ハチに刺されたら|「2回目が危ない」の本当の意味と、アナフィラキシーへの備え(エピペン・ネフィー点鼻液)|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

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ハチに刺されたら|「2回目が危ない」の本当の意味と、アナフィラキシーへの備え(エピペン・ネフィー点鼻液)|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

ハチに刺されたら|「2回目が危ない」の本当の意味と、アナフィラキシーへの備え(エピペン・ネフィー点鼻液)

ハチに刺されたら|「2回目が危ない」の本当の意味と、アナフィラキシーへの備え(エピペン®・ネフィー®点鼻液)

医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)

8月から10月にかけては、スズメバチやアシナガバチの活動が一年でもっとも活発になる時期です。夏休みのキャンプや登山、お墓参り、庭木の手入れ、公園での外遊びなど、ハチと出会う機会が増えるのがちょうどこの季節にあたります。

ハチ刺されの多くは、腫れと痛みだけで自然に治まります。しかし一部の方では、刺された直後に全身のじんましん・呼吸困難・血圧低下といったアナフィラキシーを起こし、短時間で生命に関わる状態になることがあります。厚生労働省の人口動態統計では、ハチ刺症による死亡は令和5年(2023年)21人、令和6年(2024年)18人と、毎年20人前後で推移しています。これはクマなどによる被害を上回る数字です。

この記事では、ハチに刺された直後にご自身とご家族が取るべき行動、「2回目が危ない」と言われる理由、そしてハチ毒アレルギーの検査について、日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」に沿って整理してお伝えします。

あわせて、備えの選択肢についても最新の情報をお届けします。これまで日本で使えるアドレナリンの自己使用製剤はエピペン®(自己注射薬)のみでしたが、2026年2月12日、国内初のアドレナリン点鼻液「ネフィー®点鼻液」が発売されました。針を使わない選択肢が加わったことで、「注射が怖くて持てない」「いざというとき打てる自信がない」という理由で備えをためらっていた方にも、現実的な選択肢が広がっています。

🚨 まずこれだけは覚えてください

ハチに刺された後、刺された場所から離れた部位のじんましん・声のかすれ・息苦しさ・ふらつき・強い腹痛や嘔吐のいずれかが出たら、それはアナフィラキシーです。様子を見ずに、ただちに救急要請(119番)をしてください。多くは刺されてから30分以内に始まります。

1. なぜ8月から10月にハチ刺されが増えるのか

スズメバチやアシナガバチは春に女王バチが単独で巣作りを始め、夏にかけて働きバチが増えていきます。巣の規模と働きバチの数がピークに達するのが8月から10月で、この時期は新女王バチと雄バチを育てる大切な時期にあたるため、巣を守る防衛行動が一年でもっとも攻撃的になります。

刺傷事故の多くは、ハチが自ら襲ってきたというより、気づかないうちに巣に近づいた・巣に振動を与えたことがきっかけです。草刈り、庭木の剪定、屋根裏や軒下の作業、山道での藪こぎ、墓地の掃除などで発生しやすく、都心にお住まいの方でも、お盆の帰省やレジャーで一気にリスクが高まります。

日本で問題になる主なハチ

スズメバチ類(オオスズメバチ、キイロスズメバチなど)… 攻撃性・毒量ともに最大。死亡例の大半を占めます。
アシナガバチ類… 住宅の軒下やベランダに営巣。都市部で刺傷が多いのはこちらです。
ミツバチ… 攻撃性は低いものの、針が残るため抜去が必要です。養蜂関係者は反復曝露により感作されやすい傾向があります。

2. 刺された後に起こる3つの反応を見分ける

ハチに刺された後の反応は、大きく3つに分けて考えると判断しやすくなります。危険なのは3番目だけですが、3番目は進行が速いため、見分け方をあらかじめ知っておくことが命綱になります。

反応の種類 症状 経過と対応
① 通常の局所反応 刺された場所の痛み・赤み・数cmの腫れ 数時間〜1〜2日で軽快。冷却と外用薬で対応可能
② 大局所反応 直径10cmを超える腫れ、24〜48時間かけて増悪。関節をまたいで腫れることも 数日〜1週間で軽快。ステロイド外用・内服や抗ヒスタミン薬を使うことがあり、受診が望ましい
③ 全身反応(アナフィラキシー) 刺された場所から離れた部位のじんましん、まぶた・唇の腫れ、声のかすれ、息苦しさ、咳、腹痛・嘔吐、ふらつき、意識がもうろうとする 多くは30分以内に発症。ただちに119番

