夏に増える「足がつる」(こむら返り)|脱水・電解質と隠れた病気のサイン、芍薬甘草湯の注意点
- 2026年7月30日
- 内科一般
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
「夜中に突然、ふくらはぎに激痛が走って目が覚めた」「明け方に足がつって、しばらく動けなかった」――いわゆる「足がつる」「こむら返り」のご相談は、実は夏に増えます。大量の汗による脱水と電解質(ミネラル)の喪失、エアコンによるふくらはぎの冷え、夏の疲労の蓄積など、夏特有の条件が重なるためです。
こむら返りの多くは一過性で心配のないものですが、頻繁に繰り返す場合には、糖尿病・肝臓や腎臓の病気・下肢静脈瘤・薬の副作用などが隠れていることがあります。この記事では、夏にこむら返りが増える理由、つったときの正しい対処法、繰り返す場合に考えるべき病気、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)の正しい使い方と注意点まで、白金高輪の内科・糖尿病内科の視点から解説します。
1. こむら返りとは――なぜ「ふくらはぎ」がつるのか
「こむら(腓)」とはふくらはぎのことです。こむら返りは、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)が自分の意思とは関係なく強く収縮し続け、激しい痛みを伴う状態を指します。医学的には「有痛性筋けいれん」と呼ばれ、ふくらはぎ以外にも足の裏・足の指・すね・太ももに起こることがあります。
筋肉には、伸びすぎ・縮みすぎを感知して調整するセンサー(筋紡錘と腱紡錘)が備わっています。脱水や電解質バランスの乱れ、筋肉の疲労、冷えによる血行不良などでこのセンサーの働きが乱れると、筋肉が過剰に収縮したままロックされてしまい、こむら返りが起こると考えられています。
加齢とともに筋肉量や柔軟性が低下するため、中高年になるほど頻度が増える傾向があり、就寝中・明け方に起こりやすいのが特徴です。妊娠中の方にも多くみられます。
2. なぜ夏に増えるのか――脱水・電解質・冷え
こむら返りは一年を通じて起こりますが、夏はとくに条件が重なりやすい季節です。
汗による脱水と電解質(ミネラル)の喪失
汗には水分だけでなく、ナトリウム・カリウム・マグネシウムなどの電解質が含まれています。大量に汗をかいたあとに水やお茶だけを補給していると、体液が薄まり、筋肉の収縮・弛緩を調整する電解質のバランスが崩れて、筋肉のセンサーが誤作動しやすくなります。就寝中は水分補給が長時間途絶えるうえ、ひと晩でコップ1杯以上の汗をかくため、明け方は1日のなかで最も脱水に傾きやすい時間帯です。
エアコン・冷房によるふくらはぎの冷え
冷房の風は低い位置にたまるため、デスクワークや就寝中に足元だけが冷えて血行が悪くなり、筋肉が緊張してつりやすくなります。「冷房をつけて寝た日の明け方に足がつる」という方は、この影響が大きいと考えられます。
夏の疲労・運動・アルコール
暑さによる睡眠の質の低下や夏バテで筋肉の疲労が抜けにくくなること、夏のレジャーやスポーツによる筋疲労、そしてビールなどのアルコール摂取(利尿作用による脱水)も、夏にこむら返りが増える要因です。
💡 夏のこむら返り 3大要因
① 汗による脱水・電解質不足 ② 冷房による足元の冷え・血行不良 ③ 夏の筋疲労とアルコール。いずれも就寝中〜明け方に条件が重なるため、「夜中に足がつって目が覚める」パターンが典型的です。
3. 足がつったときの正しい対処法
こむら返りが起きたときは、慌てて揉むのではなく、「収縮している筋肉をゆっくり伸ばす」ことが基本です。
| STEP 1 | 膝を伸ばし、つま先を手前に引く 座った姿勢で膝をまっすぐ伸ばし、つま先を両手(届かなければタオルをかけて)でゆっくり手前に引き、ふくらはぎを伸ばします。反動をつけず、10〜30秒かけて伸ばすのがコツです。 |
