慢性膵炎とは|背中の痛み・脂肪便・体重減少のサインと「早期慢性膵炎」の診断基準を院長 玉井博修・理事長 五藤良将が解説【白金高輪・港区】|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

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慢性膵炎とは|背中の痛み・脂肪便・体重減少のサインと「早期慢性膵炎」の診断基準を院長 玉井博修・理事長 五藤良将が解説【白金高輪・港区】|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

慢性膵炎とは|背中の痛み・脂肪便・体重減少のサインと「早期慢性膵炎」の診断基準を院長 玉井博修・理事長 五藤良将が解説【白金高輪・港区】

「お酒を飲んだ翌日、みぞおちから背中にかけて鈍い痛みが出る」「便が水に浮く・便器につく」「食べているのに体重が落ちてきた」——こうした症状を、胃の不調や加齢のせいだと考えて様子を見ていませんか。

これらは慢性膵炎のサインであることがあります。慢性膵炎は膵臓に線維化(かたくなる変化)が進む病気で、進行すると消化・吸収の力(膵外分泌機能)と血糖を調節する力(膵内分泌機能)の両方が落ちていきます。多くは元に戻らない(非可逆性)変化であるため、いかに早い段階で見つけるかが重要です。本記事では、慢性膵炎臨床診断基準2019(日本膵臓学会)と慢性膵炎診療ガイドライン2021(改訂第3版)(日本消化器病学会)に基づき、症状・診断・「早期慢性膵炎」という考え方・膵性糖尿病までを、白金高輪の消化器内科・内視鏡専門医と糖尿病内科医が解説します。

執筆: 五良会クリニック白金高輪|院長 玉井博修(日本内科学会 総合内科専門医・指導医 / 日本消化器病学会 専門医・指導医 / 日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医 / 日本肝臓学会 専門医・指導医)
監修・共著: 医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)

📌 この記事でわかること
慢性膵炎の症状(腹痛・背部痛・脂肪便・体重減少)、慢性膵炎臨床診断基準2019による確診・準確診・早期慢性膵炎の判定方法、EUS(超音波内視鏡)とMRCPの画像所見、膵酵素補充療法(パンクレリパーゼ)、膵性糖尿病(3c型糖尿病)、そして膵がんリスクまで。港区・白金高輪の内科で行える検査と、専門施設への連携の流れもあわせて解説します。

五藤 良将

THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY

五良会クリニック白金高輪 院長 玉井 博修/医療法人社団 五良会 理事長 五藤 良将(監修)

玉井 博修:日本内科学会 総合内科専門医・指導医/日本消化器病学会 専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医/日本肝臓学会 専門医・指導医
五藤 良将:日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は玉井博修が執筆し、五藤良将が監修して内容に責任を持っています。

📋 この記事の内容(クリックで該当箇所へ)
① 慢性膵炎とは ─ 膵臓が線維化していく病気
② こんな症状は要注意 ─ 腹痛・背部痛・脂肪便・体重減少
③ 病期(代償期・移行期・非代償期)で症状は変わる
④ 慢性膵炎臨床診断基準2019 ─ 確診・準確診の判定
⑤ 「早期慢性膵炎」という考え方とEUS・MRCP所見
⑥ 原因とリスク因子 ─ 1日60gの飲酒・喫煙・遺伝子・急性膵炎の既往
⑦ 検査の流れ ─ 内科で何をして、どこで専門検査を受けるか
⑧ 脂肪便と膵外分泌機能不全 ─ 膵酵素補充療法
⑨ 膵性糖尿病(3c型糖尿病)─ 低血糖に注意が必要な糖尿病
⑩ 慢性膵炎と膵がん ─ 定期的な画像フォローが必要な理由
⑪ 治療と生活 ─ 禁酒・禁煙・食事・痛みへの対応
⑫ 院長・理事長コメント
⑬ よくあるご質問(FAQ)
⑭ まとめ
⑮ 執筆者プロフィール
🏥 白金高輪で診るという選択(当院が選ばれる理由)
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1. 慢性膵炎とは ─ 膵臓が線維化していく病気