⚠️ 大局所反応は「アレルギーが強い」という意味ではありません

腫れが大きいことと、将来アナフィラキシーを起こす危険性は必ずしも比例しません。逆に、腫れが軽くても全身症状が出た方のほうが、次回のリスクは高いと考えられます。大きさより「刺された場所から離れた症状が出たかどうか」が重要です。

3. アナフィラキシーの診断基準(ガイドライン2022)

日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」(2022年8月30日発行、2023年3月2日一部修正)では、アナフィラキシーを次の2つの基準のいずれかを満たす場合と定義しています。

📖 アナフィラキシーの診断基準(要約)
【基準1】 皮膚・粘膜症状(全身のじんましん、かゆみ、紅潮、唇や舌の腫れなど)が急速に出現し、加えて次のいずれかを伴う。
  a. 呼吸器症状(息苦しさ、ぜん鳴、持続する咳、声のかすれ、酸素飽和度の低下)
  b. 血圧低下または臓器不全に伴う症状(ぐったり、失禁、意識の低下)
  c. 重度の消化器症状(強い腹痛、繰り返す嘔吐)

【基準2】 その方にとって既知のアレルゲン、またはその可能性が高いものに曝露した後、急速に血圧低下・気管支けいれん・喉頭症状のいずれかが出現した場合(皮膚症状がなくても診断される)。

出典:日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」(2022年8月30日発行/2023年3月2日 診断基準の用語を「呼吸不全」から「重度の呼吸器症状」に修正)

注目していただきたいのは基準2です。以前にハチ刺されでアレルギー症状が出たことのある方が再び刺され、じんましんが出ていなくても急に血圧が下がったり喉が締まる感じがしたりすれば、それだけでアナフィラキシーと判断して治療を始めます。「じんましんが出ていないから大丈夫」という判断は誤りです。

また、アナフィラキシーに対する第一選択薬はアドレナリンの筋肉注射であり、抗ヒスタミン薬やステロイドは補助的な位置づけです。抗アレルギー薬を飲んで様子を見るという対応は、初期対応としては適切ではありません。

4. 「2回目が危ない」は本当か

「ハチは2回目に刺されると死ぬ」という言い伝えを耳にされた方は多いと思います。これは半分正しく、半分は誤解です。

正しいのは仕組みの部分です。1回目に刺されたときにハチ毒に対するIgE抗体がつくられ(感作)、次に刺されたときにその抗体が反応してアナフィラキシーが起こり得る——この流れ自体は事実です。

誤解なのは「2回刺されたら必ず起こる」「3回目以降は安全」という点です。実際には、感作が成立していなければ何度刺されても全身症状は出ませんし、逆に3回目・5回目で初めてアナフィラキシーを起こす方もいます。回数で安全・危険を判定することはできません。

特に注意していただきたい方

・過去にハチ刺されで全身のじんましん・呼吸器症状・失神を起こしたことがある方
・林業、造園業、農業、養蜂業など職業上ハチに刺される機会が多い
・山間部にお住まいで救急車の到着に時間がかかる地域の方
β遮断薬(降圧薬・抗不整脈薬)やACE阻害薬を内服中の方(アドレナリンの効きが悪くなる、症状が重くなりやすいと報告されています)
・心血管疾患のある高齢の方

5. 刺された直後の応急処置(STEP1〜5)

