その夏の高熱、夏かぜではないかも——夏に増えるレジオネラ肺炎|温泉・入浴施設と長引く発熱を内科医が解説|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

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その夏の高熱、夏かぜではないかも——夏に増えるレジオネラ肺炎|温泉・入浴施設と長引く発熱を内科医が解説|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

その夏の高熱、夏かぜではないかも——夏に増えるレジオネラ肺炎|温泉・入浴施設と長引く発熱を内科医が解説

医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)

連日の猛暑が続くこの時期、「高熱と咳が数日続いている」「だるさと下痢もあって、夏バテや夏かぜだと思っていた」——そんな症状で受診される方が増えてきます。その多くは夏かぜや熱中症ですが、なかに放置すると急速に重症化する肺炎が隠れていることがあります。それがレジオネラ肺炎です。

レジオネラ肺炎は、温泉・入浴施設・24時間風呂・加湿器などの水まわりで増えた細菌を、細かい水しぶき(エアロゾル)として吸い込むことで起こる肺炎です。国内では例年7月を中心に報告が増加し、季節変動がはっきりしています。適切な抗菌薬を選べば治る病気ですが、一般的な夏かぜ薬や市販薬では治らず、診断が遅れると呼吸不全に至ることもあります。この記事では、レジオネラ肺炎の見分け方・感染源・予防法を、内科・感染症の視点からわかりやすく解説します。

1. レジオネラ肺炎とはどんな病気か

レジオネラ肺炎は、レジオネラ属菌(主にLegionella pneumophila)という細菌が肺で炎症を起こす感染症です。この菌は土壌や河川など自然界の水に広く存在し、20〜50℃前後のぬるい水と、水あか・ぬめり(バイオフィルム)が大好きです。人工的な水まわりでアメーバに寄生する形で増殖し、細かい水しぶきになって空気中に舞い上がると、私たちの肺の奥まで届いてしまいます。

レジオネラ症には大きく2つの型があります。ひとつは肺炎を起こす「レジオネラ肺炎(在郷軍人病)」で、治療しなければ重症化する型です。もうひとつは、肺炎にならず高熱と筋肉痛が数日で自然に治まる「ポンティアック熱」という軽い型です。問題になるのは前者で、この記事で主に扱うのはこの肺炎型です。

💡 ここがポイント

レジオネラ肺炎は人から人へはうつりません。感染源は「人」ではなく「汚染された水のしぶき」です。ご家族に同じ症状の人がいなくても油断はできず、逆に「誰かにうつす心配」はほとんどありません。

2. なぜ夏(7月ごろ)に増えるのか

レジオネラ症は感染症法上の四類感染症で、診断した医師は保健所への届出が義務づけられているため、全国の発生動向が把握されています。国立感染症研究所の集計では、2023年の届出は年間2,290件にのぼり、例年7月を中心に報告が増えるという明確な季節変動がみられます。

夏に増える理由は単純で、気温が上がるとレジオネラ属菌が水まわりで一気に増えやすくなるからです。梅雨から盛夏にかけての高温多湿は、循環式浴槽・加湿器・冷却塔などの「ぬるい水がたまる場所」で菌が繁殖する絶好の条件になります。加えて、夏は温泉・スーパー銭湯・プールなど入浴施設を利用する機会が増えることも、報告数の増加につながっていると考えられます。

📊 発生動向のデータ
・2023年の届出件数:2,290件(全国)
・報告のピーク:7月を中心とした夏
・患者の中心:50歳以上、男性に多い
出典:国立感染症研究所・厚生労働省 感染症発生動向調査

3. 感染源はどこにひそむか

レジオネラ属菌が増えるのは、ぬるい水が滞留し、こまめに掃除・消毒されていない水まわりです。特にエアロゾル(細かい水しぶき)が発生する設備が要注意です。本邦で報告されたレジオネラ肺炎の感染経路は、水系感染が約32.5%、土ぼこりなどの塵埃感染が約5.7%で、残りは経路不明とされています。

主な感染源になりやすい場所

場所・設備 なぜ危険か
循環式浴槽・温泉・スーパー銭湯 お湯を循環させる配管にぬめりがたまりやすい。消毒が不十分だと集団感染の原因に
家庭の24時間風呂・追い焚き配管 ぬるいお湯を長時間ためる構造。家庭内発生の代表的な原因
加湿器・超音波式ミスト タンクの水を替えずに使うと菌が増殖し、ミストで直接吸い込む
ビルの冷却塔(クーリングタワー) エアコンの排熱設備。飛散した水しぶきが周辺に広がる
シャワーヘッド・給湯設備 使っていなかった配管に水がたまると菌が増えやすい
園芸用の腐葉土・堆肥 土ぼこりを吸い込む塵埃感染。ガーデニング後の発症例もある

⚠️ 注意

「温泉に入っただけでうつるのでは」と過度に心配する必要はありません。適切に消毒・管理された入浴施設のリスクは高くありません。あくまで掃除・換水・消毒が行き届いていない水まわりが問題です。

4. 症状——夏かぜ・熱中症との見分け方

潜伏期間は2〜10日程度(最大で16日ほど)です。初期は発熱・だるさ・頭痛・食欲不振など非特異的な症状から始まるため、夏かぜや熱中症、夏バテと区別がつきにくいのが厄介な点です。しかしレジオネラ肺炎には、見分けるうえで参考になる特徴があります。

レジオネラ肺炎で目立ちやすい症状

✔️ 39℃以上の高熱が続く
✔️ 咳(痰のからむ湿った咳)、3分の1では血痰を伴う
✔️ 下痢・吐き気などの消化器症状を伴うことがある
✔️ 頭痛・意識のもうろう・見当識の乱れなど神経症状
✔️ 高熱のわりに脈がそれほど速くない(比較的徐脈)