慢性膵炎とは、日本膵臓学会「慢性膵炎臨床診断基準2019」において、膵臓の病的線維化炎症症候群と定義されています。遺伝的な素因や環境要因などの危険因子を持つ方において、膵臓への持続的な傷害・ストレスに対して病的な反応が起こり、膵臓の内部に不規則な線維化・炎症細胞の浸潤・膵実質の脱落・膵石の形成・膵管の不規則な拡張といった慢性の変化が生じる病態です。

押さえておきたい3つのポイント

• 進行すると膵外分泌機能(消化酵素を出す力)膵内分泌機能(インスリンを出す力)の両方が低下する
• 膵臓の中の変化は不均一で、部位によって進み方が違う
• その多くは非可逆性(元に戻らない)。だからこそ早期に気づくことに意味がある

国内では慢性膵炎の患者さんは約6万7,000人(人口10万人あたり約50人)と推計されています。成因はアルコール性が最も多く全体の約7割を占めますが、男女で内訳が大きく異なり、男性ではアルコール性が7割を超える一方、女性では特発性(原因を特定できないもの)が約5割と報告されています。「お酒を飲まないから関係ない」とは言いきれない病気です。

⚠️ 慢性膵炎と紛らわしい病気

診断基準でも膵がん膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)との鑑別が重要とされています。また自己免疫性膵炎閉塞性膵炎は、治療によって病態や所見が改善しうる(可逆的である)点から、現時点では慢性膵炎とは別個に扱われます。「慢性膵炎らしい」所見があっても、必ず他の膵疾患の可能性を検討する必要があります。

2. こんな症状は要注意 ─ 腹痛・背部痛・脂肪便・体重減少

慢性膵炎の典型的な症状は、反復する上腹部痛または背部痛です。進行すると、膵液(消化酵素)が足りなくなることによる消化吸収の障害と、インスリンが足りなくなることによる高血糖が加わります。

症状 特徴・気づき方
みぞおちの痛み・背中の痛み 飲酒後・脂っこい食事の後に出やすい。前かがみになると楽になることがある
脂肪便(しぼうべん) 便が白っぽく、水に浮く・便器につきやすい・強い悪臭。脂の膜が浮くこともある
下痢・腹部膨満 脂肪の消化不良に伴う。整腸剤で改善しにくい
体重減少 食べているのに痩せる。栄養吸収障害と食事量の低下が重なる
血糖値の上昇・糖尿病の発症 健診で「血糖・HbA1cが高い」と初めて指摘されることがある
脂溶性ビタミン欠乏 ビタミンA・D・E・Kの吸収低下。骨がもろくなる・出血傾向の原因にもなる

早めの受診をおすすめするサイン

• みぞおち・背中の痛みが数か月以上くり返している
便が水に浮く・油が浮く状態が続いている
• 意図せず半年で5%以上の体重減少がある
急性膵炎で入院した既往があり、その後も腹痛がある
急に糖尿病を発症した(とくに痩せ型・飲酒歴あり)

3. 病期(代償期・移行期・非代償期)で症状は変わる

慢性膵炎は、膵臓の機能がどれくらい保たれているかによって病期が分けられます。症状の出方が病期によって変わるため、「痛みが軽くなった=良くなった」とは限らない点が、この病気の難しいところです。

代償期 痛みが主役の時期
膵臓の機能はまだ保たれており、腹痛・背部痛の発作をくり返します。血中・尿中の膵酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)が上下することがあります。
移行期 痛みが和らぎ、機能低下が始まる時期
膵臓の細胞が減るため痛みの発作は減りますが、その裏で消化・血糖調節の力が落ちていきます。
非代償期 消化吸収障害と糖尿病が前面に出る時期
脂肪便・下痢・体重減少・膵性糖尿病が目立ちます。痛みはむしろ軽くなることが多く、受診が遅れる原因になります。