STEP 1 その場から静かに離れる
ハチは警報フェロモンを出して仲間を呼びます。手で払う・大声を出すのは逆効果です。頭部と首を守りながら、姿勢を低くして20〜30m以上離れてください。
STEP 2 針が残っていれば取り除く
ミツバチの場合は針と毒嚢が皮膚に残ります。指でつまむと毒が押し込まれるため、カードの縁などで横に払い落とすのが安全です。スズメバチ・アシナガバチは針が残りません。
STEP 3 流水で洗い、冷やす
刺された部位を流水で洗い流し、保冷剤や冷たいタオルで冷却します。口で吸い出すのは禁物です(口腔内の傷から吸収される恐れがあります)。市販の吸引器がある場合のみ使用してください。アンモニアや尿は無効です。
STEP 4 30分間は一人にせず全身症状を観察する
離れた部位のじんましん、息苦しさ、声のかすれ、腹痛・嘔吐、ふらつき、顔面蒼白、冷汗が出ないかを見守ります。一人での運転や単独行動は避けてください。
STEP 5 全身症状が出たら、アドレナリン製剤を使用し119番
エピペン®をお持ちの方は迷わず大腿部前外側に注射、ネフィー®点鼻液をお持ちの方は片方の鼻腔に噴霧します。その後仰向けに寝かせ、脚を挙上(呼吸が苦しいときは上体を起こす、嘔吐があるときは横向き)。急に立ち上がらせないことが極めて重要です。体位変換をきっかけに急変した例が報告されています。
✅ アドレナリンを使った後も必ず救急要請を
アドレナリンの効果は10〜20分程度で減弱します。また、いったん改善した後に数時間して再燃する二相性反応が起こることがあります。症状が治まったように見えても、必ず医療機関で経過を観察してください。

6. 備えの選択肢|エピペン®とネフィー®点鼻液

アナフィラキシーの第一選択はアドレナリンです。日本では長らく、患者さんご自身が使えるアドレナリン製剤はエピペン®(自己注射薬)のみでしたが、2026年2月12日にネフィー®点鼻液(アドレナリン点鼻液)が発売され、国内で初めて「針を使わない」選択肢が加わりました。それぞれの特徴を整理します。

エピペン®とはどのような薬か

エピペン®注射液(一般名:アドレナリン、製造販売元:ヴィアトリス製薬株式会社)は、蜂毒・食物・薬物などに起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療剤です。適応は「アナフィラキシーの既往のある方、またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い方」に限られます。

規格は0.15mg製剤と0.3mg製剤の2種類で、推奨用量はアドレナリンとして0.01mg/kgです。添付文書上、体重15kg未満の方に0.15mg製剤を、体重30kg未満の方に0.3mg製剤を投与すると過量になる可能性があるとされており、実務上は体重15〜30kgで0.15mg、30kg以上で0.3mgが目安となります。成人はほぼ0.3mg製剤です。

項目 内容
打つ場所 大腿部の前外側(太ももの外側前方)。衣服の上からでも注射できます
打ち方 青い安全キャップを外し、オレンジ色の先端を太ももに垂直に強く押し当てる。カチッと音がしたらそのまま数秒間押し付けたまま保持する
打つタイミング アナフィラキシーを疑ったらできるだけ早く。迷って遅れることのほうが危険です
保管 15〜30℃で遮光保存。車内・冷蔵庫・冷凍庫は不可。有効期限を定期的に確認し、期限前に処方医へご相談ください
持ち歩き 屋外作業・登山・キャンプ・帰省など、リスクのある場面では必ず携行。ご家族や同行者にも保管場所と使い方を共有しておく

ネフィー®点鼻液|国内初の「針を使わない」アドレナリン製剤

💡 ネフィー®点鼻液1mg/2mg(アドレナリン)
製造販売元はアルフレッサ ファーマ株式会社(米国ARS Pharmaceuticals社からのライセンス導入)。2025年9月19日に製造販売承認を取得、2025年11月1日に薬価基準収載、2026年2月12日に新発売となりました。適応はエピペン®と同じく「蜂毒、食物及び薬物等に起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療」です。日本人健康成人での薬物動態試験と、食物アレルギー患者を対象とした国内第III相試験で有効性・安全性が確認されています。
出典:アルフレッサ ホールディングス株式会社 プレスリリース(2025年9月19日 承認取得/2026年2月12日 新発売)、ネフィー®点鼻液 添付文書
項目 内容
規格と使い分け 体重30kg未満は1mg製剤、体重30kg以上は2mg製剤を1回投与。なお1mg製剤は原則として体重15kg以上の方に使用します(15kg未満では過量となるおそれがあり、通常のアドレナリン注射液の使用も考慮されます)
使い方 片方の鼻腔に先端を挿入し、1回噴霧する。針も、押し当てて保持する動作も不要
効果不十分なとき 1回目から10分以降を目安に2回目を投与可能。2回目は1回目と同じ鼻孔に投与することが望ましいとされています
保管 1〜30℃で遮光保存。凍結は避けてください
薬価(2025年11月1日収載) 1mg:22,975.30円/瓶、2mg:24,672.10円/瓶(保険診療での自己負担は割合に応じます)

