血圧の薬を飲んでも下がらない方へ|原発性アルドステロン症(二次性高血圧)の検査と治療――カリウム正常でも要注意【白金高輪・港区の内科】
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)
「血圧の薬をきちんと飲んでいるのに、なかなか下がらない」「薬が3種類に増えたけれど、まだ150mmHgを超える日がある」――そんなお悩みで受診される方は少なくありません。生活習慣や塩分のとりすぎが原因のこともありますが、高血圧の背景に「別の病気」が隠れている場合(二次性高血圧)があります。その中で最も多いとされるのが原発性アルドステロン症(PA)で、高血圧全体の約5〜10%を占めると報告されています(日本内科学会雑誌 107巻9号)。
この記事では、東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪駅」徒歩1分、港区の五良会クリニック白金高輪の内科医が、原発性アルドステロン症を疑うべきサイン、血液検査によるスクリーニングの実際(ARR・PAC)、検査前に注意すべき降圧薬の影響、そして陽性だった場合の確認検査・治療の流れまでを、「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」と「原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021」(日本内分泌学会)に沿って解説します。
② 原発性アルドステロン症(PA)とは―ホルモンが原因の高血圧
③ 高血圧の5〜10%。決してまれな病気ではありません
④ 【最重要】カリウムが正常でもPAは否定できません
⑤ どんな人が検査を受けるべきか(スクリーニング対象)
⑥ スクリーニング検査の実際―ARRとPACの見方
⑦ 検査の前に必ず確認したい「降圧薬の影響」
⑧ スクリーニング陽性だったら―確認検査と局在診断の流れ
⑨ 治療―手術で治る場合と、薬で管理する場合
⑩ 放置すると何が起こるか―脳卒中・心房細動・腎障害
⑪ 白金高輪の当院での進め方
⑫ 理事長コメント
⑬ よくある質問(FAQ)
⑭ まとめ
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1. 薬を飲んでも下がらない高血圧=「治療抵抗性高血圧」とは
高血圧の診療では、「治療抵抗性高血圧」という言葉を使います。おおむね次のような状態を指します。
治療抵抗性高血圧の考え方
生活習慣の修正を行ったうえで、利尿薬を含む作用機序の異なる3剤以上の降圧薬を十分量使用しても目標血圧に到達しない状態。あるいは、4剤以上を使ってようやく目標に達している状態(コントロール良好な治療抵抗性高血圧)も含めて考えます。
日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」(2025年8月29日発刊)では、降圧目標が全年齢で診察室血圧130/80mmHg未満に整理されました。目標値が下がったことで、「これまでは基準内だったのに、今は目標に届いていない」という方も増えています。
薬が効きにくい背景としては、塩分過多・肥満・飲酒・睡眠不足・痛み止め(NSAIDs)などの併用、服薬を忘れがちであることなど、さまざまな要因があります。しかしそれらを整理してもなお下がらないときには、「高血圧そのものを引き起こしている別の病気(二次性高血圧)がないか」を一度調べておく価値があります。
⚠️ 注意
「薬が効かないから」と自己判断で降圧薬を中止・減量することは絶対に避けてください。血圧が急上昇し、脳卒中や心不全のリスクが高まります。必ず主治医にご相談ください。
2. 原発性アルドステロン症(PA)とは―ホルモンが原因の高血圧
原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)は、腎臓の上にある副腎から、血圧を上げるホルモンであるアルドステロンが、体の指令とは関係なく(自律的に)過剰に分泌されてしまう病気です。
アルドステロンは本来、体内の塩分(ナトリウム)と水分を保持し、カリウムを尿に排泄することで、血圧と電解質のバランスを保つホルモンです。これが出すぎると、次のようなことが起こります。
| 体の中で起きていること | 結果として現れる変化 |
|---|---|
| ナトリウム(塩分)と水分が体に溜まる | 循環血液量が増え、血圧が上がる。塩分を控えても下がりにくい |
| カリウムが尿から失われる | 低カリウム血症。脱力感、こむら返り、多尿、夜間頻尿、ひどい場合は手足の麻痺 |