⚠️ 「痛みがなくなったから治った」は誤解です

痛みの軽減は、膵臓の炎症が治まったからではなく、痛みを感じる膵組織そのものが減った結果であることがあります。痛みが減った時期にこそ、消化吸収と血糖のチェックが必要です。

4. 慢性膵炎臨床診断基準2019 ─ 確診・準確診の判定

日本膵臓学会の「慢性膵炎臨床診断基準2019」(膵臓 2019;34:279-281)では、次の7つの診断項目を組み合わせて判定します。

項目 内容
特徴的な画像所見(膵石、膵全体の石灰化、膵管の不規則な拡張など)
特徴的な組織所見(膵実質の脱落と線維化)
反復する上腹部痛または背部痛
血中または尿中膵酵素値の異常(複数回にわたる上昇または低下)
膵外分泌障害(BT-PABA試験=PFD試験で尿中PABA 6時間排泄率70%以下)
1日60g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴、または膵炎関連遺伝子異常
急性膵炎の既往
🧮 判定のしかた
慢性膵炎 確診:①または②の確診所見がある/もしくは①②の準確診所見+③④⑤のうち2項目以上
慢性膵炎 準確診:①または②の準確診所見がある
早期慢性膵炎:③〜⑦のうち3項目以上早期慢性膵炎の画像所見がある
疑診例:③〜⑦が3項目以上あるが早期慢性膵炎の画像所見が確認できず、他疾患も否定される場合(EUSを含む画像診断が望まれます)

なお、③〜⑦のうち2項目のみで早期慢性膵炎の画像所見を示す症例で他疾患が否定されるものは「早期慢性膵炎 疑診例」とされ、注意深い経過観察が必要です。また、無痛性・無症候性の症例も存在するため、そうした場合は診断基準をより厳密に適用すべきとされています。

5. 「早期慢性膵炎」という考え方とEUS・MRCP所見

慢性膵炎の変化は多くが非可逆性です。そこで日本の診断基準は、石灰化や膵石ができる前の段階を「早期慢性膵炎」として拾い上げるという考え方を採用しています。2019年の改訂では、危険因子の観点から診断項目が見直され、膵炎関連遺伝子異常急性膵炎の既往が診断項目に組み入れられ、多量飲酒歴の基準も1日80gから60g(純エタノール換算)に変更されました。

早期慢性膵炎の画像所見(a・bのいずれか)

検査 所見
a. EUS
(超音波内視鏡)
次の4項目のうち、1)または2)を含む2項目以上
1)点状または索状高エコー(3つ以上で陽性)
2)分葉エコー(5mm以上・3つ以上で陽性)
3)主膵管境界高エコー(膵体尾部の主膵管の半分以上の範囲)
4)分枝膵管拡張(径1mm以上・3つ以上で陽性)
b. MRCP
またはERCP
3本以上の分枝膵管に不規則な拡張が認められる
(早期慢性膵炎の評価では3.0テスラでの撮像が望ましいとされています)

EUS(超音波内視鏡)とは

内視鏡の先端に超音波装置がついた検査で、胃や十二指腸の壁ごしに、すぐ裏側にある膵臓を至近距離から観察できるのが特徴です。体表からの腹部エコーでは消化管ガスに邪魔されて見えにくい膵臓も、EUSなら細かい構造まで評価できます。早期慢性膵炎や小さな膵がんの拾い上げに欠かせない検査で、実施は消化器内視鏡の専門施設が中心となります。

6. 原因とリスク因子 ─ 1日60gの飲酒・喫煙・遺伝子・急性膵炎の既往

純エタノール60gはどれくらいのお酒か

診断項目⑥の「1日60g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴」は、具体的には次のような量にあたります。「毎日これくらいは飲んでいる」という方は、慢性膵炎のリスクを意識してください。

