常を指摘された方はもちろん、対策型検診の対象年齢に達していない方でも、気になる症状がある場合は年齢にかかわらず胃内視鏡検査を検討することをおすすめします。
8. 院長・理事長コメント
9. よくある質問(FAQ)
10. まとめ
✅ A→B→C→Dの順にリスクは高くなり、C・D判定は胃内視鏡検査による確認が推奨される
✅ D群は「ピロリ抗体陰性」でも安心できず、高度な萎縮を反映している可能性がある最もハイリスクな判定
✅ ピロリ除菌治療の経験がある方は、抗体価がすぐに下がらないためABC分類が正しく機能せず、内視鏡による経過観察が優先される
✅ 対策型検診(住民検診)とは目的も検査方法も異なり、判定結果にかかわらず症状があれば胃内視鏡検査を検討すべき
鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査を行っております。
✅ ピロリ菌除菌治療の経験がある方
✅ 胃部不快感・体重減少・黒色便が続く方
✅ バリウム検査で要精密検査と言われた方
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