| レニン(腎臓が出す血圧調節ホルモン)が抑えられる | 血液検査でレニンが低値、アルドステロンが高値という特徴的なパターンになる |
| アルドステロン自体が心臓・血管・腎臓に直接ダメージを与える | 同じ血圧値の本態性高血圧より臓器障害が進みやすい |
原因となる副腎の状態は主に2つで、片側の副腎にできた腺腫(良性のこぶ)によるものと、両側の副腎が過形成(全体的に働きすぎている)によるものに分かれます。この区別が、後述するように治療方針を大きく左右します。
3. 高血圧の5〜10%。決してまれな病気ではありません
出典:日本内科学会雑誌 107巻9号「原発性アルドステロン症」、原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021(日本内分泌学会)
日本の高血圧患者さんは約4,300万人と推計されています。単純計算で200万人を超える方がPAの可能性を持っていることになりますが、実際に診断されている方はごく一部にとどまります。「見つけられていない」ことが最大の課題である病気だといえます。
見つけることに大きな意味があるのは、片側性のPAであれば手術で高血圧そのものが改善・治癒しうること、そして両側性であっても原因に合った薬(MR拮抗薬)を選べば血圧が劇的に安定することが多いためです。
4. 【最重要】カリウムが正常でもPAは否定できません
見逃しの最大の理由
原発性アルドステロン症で低カリウム血症が現れるのは5割未満とされています。つまり、半数以上の患者さんはカリウムが正常です。「健診でカリウムに異常がなかったから大丈夫」という判断は成り立ちません。
教科書的には「高血圧+低カリウム血症=PAを疑う」と説明されますが、実際の診療では、カリウムが正常な治療抵抗性高血圧の方から診断されるケースが増えています。低カリウム血症は、病気がある程度進んだ段階や、塩分摂取量が多い状況で現れやすい所見であり、初診時にはっきりしないことも珍しくありません。
また、以下のような点も見逃しにつながります。
| よくある誤解 | 実際は |
|---|---|
| カリウムが正常ならPAではない | 低カリウム血症を伴うのは5割未満。正常でも否定できません |
| 血圧がそれほど高くないから関係ない | 軽症〜中等症の高血圧でもPAは見つかります |
| 腹部CT・エコーで副腎に異常がなかった | 腺腫が小さいと画像で写らないことがあり、画像だけでは診断も除外もできません |
| 利尿薬を飲んでカリウムが下がっただけ | 利尿薬で誘発された低カリウム血症も、PAを疑うきっかけとされています |
5. どんな人が検査を受けるべきか(スクリーニング対象)
「原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021」では、高血圧の方のうちPAの可能性が高いグループに対して積極的にスクリーニングを行うことが推奨されています。代表的な対象は次のとおりです。
■ 低カリウム血症がある(利尿薬で誘発されたものを含む)
■ II度以上の高血圧(160/100mmHg以上)
■ 副腎の腫瘍(副腎偶発腫)を指摘されたことがある
■ 40歳未満での高血圧発症、または若年での脳卒中の既往
■ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)を合併している
■ 家族に若くして高血圧・脳卒中になった方がいる
なお、睡眠時無呼吸症候群とPAはしばしば合併し、互いに血圧を上げ合う関係にあります。「いびきがひどい・日中の眠気が強い・血圧が下がらない」という組み合わせの方は、両方の評価をおすすめします。
6. スクリーニング検査の実際―ARRとPACの見方
スクリーニングは採血1回で行えます。測るのは次の2つのホルモンです。
| 検査項目 | 意味 |
|---|---|
| PAC (血漿アルドステロン濃度) |
アルドステロンがどれだけ出ているか。PAでは高値になります |
| PRA (血漿レニン活性) |
腎臓が出す血圧調節ホルモンの働き。PAでは低値に抑えられます |
| ARR (アルドステロン/レニン比) |
PACをPRAで割った値。この比が大きいほどPAを疑います |
スクリーニング陽性の基準(ガイドライン2021)
ARR > 200(CLEIA法)かつ PAC ≥ 60 pg/mL(CLEIA法)を満たす場合に「スクリーニング陽性」と判定します。
出典:原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021(日本内分泌学会、2021年10月15日発行・診断と治療社)