お酒の種類 純エタノール60gの目安
ビール(5%) 約1,500mL(中瓶3本・500mL缶3本)
日本酒(15%) 約3合(540mL)
焼酎(25%) 約300mL
ウイスキー(43%) ダブル約3杯(約180mL)
ワイン(12%) 約620mL(ボトル約0.8本)

※純アルコール量(g)= 量(mL) × アルコール度数(%)÷100 × 0.8 で計算した目安です。

飲酒以外のリスク因子

⚠️ お酒を飲まない方にも慢性膵炎は起こります

喫煙:慢性膵炎の発症・進行の独立した危険因子とされています
膵炎関連遺伝子異常:PRSS1(カチオニックトリプシノーゲン)遺伝子のp.R122H変異・p.N29I変異、SPINK1(膵分泌性トリプシンインヒビター)遺伝子のp.N34S変異など。膵炎関連遺伝子検査は保険収載されています
急性膵炎の既往:くり返す急性膵炎は慢性膵炎へ移行しうる
特発性:明らかな原因が特定できないもの。女性では最も多い成因です
高中性脂肪血症・胆石:急性膵炎の原因として、間接的に関与することがあります

📋 「毎日お酒を飲む」「背中が痛い」「便が浮く」が重なる方へ

五良会クリニック白金高輪(港区・白金高輪駅2番出口 徒歩1分)では、膵酵素を含む採血と腹部エコーで、まず膵臓の状態を確認できます。健診結果票をお持ちいただくと、重複する検査を省いて必要な項目に絞れます。

健診結果を持ってWEB予約する →

7. 検査の流れ ─ 内科で何をして、どこで専門検査を受けるか

慢性膵炎が疑われる場合、いきなり特殊検査を行うわけではありません。問診・採血・腹部エコーで当たりをつけ、必要に応じて段階的に精密検査へ進むのが基本です。

STEP 1 問診・身体診察
痛みの部位と持続期間、飲酒量と年数、喫煙、急性膵炎の既往、家族歴、便の性状、体重の推移を確認します。
STEP 2 採血(膵酵素と栄養・血糖)
膵アミラーゼ・リパーゼ・トリプシン・エラスターゼ1など膵特異性の高い項目に加え、血糖・HbA1c、アルブミン、脂溶性ビタミンに関わる指標などを評価します。膵酵素は「高い」だけでなく「低い」ことも異常です。
STEP 3 腹部超音波(エコー)
膵石・石灰化・主膵管の拡張・膵の萎縮や変形、膵のう胞の有無を確認します。被ばくがなく、くり返し行えるのが利点です。
STEP 4 CT・MRCP
石灰化の評価はCT、膵管の形態評価はMRCPが得意です。MRCPは造影剤を使わずに膵管・胆管を描出できます。
STEP 5 EUS(超音波内視鏡)・専門施設での精査
早期慢性膵炎の判定、膵がんとの鑑別、組織採取(EUS-FNA)が必要な場合は、連携する専門施設をご紹介します。

当院(白金高輪1F)で行えること

• 膵酵素を含む採血腹部超音波検査による初期評価
胃カメラ・大腸カメラによる、胃・十二指腸潰瘍や大腸疾患など他の腹痛原因の除外
血糖・HbA1cの評価と、膵性糖尿病を念頭に置いた糖尿病内科でのフォロー
• CT・MRCP・EUSが必要な場合の専門施設への紹介と、その後の継続診療

8. 脂肪便と膵外分泌機能不全 ─ 膵酵素補充療法

膵臓は1日に1〜1.5Lほどの膵液を分泌し、その中のリパーゼが脂肪の消化を担っています。慢性膵炎が進むとリパーゼの分泌量が減り、同時に膵液中の重炭酸塩の濃度も低下します。その結果、脂肪便・下痢・体重減少・ビタミンA、D、E、Kなど脂溶性ビタミンの欠乏が起こります。これが膵外分泌機能不全です。