| STEP 2 | 痛みが落ち着いたら軽くマッサージ・保温 強い収縮がゆるんだら、ふくらはぎを軽くさすり、蒸しタオルなどで温めて血行を回復させます。急に強く揉むと筋肉を傷めることがあるため避けてください。 |
| STEP 3 | 水分と電解質を補給する 汗をかいていた場合は、水だけでなく経口補水液や電解質を含む飲料を補給します。就寝中に起きた場合も、コップ1杯の水分補給をおすすめします。 |
⚠️ 注意:痛みが続くとき
こむら返りのあとに数日たっても痛み・腫れが引かない場合は、肉離れ(筋損傷)や、まれに深部静脈血栓症など別の病気の可能性があります。我慢せず医療機関にご相談ください。
4. 繰り返すこむら返りに隠れている病気
たまに起こるこむら返りは生理的なもので心配いりませんが、「週に何度も」「毎晩のように」「日中もつる」という場合は、背景に病気や薬の影響が隠れていないかの確認が大切です。代表的なものを挙げます。
| 隠れている可能性のある病気・要因 | こむら返りとの関係・手がかり |
|---|---|
| 糖尿病 | 血糖コントロール不良や糖尿病神経障害があると足がつりやすくなります。のどの渇き・多飲多尿・体重減少・足のしびれを伴う場合は要注意です。 |
| 肝臓の病気(肝硬変など) | 肝硬変では電解質バランスやアミノ酸代謝の乱れから夜間のこむら返りが高頻度にみられます。健診での肝機能異常を放置している方は確認が必要です。 |
| 腎臓の病気・透析 | 慢性腎臓病では電解質(カリウム・カルシウム・マグネシウム)の調節が乱れ、筋けいれんが起こりやすくなります。 |
| 甲状腺機能低下症 | 代謝の低下により筋肉の症状(つり・こわばり・だるさ)が出ることがあります。むくみ・寒がり・体重増加を伴う場合は血液検査で確認できます。 |
| 下肢静脈瘤・閉塞性動脈硬化症 | 足の血流のうっ滞や低下により、夜間のこむら返りや歩行時の足の痛みが起こります。足の血管の浮き・むくみ・歩くとふくらはぎが痛む場合は血管の評価が必要です。 |
| 腰部脊柱管狭窄症など整形外科疾患 | 神経の圧迫により足のつり・しびれが起こることがあります。腰痛や間欠性跛行(歩くと足がしびれ、休むと回復)を伴うのが手がかりです。 |
| 薬の副作用 | 利尿薬(脱水・低カリウム)、一部の下剤の常用、甘草を含む漢方薬の連用などは、電解質異常を介してこむら返りを起こす・悪化させることがあります。お薬手帳を持って内科でご相談ください。 |
🚨 とくに夏は「脱水の上乗せ」に注意
利尿薬を服用中の方や糖尿病の方は、夏の脱水が重なると電解質異常や腎機能障害に進むことがあります。こむら返りの頻発は、その早期サインのことがあります。
5. 芍薬甘草湯の正しい使い方と注意点
こむら返りに対しては、漢方薬の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)がよく用いられます。筋肉の異常な収縮をゆるめる作用があり、服用後比較的速やかに効果が現れることから、「つったときの頓服(とんぷく)」や「毎晩つる時期の就寝前服用」として処方されます。
ただし、芍薬甘草湯は「安全な漢方だから飲み続けてよい薬」ではありません。構成生薬の甘草(かんぞう)を1日量で6g相当と多く含むため、漫然と連用すると「偽アルドステロン症」という副作用を起こすことがあります。
⚠️ 偽アルドステロン症とは
甘草の成分(グリチルリチン)の作用で、血圧上昇・むくみ・低カリウム血症・手足の脱力や筋肉痛などが起こる副作用です。皮肉なことに、低カリウム血症が進むとかえって足がつりやすくなることもあります。添付文書でも「治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること」とされており、高齢の方や利尿薬を併用している方はとくに注意が必要です。脱力感・むくみ・血圧上昇に気づいたら、服用を中止して医療機関にご相談ください(出典:厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル「偽アルドステロン症」、芍薬甘草湯 添付文書)。