ここで注意していただきたいのが測定法の変更です。日本ではアルドステロンの測定について、2021年4月にRIA法が廃止され、CLEIA法に統一されました。これによりPACの数値そのものが以前より低めに出るようになり、判定基準も新しい基準に置き換わっています。数年前の検査結果をお持ちの方は、当時の基準値とそのまま比較できない点にご注意ください。
また、スクリーニング陽性はあくまで「疑いが強い」という段階であり、これだけでPAと確定するわけではありません。次の章でご説明する確認検査に進みます。
📅 健診結果票・お薬手帳をお持ちください
当院では、血圧が下がりにくい方へのPAスクリーニング採血に対応しています。健診結果票・血圧手帳・お薬手帳をお持ちいただくと、その場で必要な検査をご提案できます。白金高輪駅2番出口から徒歩1分、土曜・日曜・祝日も診療しています。
7. 検査の前に必ず確認したい「降圧薬の影響」
PAのスクリーニング検査には、今飲んでいる降圧薬が結果に影響するという特徴があります。薬の種類によって、アルドステロンやレニンの値が上がったり下がったりするためです。
| 薬の種類 | 検査への影響 |
|---|---|
| MR拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン、エサキセレノンなど) | 影響が非常に大きく、偽陰性(PAなのに陰性と出る)の原因になります |
| 利尿薬(サイアザイド系など) | レニンを上げ、判定を不正確にします |
| β遮断薬 | レニンを下げるため、偽陽性(PAでないのに陽性と出る)の原因になります |
| Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)・α遮断薬 | 影響が比較的小さく、検査中の血圧管理に用いられることが多い薬です |
薬の変更は必ず医師の指示のもとで
検査のために降圧薬を調整する場合がありますが、自己判断での中止・変更は危険です。血圧の状況によっては薬を変えずに検査を行い、結果を慎重に解釈するという選択をとることもあります。「検査のために薬を止めなければならない」と思い込んで受診をためらう必要はありません。まずはご相談ください。
なお、採血は体位や時間帯の影響も受けるため、一般的には安静後・午前中に行います。低カリウム血症があるとアルドステロンの分泌が抑えられて判定が難しくなるため、先にカリウムを補正してから検査することもあります。
8. スクリーニング陽性だったら―確認検査と局在診断の流れ
| STEP 1 | スクリーニング検査(採血) PAC・PRAを測定してARRを計算。かかりつけのクリニックで実施できます。 |
| STEP 2 | 機能確認検査 カプトプリル負荷試験、生理食塩水負荷試験、フロセミド立位試験、経口食塩負荷試験などのうち、状況に応じて実施します。負荷をかけてもアルドステロンが抑制されないことを確認し、PAを確定します。 |
| STEP 3 | 局在診断(副腎CT) 副腎に腺腫があるかを画像で確認します。ただし小さな腺腫は写らないこともあり、CTだけでは左右の判定はできません。 |
| STEP 4 | 副腎静脈サンプリング(AVS) カテーテルで左右の副腎静脈から直接採血し、どちら側がアルドステロンを出しているかを判定します。手術を検討する方に行う、実施施設の限られた検査です。 |
クリニックと専門施設の役割分担
STEP 1のスクリーニング採血は、かかりつけのクリニックで気軽に受けられます。STEP 2以降の負荷試験・AVSは、内分泌内科のある専門施設で行うのが一般的です。当院では陽性が出た場合、連携先の専門医療機関へご紹介し、診断がついた後の血圧管理は当院で継続する、という形をとることができます。
9. 治療―手術で治る場合と、薬で管理する場合
原発性アルドステロン症の治療は、「片側性か、両側性か」で大きく分かれます。ここが、わざわざ副腎静脈サンプリングまで行って左右を見極める理由です。
| タイプ | 主な治療 | 期待できること |
|---|---|---|
| 片側性 (片側の副腎腺腫など) |
腹腔鏡下副腎摘出術 (患側の副腎を摘出) |
血圧が正常化する、あるいは薬の種類・量を大幅に減らせることが期待されます。低カリウム血症はほぼ改善します。 |
| 両側性 (両側副腎過形成など) /手術を希望されない場合 |
MR拮抗薬による薬物療法 (スピロノラクトン、エプレレノン、エサキセレノンなど) |