✅ 膵酵素補充療法(パンクレリパーゼ)
不足した消化酵素を、高力価の膵消化酵素薬(一般名:パンクレリパーゼ、商品名:リパクレオン)で補う治療です。慢性膵炎診療ガイドライン2021(改訂第3版)では、脂肪便と体重減少を伴う慢性膵炎に対して「強く推奨」されています(慢性膵炎の腹痛に対しては弱い推奨)。
用法・用量は添付文書上、通常1回600mgを1日3回、食直後に経口投与し、症状により適宜増減します。食後すぐに飲むことが効果を得るうえで重要です。

⚠️ 「脂質はできるだけゼロに」は正しくありません

脂肪便を気にして脂質を極端に制限すると、エネルギー不足と脂溶性ビタミン欠乏が進み、かえって栄養状態が悪化します。酵素をしっかり補ったうえで、必要な脂質とエネルギーを確保するのが現在の考え方です。病期・体重・症状によって適切な量は変わりますので、自己流の制限ではなく主治医・管理栄養士と決めていきましょう。なお、ブタ蛋白質に過敏症の既往がある方はパンクレリパーゼを使用できません。

9. 膵性糖尿病(3c型糖尿病)─ 低血糖に注意が必要な糖尿病

慢性膵炎が進むと、インスリンを分泌する膵β細胞も失われ、膵性糖尿病(3c型糖尿病)を発症します。1型・2型糖尿病とは性質が異なり、治療上の注意点も変わります。

項目 2型糖尿病 膵性糖尿病(3c型)
インスリン 分泌低下+抵抗性 膵β細胞の脱落により分泌が低下
グルカゴン 保たれている 膵α細胞も失われ低下(血糖を上げる力が弱い)
血糖の動き 比較的安定 不安定(brittle)。高血糖と低血糖を行き来しやすい
体型 肥満を伴うことが多い やせ型・栄養障害を伴うことが多い
注意点 合併症予防が中心 重症低血糖のリスク。消化吸収障害の管理を同時に行う必要がある

膵性糖尿病で気をつけたいこと

血糖を上げるホルモンであるグルカゴンも不足するため、いったん低血糖になると回復しにくいという特徴があります。また、消化吸収障害があると食後の糖の吸収そのものが不規則になり、血糖の予測が難しくなります。厳しすぎる血糖目標は避け、低血糖を起こさないことを優先する——これが膵性糖尿病の治療の基本です。持続血糖モニタリング(CGM)は、こうした不安定な血糖変動を「見える化」するうえで有用です。

10. 慢性膵炎と膵がん ─ 定期的な画像フォローが必要な理由

慢性膵炎が膵がんのリスク因子であることは、疫学研究により確立されています。日本消化器病学会雑誌に掲載された総説(112巻8号「慢性膵炎と膵癌」)では、慢性膵炎における膵がんリスクは一般人口と比べて13.3倍、診断から2年以内に見つかった膵がん症例を除外した解析でも5.8倍と報告されています。

🔬 エビデンス:慢性膵炎における膵がんリスク
一般人口比 13.3倍(診断2年以内の症例を除外しても 5.8倍)。この「2年以内を除外しても高い」という点が重要で、すでにあった膵がんを慢性膵炎と見誤っていた可能性を差し引いても、慢性膵炎そのものが膵がんの危険因子であることを示しています。
出典:正宗淳ほか「慢性膵炎と膵癌」日本消化器病学会雑誌 112巻8号

⚠️ 「もう慢性膵炎と診断がついたから通院しなくてよい」ではありません

慢性膵炎の方は膵がんの高危険群にあたります。症状が安定していても、定期的な採血と画像(腹部エコー・CT・MRCPなど)によるフォローを続けることが、膵がんの早期発見につながります。とくにそれまで安定していた血糖が急に悪化した説明のつかない体重減少があるときは、早めの画像検査をご相談ください。