エピペン®とネフィー®、どちらを選ぶか

比較項目 エピペン®注射液 ネフィー®点鼻液
投与経路 大腿部前外側への筋肉注射 鼻腔内への噴霧
規格 0.15mg/0.3mg 1mg/2mg
体重の目安 15〜30kg:0.15mg/30kg以上:0.3mg 30kg未満:1mg(原則15kg以上)/30kg以上:2mg
発売 先行して長年の使用実績あり 2026年2月12日(国内初の点鼻製剤)
向いている方 鼻炎・鼻づまりが強い方、学校や職場ですでに運用が確立している方、実績のある薬剤を希望される方 注射への抵抗が強く携行・使用をためらってしまう方、介助者が注射に不安を感じる方
注意点 押し当てて保持する手技が必要。15〜30℃・遮光で保管 強い鼻閉があると吸収が低下する可能性。1〜30℃・遮光で保管

⚠️ 「点鼻だから軽い薬」ではありません

ネフィー®もエピペン®と同じアドレナリンであり、位置づけはどちらもアナフィラキシーの補助治療剤です。使用したら症状が治まったように見えても、必ず救急要請・医療機関受診が必要である点も同じです。また、いずれか一方を持っていれば万全というものではなく、持ち歩いて、いざというときに実際に使えることがもっとも重要です。どちらが続けやすいかという視点でお選びください。

処方はどこでも受けられるわけではありません

エピペン®・ネフィー®はいずれも、あらかじめ所定の登録講習(動画講習)を修了して登録を済ませた医師でなければ処方できません。エピペン®は承認条件に基づく「エピペン登録医」制度、ネフィー®も適正使用の観点から処方医師登録と動画講習の受講が求められています。「近くの病院に行けばすぐ出してもらえる」という薬ではないため、必要と考えられる方はシーズン前・渡航前など時間に余裕のあるうちにご相談ください。

処方の際には、過去の刺傷歴と症状、内服中の薬(β遮断薬・ACE阻害薬の有無)、鼻の状態、生活環境や職業上のリスクを確認したうえで適応と剤形を判断し、練習用トレーナーを使って実際の手順を一緒に確認します。

📌 五良会クリニック白金高輪のアレルギー科・内科では

ハチ刺されの既往やアナフィラキシーのご不安について、検査から日常の備えまでご相談いただけます。火曜以外は毎日、土曜・日曜・祝日も10:00〜15:00で診療しておりますので、平日にお時間が取れない方もご利用いただけます。

▶ 五良会クリニック白金高輪の診療案内を見る

7. ハチ毒アレルギーの検査(特異的IgE)

ハチ毒に対するアレルギーの有無は、血液検査(特異的IgE抗体検査)で調べることができます。日本で測定できるのは主にスズメバチ・アシナガバチ・ミツバチの3種類で、1回の採血で同時に測定可能です。

アレルゲンの構造が似ているため、スズメバチとアシナガバチのあいだには交差反応があり、片方に感作されるともう一方にも反応が出ることが少なくありません。一方、スズメバチとミツバチの交差反応は比較的少ないとされています。

⚠️ 検査結果の解釈には注意が必要です

特異的IgEが陽性でも、必ずアナフィラキシーを起こすとは限りません。逆に、陰性でもアナフィラキシーを起こした例が報告されており、「陰性=安全」とは言い切れません。検査値だけで判断せず、これまでの症状の内容とあわせて総合的に評価することが大切です。
なお、症状があって受診された場合は保険診療の対象となりますが、症状がなく将来に備えて調べたい場合は自費診療となるのが一般的です。

なお、ハチ毒エキスを用いたアレルゲン免疫療法(減感作療法)は、欧米では30年以上の実績があり有効率80〜95%と報告されています。しかし日本ではハチ毒抽出エキスに保険適用がなく、ごく一部の専門医療機関でのみ実施されているのが現状です。したがって国内での標準的な対策は、刺されない工夫+エピペン®の携行+救急要請の3本柱ということになります。