アルドステロンの作用を直接ブロックするため、原因に合った薬として効果が高く、臓器保護も期待されます。 |
⚠️ 薬物療法での注意点
MR拮抗薬はカリウムが上がりやすいため、腎機能が低下している方では定期的な採血によるチェックが必要です。またスピロノラクトンでは、男性の女性化乳房・乳房痛、女性の月経異常といった副作用が出ることがあります。その場合は、より選択性の高いエプレレノンやエサキセレノンへの変更を検討します。
10. 放置すると何が起こるか―脳卒中・心房細動・腎障害
原発性アルドステロン症でとくに重要なのは、同じ血圧レベルの本態性高血圧の方と比べて、心血管・腎臓の合併症が起こりやすいと報告されている点です。アルドステロンには血圧を上げる作用とは別に、心臓・血管・腎臓の線維化や炎症を促す直接作用があるためと考えられています。
PAで注意すべき合併症
■ 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
■ 心房細動、心肥大、心不全
■ 慢性腎臓病(CKD)、尿蛋白の出現
■ 糖代謝異常(耐糖能障害)
■ 低カリウム血症に伴う不整脈・筋力低下
「血圧の数字がそれほど高くないから」と様子を見てしまうと、その間に臓器障害が進んでしまう可能性があります。診断を早くつけて、原因に合った治療を始めることが、将来の脳卒中・心不全・透析を避けるうえで重要です。
11. 白金高輪の当院での進め方
五良会クリニック白金高輪(東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪駅」2番出口 徒歩1分、港区高輪1丁目)では、血圧が下がりにくい方に対して次のような流れで診療しています。
| STEP 1 | 家庭血圧と生活背景の整理 まずは家庭血圧の測定方法・塩分・睡眠・飲酒・服薬状況を確認します。ここだけで改善するケースも少なくありません。 |
| STEP 2 | 二次性高血圧のスクリーニング PAC・PRA(ARR)に加え、腎機能・電解質・尿検査、必要に応じて甲状腺機能や睡眠時無呼吸の評価を行います。 |
| STEP 3 | 陽性なら専門施設へご紹介 負荷試験・副腎静脈サンプリングが可能な医療機関へご紹介します。 |
| STEP 4 | 診断後の長期管理は当院で 手術後・MR拮抗薬導入後の血圧・カリウム・腎機能の管理、糖尿病や脂質異常症の併存管理まで一貫して継続します。 |
当院は糖尿病内科・血液内科・消化器内科・内視鏡を備え、火曜以外は土曜・日曜・祝日も診療しています。平日に通院時間を確保しにくい方でも、検査と経過観察を続けやすい体制です。健診で血圧を指摘されたまま受診できずにいる方も、結果票をお持ちのうえお気軽にご相談ください。
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12. 理事長コメント
13. よくある質問(FAQ)
14. まとめ
✅ 原発性アルドステロン症(PA)は高血圧の約5〜10%を占め、二次性高血圧の中で最も頻度が高い
✅ 低カリウム血症が出るのは5割未満。カリウムが正常でもPAは否定できない
✅ スクリーニングは採血1回。ARR > 200 かつ PAC ≥ 60 pg/mL(CLEIA法)で陽性と判定する
✅ MR拮抗薬・利尿薬・β遮断薬は検査結果に影響するが、自己判断での中止は禁物
✅ 片側性なら手術で改善・治癒が期待でき、両側性でもMR拮抗薬で血圧が安定しやすい
✅ 放置すると脳卒中・心房細動・慢性腎臓病のリスクが高まるため、早期診断が重要
参考・出典:日本内分泌学会「原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021」(2021年10月15日発行・診断と治療社)/日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」(2025年8月29日発刊)/日本内科学会雑誌 107巻9号「原発性アルドステロン症」/厚生労働省 難病情報センター「原発性アルドステロン症」/MSDマニュアル プロフェッショナル版「原発性アルドステロン症」
二次性高血圧のスクリーニング採血に対応し、必要に応じて専門施設と連携します。
✅ 健診でカリウムが低いと指摘された方
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✅ 副腎に腫瘍があると言われたことがある方
✅ いびき・日中の眠気があり血圧も高い方
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