11. 治療と生活 ─ 禁酒・禁煙・食事・痛みへの対応

慢性膵炎の治療は、①進行を遅らせる(生活習慣の是正)②症状をとる(痛みの管理)③失われた機能を補う(膵酵素補充・血糖管理・栄養管理)の3本柱で組み立てます。

項目 内容
禁酒 アルコール性・非アルコール性を問わず断酒が基本。痛みの発作を減らし、進行を遅らせるうえで最も重要です。ご自身だけでやめるのが難しい場合は、専門的な支援につなぐことも選択肢です
禁煙 喫煙は慢性膵炎の進行と膵がん発症の両方に関わります。禁酒とセットで取り組む価値があります
食事・栄養 病期に応じて調整します。痛みが強い時期は脂質を控えめに、非代償期は酵素補充のうえで必要なエネルギー・脂質を確保します。1回量を減らして回数を分ける方法も有効です
痛みの治療 蛋白分解酵素阻害薬・鎮痙薬・鎮痛薬などを組み合わせます。鎮痛薬の自己判断での増量は、胃・十二指腸潰瘍や腎障害のリスクがあるため避けてください
膵酵素補充 脂肪便・体重減少があれば高力価パンクレリパーゼを食直後に(第8章参照)
内視鏡治療・手術 膵石による膵管の閉塞や、薬でとれない痛みに対して、内視鏡的治療(膵管ステント・体外衝撃波結石破砕術など)や外科手術が検討されます。専門施設での評価が必要です

12. 院長・理事長コメント

💬 院長 玉井博修より
「みぞおちや背中の痛みで来られる方の多くは、まず胃の病気を疑って受診されます。胃カメラで胃や十二指腸に異常がなかったときに、そこで終わりにせず膵臓に目を向けられるかどうかが分かれ目になります。膵酵素の採血と腹部エコーは外来で行える検査です。『検査しても異常なしと言われたけれど痛みが続く』という方こそ、一度ご相談ください。」
日本内科学会 総合内科専門医・指導医/日本消化器病学会 専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医/日本肝臓学会 専門医・指導医
💬 理事長 五藤良将より
「糖尿病内科の立場からお伝えしたいのは、『やせているのに血糖が高い』『薬を増やすとすぐ低血糖になる』という糖尿病の背景に、膵臓の病気が隠れていることがあるということです。膵性糖尿病では血糖を上げるホルモンも足りないため、教科書どおりの厳格な管理がかえって危険になります。当院では消化器内科と糖尿病内科が同じ建物の中で連携し、膵臓の評価と血糖管理を並行して進められます。気になる症状があれば、健診結果票を持ってご相談ください。」
日本抗加齢医学会専門医/日本糖尿病協会登録医/日本旅行医学会認定医

13. よくあるご質問(FAQ)