こんなときは早めに受診を

温泉・入浴施設・加湿器の使用後などに、高熱と咳が続き、市販の風邪薬で改善しない息苦しさや呼吸の速さがあるぼんやりして受け答えがおかしい——こうした場合は、単なる夏かぜと自己判断せず医療機関を受診してください。適切な治療がないと1週間以内に急速に悪化し、呼吸不全や腎不全に至ることがあります。

5. 重症化しやすいのはこんな方

健康な若い方が感染しても軽く済むことがありますが、次のような方は重症化のリスクが高く、特に注意が必要です。

50歳以上の方・ご高齢の方
喫煙者・慢性の肺の病気がある方
糖尿病の方(感染への抵抗力が下がりやすい)
■ ステロイドや免疫抑制薬を使っている方
■ 慢性の腎臓病・肝臓病のある方
■ 男性(統計上、男性の発症が多い傾向)

💡 糖尿病の方へ

糖尿病があると肺炎全般が重症化しやすく、レジオネラ肺炎も例外ではありません。夏は血糖が乱れやすい季節でもあります。発熱時に食事や水分がとれない、血糖値が普段と大きく違うといったときは、早めにご相談ください。

6. 診断——尿中抗原検査という強い味方

レジオネラ肺炎の診断で最も重要なのは、「最近、温泉・入浴施設・加湿器などを使ったか」という問診です。そのうえで、次のような検査を組み合わせます。

尿中抗原検査 その日のうちに結果がわかる迅速検査。早期の診断・治療開始に非常に有用。ただし主に「血清群1」の検出が中心で、陰性でも完全には否定できない
胸部X線・CT 肺炎の広がりや重症度を確認。CTでより詳しく評価する
喀痰培養・遺伝子検査 専用培地での培養やLAMP法(遺伝子検査)で菌を確認する
血液検査 低ナトリウム血症・肝酵素上昇・炎症反応など、重症度の把握に役立つ所見をみる

7. 治療——抗菌薬選びが結果を分ける

治療の中心は抗菌薬です。ここで重要なのは、レジオネラ肺炎にはニューキノロン系(レボフロキサシンなど)やマクロライド系(アジスロマイシンなど)の抗菌薬が有効である一方、一般的な細菌性肺炎でよく使われるペニシリン系・セフェム系(βラクタム系)は効かないという点です。

この違いがあるため、「夏かぜだろう」と自己判断で市販薬や手元の抗菌薬を使うと、レジオネラ肺炎だった場合に治療が遅れ、重症化してしまう危険があります。入浴施設の利用歴などを問診で正しく伝え、適切な抗菌薬を選ぶことが、この病気では特に大切です。早期に適切な治療を始めれば、多くは回復が期待できます。

自己判断の抗菌薬使用は禁物

「以前もらった抗生物質が残っているから」と自己判断で飲むのは避けてください。菌の種類に合わない抗菌薬はレジオネラ肺炎に無効なうえ、耐性菌を生む原因にもなります。

8. 家庭でできる予防

レジオネラ属菌は「ぬるい水の滞留」と「ぬめり」で増えます。逆に言えば、水をためっぱなしにしない・こまめに掃除することが最大の予防になります。

✅ 家庭でできる対策
24時間風呂・追い焚き配管は定期的に洗浄・消毒する
加湿器のタンク水は毎日入れ替え、こまめに洗浄・乾燥させる
シャワーヘッドや蛇口を掃除し、水あか・ぬめりを残さない
・旅行や長期不在の後は、最初に数分間、熱めのお湯を流してから使う
・浴槽のお湯はこまめに換え、ぬめりを取る
・園芸で腐葉土・堆肥を扱うときはマスクを着け、土ぼこりを吸わない

💡 温泉・入浴施設を楽しむために

レジオネラ肺炎を恐れて温泉を避ける必要はありません。適切に管理された施設のリスクは高くありません。大切なのは、利用後に高熱や咳が出たときに「入浴施設に行った」ことを受診時に必ず伝えることです。

9. 理事長コメント

💬 理事長 五藤良将より
「夏の高熱と咳は、その多くが夏かぜですが、なかにレジオネラ肺炎のように早期の抗菌薬選びが結果を左右する病気が隠れています。診断の鍵は、実は特別な検査ではなく『最近どんな水まわりを使いましたか』という一言の問診です。温泉やサウナ、加湿器を使った後に高熱が続くときは、遠慮なくその情報をお伝えください。当院では尿中抗原検査による迅速な診断から胸部画像評価まで一貫して対応し、糖尿病など重症化リスクのある方の全身管理も得意としています。『たかが夏かぜ』で見逃さないことが、この病気ではいちばん大切です。」

10. まとめ

📝 この記事のポイント
✅ レジオネラ肺炎は、温泉・入浴施設・加湿器などの水しぶきを吸い込んで起こる肺炎で、人からはうつらない
✅ 国内では7月を中心に増え、2023年は年間2,290件の届出があった
✅ 高熱・咳・下痢・意識のもうろうが特徴で、夏かぜや熱中症と紛らわしい
✅ 50歳以上・喫煙者・糖尿病の方などは重症化しやすい
✅ ペニシリン系・セフェム系は効かず、ニューキノロン系・マクロライド系が有効。抗菌薬選びが重要
✅ 予防は「水をためっぱなしにしない・こまめに掃除する」。利用後に発熱したら入浴施設歴を必ず受診時に伝える
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