8. ハチに刺されないための予防

✅ 屋外に出るときのチェックリスト
白・淡い色の服装を選ぶ(黒や濃色は攻撃対象になりやすい)
長袖・長ズボン・帽子で肌の露出を減らす。首と頭を守る
香水・整髪料・柔軟剤などの強い香りを避ける
✔ 甘い飲料の缶やペットボトルは飲み口を確認してから口をつける(中に入っていることがあります)
✔ ハチが近づいてきても手で払わず、姿勢を低くしてゆっくり離れる
✔ 軒下・屋根裏・生垣・地面の穴は作業前に巣がないか確認する
✔ 巣を見つけたら自分で駆除せず、自治体や専門業者に相談する

スズメバチは黒く動くものを標的にする性質があり、頭髪や目のまわりが狙われやすいことが知られています。山や林に入る際は帽子とタオルで頭部・頸部を覆うだけでも、重症化リスクを下げることにつながります。

9. 受診の目安とタイミング

状況 対応
全身のじんましん・息苦しさ・声のかすれ・ふらつき・繰り返す嘔吐 ただちに119番。エピペン®・ネフィー®があれば使用
複数箇所(目安として10か所以上)を刺された 毒量が多く全身毒性が問題になり得ます。症状が軽くても救急受診を
口の中・のど・目のまわりを刺された 腫れが気道をふさぐ危険があります。速やかに受診を
腫れが10cmを超える/2日経っても悪化する/熱感と発熱を伴う 大局所反応または二次感染(蜂窩織炎)の可能性。当日〜翌日に内科・皮膚科へ
症状は治まったが、以前にも刺されて具合が悪くなったことがある 落ち着いてからで構いませんので、特異的IgE検査とアドレナリン製剤(エピペン®/ネフィー®点鼻液)処方の適応についてご相談を

10. よくあるご質問(FAQ)

Q. 刺された直後に抗アレルギー薬を飲めばよいですか。
A. 局所の腫れやかゆみには有効ですが、アナフィラキシーの初期治療にはなりません。全身症状が出た場合の第一選択はアドレナリンの筋肉注射です。内服薬で様子を見て受診が遅れることが、もっとも避けたい事態です。
Q. エピペン®を打つ必要がないのに打ってしまったら危険ですか。
A. 動悸・手の震え・頭痛・顔面蒼白などが一時的に出ることがありますが、健康な方では通常一過性です。アナフィラキシーが疑われる場面では、打たずに様子を見るリスクのほうがはるかに大きいと考えられています。迷ったら使う、が原則です。これはネフィー®点鼻液でも同じです。使用後は必ず医療機関を受診してください。
Q. ネフィー®点鼻液は、エピペン®の完全な代わりになりますか。
A. 同じアドレナリン製剤であり、適応も「アナフィラキシー反応に対する補助治療」で共通です。ただし剤形が違えば向き・不向きがあります。強い鼻づまりがあると吸収が低下する可能性が指摘されており、通年性の鼻炎が重い方や副鼻腔炎のある方は、その点を踏まえて主治医とご相談ください。一方で「注射が怖くて携行できない」という方にとっては、実際に使える備えを持てること自体が大きな利点になります。
Q. ネフィー®を使ったのに症状が改善しません。もう一度使ってよいですか。
A. 効果が不十分な場合、1回目の投与から10分以降を目安に2回目を投与できます。その際は1回目と同じ鼻孔に投与することが望ましいとされています。ただし2回目を使うかどうかを迷っている時間があってはいけません。1回目を使った時点で必ず119番通報を済ませておいてください。
Q. 子どもがハチに刺されました。大人より危険ですか。
A. お子さんの場合、体重あたりの毒量は多くなりますが、ハチ毒アナフィラキシーによる死亡は成人・高齢者に多いことが知られています。ただし、症状を自分でうまく伝えられない年齢では発見が遅れやすいため、刺された後30分は必ず大人がそばで様子を見てあげてください。
Q. 血圧の薬を飲んでいます。ハチ刺されと関係しますか。
A. β遮断薬を内服中の方はアドレナリンが効きにくくなること、ACE阻害薬内服中の方は症状が重くなりやすいことが指摘されています。だからといって自己判断で中止してはいけません。ハチに刺されるリスクが高い環境にお住まい・お勤めの方は、処方医にその点を伝えてご相談ください。
Q. エピペン®やネフィー®の有効期限が切れそうです。どうすればよいですか。
A. 期限切れのものは効果が保証されません。期限が近づいたら処方医にご相談いただき、新しいものへ切り替えてください。期限切れの製品は医療機関または薬局にご返却ください。ただし、切れていても手元にそれしかない緊急時は、何もしないより使用することが推奨されます。保管温度もあわせてご確認ください(エピペン®は15〜30℃、ネフィー®は1〜30℃、いずれも遮光・凍結不可。夏の車内放置は厳禁です)。
Q. 刺された跡が硬く残っています。放置してよいですか。
A. 局所の硬結が数週間残ることはありますが、赤みと熱感が広がる、押すと強く痛む、発熱を伴うといった場合は細菌の二次感染(蜂窩織炎)の可能性があります。抗菌薬が必要になることがありますので受診してください。
Q. 海外旅行や海外赴任先でも同じ対応でよいですか。
A. 基本的な応急処置は共通です。ただし、渡航先によっては医療機関までの搬送に時間がかかる、アドレナリン自己注射薬の入手が難しいといった事情があります。当院は日本旅行医学会認定医・日本渡航医学会認定医が在籍しておりますので、渡航前にあわせてご相談いただけます。