Q. お酒をまったく飲まないのに慢性膵炎と言われました。なぜですか?
A. 慢性膵炎の成因はアルコール性が全体の約7割を占めますが、女性では特発性(原因を特定できないもの)が約5割で最多と報告されています。ほかにも喫煙、膵炎関連遺伝子(PRSS1・SPINK1など)の異常、急性膵炎の既往などが関わります。飲酒歴がなくても慢性膵炎は起こりますので、症状が続く場合は検査をご検討ください。
Q. アミラーゼが正常でも慢性膵炎の可能性はありますか?
A. あります。診断基準の膵酵素の項目は「上昇」だけでなく「低下」も異常としています。膵臓の組織が減った非代償期では、むしろ膵酵素が低めに出ることがあります。また、そもそも膵酵素の異常は7つの診断項目のうちの1つにすぎません。採血が正常でも慢性膵炎は否定できないため、症状と画像を合わせて判断します。
Q. 「早期慢性膵炎」と言われました。治りますか?
A. 慢性膵炎の変化の多くは非可逆性とされており、「元の膵臓に戻る」と約束できる治療はありません。一方で、禁酒・禁煙をはじめとする生活習慣の是正は、進行を遅らせるうえで意味のある介入です。早期慢性膵炎の長期予後については現在も追跡研究が進められている段階で、診断基準にも「長期予後を追跡する必要がある」と付記されています。まずは危険因子を減らし、定期的に経過をみていくことが大切です。
Q. 脂肪便かどうか、自分で見分ける方法はありますか?
A. 目安として、便が白っぽい・水に浮く・便器の内側につきやすい・油の膜が浮く・においが強いといった特徴があります。ただしこれらは食事内容や他の消化器疾患でも起こりうるため、自己判断はせず、続く場合は受診してください。体重減少を伴う場合はとくに早めの評価をおすすめします。
Q. 膵酵素の薬(パンクレリパーゼ)はいつ飲めばよいですか?
A. 添付文書上は1回600mgを1日3回、食直後に服用します(症状により適宜増減)。酵素は食べたものと混ざって初めて働くため、食事の直後に飲むことが効果を左右します。飲み忘れて食後かなり時間が経ってしまった場合の対応は、自己判断せず主治医にご確認ください。なお、ブタ蛋白質に対する過敏症の既往がある方は使用できません。
Q. 慢性膵炎の糖尿病は、普通の糖尿病と治療が違うのですか?
A. 違います。膵性糖尿病(3c型)では、インスリンだけでなく血糖を上げるグルカゴンも不足するため、低血糖から回復しにくいという特徴があります。消化吸収障害があると食後の血糖も読みにくくなります。そのため厳格すぎる目標設定は避け、低血糖を起こさないことを優先します。当院では持続血糖モニタリング(CGM)も活用しながら、消化器側の状態とあわせて調整しています。
Q. EUS(超音波内視鏡)は必ず受けないといけませんか?
A. 全員に必要な検査ではありません。採血・腹部エコー・CT・MRCPで診断がつく場合も多くあります。EUSが力を発揮するのは、早期慢性膵炎の画像所見を判定したいときや、膵がん・IPMNとの鑑別が必要なときです。当院ではまず外来でできる検査で評価し、EUSが必要と判断した場合に連携先の専門施設をご紹介しています。
Q. 健診の腹部エコーで「膵管がやや拡張」と書かれていました。放置してよいですか?
A. 放置はおすすめしません。主膵管の拡張は慢性膵炎だけでなく、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)や膵がんのサインであることもあります。健診の判定区分に「要経過観察」と書かれていても、その意味は「一定期間をあけて必ず再評価する」ということです。結果票をお持ちのうえ、消化器内科をご受診ください。

14. まとめ

📝 この記事のポイント
✅ 慢性膵炎は膵臓の病的線維化炎症症候群で、その変化の多くは非可逆性
✅ 国内の推計患者数は約6万7,000人。成因はアルコール性が約7割だが、女性では特発性が約5割で最多
✅ 症状は腹痛・背部痛に加え、進行期には脂肪便・体重減少・糖尿病痛みが軽くなっても治ったわけではない
✅ 診断は「慢性膵炎臨床診断基準2019」に基づき、7項目の組み合わせで確診・準確診・早期慢性膵炎を判定する
✅ 早期慢性膵炎の画像所見はEUSの4項目(1)2)を含む2項目以上)またはMRCPで3本以上の分枝膵管拡張
✅ 飲酒の基準は1日60g以上(純エタノール換算)=ビール1,500mL・日本酒3合相当
✅ 脂肪便・体重減少があれば高力価パンクレリパーゼ(1回600mg・1日3回・食直後)がガイドラインで強く推奨
膵性糖尿病(3c型)はグルカゴンも不足するため低血糖に弱い。厳格すぎる血糖目標は避ける
✅ 慢性膵炎は膵がんの高危険群(一般人口比13.3倍)。症状が安定していても定期的な画像フォローを