ポイントは次の3つです。
② 併用薬に注意――利尿薬や他の甘草含有漢方薬との併用は低カリウム血症のリスクを高めるため、必ず医師・薬剤師に申告する
③ 定期チェック――続けて使う場合は、血圧測定とカリウム値などの血液検査を定期的に受ける
また、そもそも頻発するこむら返りの背景に病気が隠れていれば、原因への治療が優先です。「市販の芍薬甘草湯を長期間自己判断で飲み続けている」という方は、一度内科でご相談ください。
6. 今日からできる予防のポイント
| 対策 | 具体的なポイント |
|---|---|
| 水分+電解質の補給 | 日中はこまめに水分補給し、大量に汗をかいた日は電解質を含む飲料も活用。就寝前にコップ1杯の水を飲む習慣を。アルコールやカフェインの摂りすぎは利尿により逆効果です。 |
| ミネラルを含む食事 | マグネシウム(海藻・ナッツ・大豆製品・玄米)、カリウム(野菜・果物・いも類)、カルシウム(乳製品・小魚)を意識してバランスよく。腎臓病で通院中の方はカリウム制限が必要な場合があるため主治医に確認してください。 |
| 就寝前のストレッチ | 壁に手をついてアキレス腱・ふくらはぎを左右30秒ずつ伸ばす。入浴で温まったあとに行うと効果的です。 |
| 足元の冷え対策 | 冷房の風が足に直接当たらないようにし、就寝時はレッグウォーマーや薄手の掛け物でふくらはぎを保温。シャワーだけで済ませず湯船で血行を促すのもおすすめです。 |
| 適度な運動 | ウォーキングやかかとの上げ下ろしでふくらはぎの筋力・血流を保つと、つりにくい足になります。運動前後の水分補給とストレッチも忘れずに。 |
7. 受診の目安――こんなときは内科へ
🏥 次のような場合は受診をおすすめします
☑️ 週に何度も、あるいは毎晩のように足がつる
☑️ 夜間だけでなく日中もつる、ふくらはぎ以外(太もも・手・腹部など)もつる
☑️ のどの渇き・多飲多尿・体重減少を伴う(糖尿病のサイン)
☑️ むくみ・だるさ・血圧上昇を伴う(腎臓・肝臓・甲状腺・偽アルドステロン症のサイン)
☑️ 足のしびれ・腰痛・歩くと足が痛む症状を伴う
☑️ 利尿薬・下剤・漢方薬(甘草含有)を長期間服用している
☑️ 健診で血糖・肝機能・腎機能・電解質の異常を指摘されたまま放置している
当院では、問診とあわせて血液検査(電解質・血糖・HbA1c・肝機能・腎機能・甲状腺ホルモンなど)や尿検査で原因を確認し、必要に応じて糖尿病内科での血糖管理、生活指導、薬剤の見直しまで一貫して行います。土・日・祝日も診療している(火曜休診)ため、平日お忙しい方も受診しやすい体制です。
8. よくあるご質問(FAQ)
9. 理事長コメント
10. まとめ
✅ つったときは膝を伸ばしてつま先を手前に引き、筋肉をゆっくり伸ばすのが基本
✅ 頻発する場合は糖尿病・肝臓や腎臓の病気・下肢静脈瘤・薬の副作用が隠れていることがある
✅ 芍薬甘草湯は原則頓用。長期連用は偽アルドステロン症(血圧上昇・むくみ・低カリウム血症)に注意
✅ 就寝前の水分補給・ストレッチ・足元の保温で予防を。繰り返すなら血液検査で原因確認を
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参考文献・出典
・厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル「偽アルドステロン症」(令和4年2月改定)
・芍薬甘草湯エキス製剤 添付文書(用法及び用量に関連する注意「治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること」)
・厚生労働省 e-ヘルスネット「熱中症による健康被害を防ごう」(脱水・電解質補給に関する啓発情報)
・日本静脈学会「下肢静脈瘤」患者向け情報(夜間有痛性筋けいれんとの関連)
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