参考・出典:日本膵臓学会「慢性膵炎臨床診断基準2019」(膵臓 2019;34:279-281)/日本消化器病学会「慢性膵炎診療ガイドライン2021(改訂第3版)」(2021年11月15日発行・南江堂)/正宗淳ほか「『慢性膵炎臨床診断基準2019』の背景と概要」(膵臓 2019;34:282-)/正宗淳ほか「慢性膵炎と膵癌」(日本消化器病学会雑誌 112巻8号)/リパクレオン顆粒・カプセル(パンクレリパーゼ)添付文書(エーザイ株式会社)/日本内分泌学会「膵性糖尿病」(一般の皆様へ)/「急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎の全国調査」

本記事は2026年9月21日時点の情報に基づいています。ガイドラインの改訂や新しい知見が出た場合は、内容を更新します。

15. 執筆者プロフィール

医療法人社団 五良会・正友会 理事長 五藤 良将

AUTHOR / SUPERVISOR

医療法人社団 五良会 理事長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事は、五良会クリニック白金高輪 院長 玉井博修(日本内科学会 総合内科専門医・指導医/日本消化器病学会 専門医・指導医/日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医/日本肝臓学会 専門医・指導医)が執筆し、五藤良将が監修しています。いずれも公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで作成しました。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、五良会クリニック白金高輪(03-6432-5353)までお知らせください。

🏥 白金高輪で診るという選択(当院が選ばれる理由)

慢性膵炎は、消化器の評価と血糖の評価、そして栄養の管理を同時に進める必要がある病気です。ここまでお読みいただいた内容を、当院ではこう診ています。

理由① 消化器内科と糖尿病内科が同じフロアにあります

膵臓の評価(採血・腹部エコー・内視鏡)と、膵性糖尿病を念頭に置いた血糖管理を、1か所で並行して進められます。

理由② 胃カメラ・大腸カメラに対応しています

みぞおちの痛みの原因として頻度の高い胃・十二指腸潰瘍や、大腸の病気を先に除外したうえで、膵臓の評価へ進めます。

理由③ CGM(FreeStyleリブレ2)に対応しています

血糖が不安定になりやすい膵性糖尿病では、持続血糖モニタリングで日々の変動を確認しながら治療を調整できます。

理由④ 土・日・祝も10:00〜15:00で診療しています

平日に通院しにくい方も、定期的な採血・画像フォローを続けやすい体制です(休診日は火曜日)。

理由⑤ 白金高輪駅2番出口から徒歩1分です

東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪駅」直結エリア、プレミストタワー白金高輪1F。港区内はもちろん、通勤途中の受診もしやすい立地です。

理由⑥ 専門施設との連携と、その後の継続診療

EUSやERCP、内視鏡的治療・手術が必要な場合は連携先をご紹介し、治療後の通院・薬物療法・栄養管理は当院で継続して担当します。

背中の痛み・脂肪便・体重減少が気になる方、お酒を毎日飲む習慣のある方は、一度ご相談ください。

健診結果票をお持ちいただくと、重複する検査を省いて必要な項目に絞れます。

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GORYOKAI CLINIC SHIROKANE-TAKANAWA
五良会クリニック白金高輪
内科・小児科・消化器内科・血液内科・内視鏡検査・糖尿病内科・アレルギー科
内科 小児科 消化器内科 血液内科 内視鏡
糖尿病内科 アレルギー科 予防接種 健康診断 渡航医学
〒108-0074 東京都港区高輪1丁目3-1 プレミストタワー白金高輪 1F
東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪駅」2番出口 徒歩1分
診療時間 日・祝
10:00〜13:00 10:00

15:00
10:00

15:00
14:30〜19:00

休診日:火曜日/土・日・祝は10:00〜15:00(最終受付14:30)


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院長 玉井 博修
理事長 五藤 良将