11. 理事長コメント

💬 理事長 五藤良将より
「自衛隊で勤務していた頃、演習場でハチに刺された隊員を診る機会が何度もありました。多くは腫れだけで済みますが、一人だけ、その場で急速に血圧が下がった例があり、いまも鮮明に覚えています。ハチ刺されで怖いのは毒そのものよりも、免疫が過剰に反応してしまうことです。
そして、その反応が起こるかどうかは事前に完全には予測できません。だからこそ、一度でも刺されて全身の具合が悪くなった経験のある方は、シーズン前にご相談いただきたいと思います。検査で確認し、必要なら備えを持つ。それだけで、ご本人もご家族も夏の過ごし方が変わります。
これまでは『注射が怖くて結局持ち歩かない』という方が一定数いらっしゃいました。2026年2月に点鼻薬という選択肢が加わったことで、そうした方にもご提案できる幅が広がったと感じています。当院は火曜以外は土日祝も診療しておりますので、お出かけの前後にお立ち寄りください。」
日本抗加齢医学会専門医/日本糖尿病協会登録医/日本旅行医学会認定医

12. まとめ

📝 この記事のポイント
✅ 8月〜10月はスズメバチ・アシナガバチの活動がピーク。ハチ刺症による死亡は国内で年間20人前後(厚生労働省 人口動態統計、令和5年21人・令和6年18人)
✅ 危険なのは「刺された場所から離れた部位の症状」。全身のじんましん・息苦しさ・声のかすれ・ふらつき・繰り返す嘔吐が出たら、ただちに119番
✅ アナフィラキシーの第一選択はアドレナリンの筋肉注射。抗ヒスタミン薬やステロイドは補助にすぎない(アナフィラキシーガイドライン2022)
✅ 「2回目が危ない」は仕組みとしては正しいが、回数で安全・危険は判定できない。3回目以降に初発することもある
✅ 急変時は横に寝かせて脚を挙げる。急に立ち上がらせないこと
✅ 2026年2月12日、国内初のアドレナリン点鼻液「ネフィー®点鼻液1mg/2mg」が発売。針を使わない選択肢が加わった(30kg未満1mg・30kg以上2mg、効果不十分なら10分以降に2回目可)
✅ エピペン®・ネフィー®とも登録講習を修了した医師のみ処方可能。必要な方はシーズン前・渡航前に余裕をもってご相談を
✅ ハチ毒特異的IgE検査は3種類(スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチ)を測定可能。ただし陰性でも絶対安全とは言えない
✅ ハチ毒アレルゲン免疫療法は日本では保険適用がなく、予防・備え・救急要請の3本柱が現実的な対策

参考文献・出典

1. 一般社団法人日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」(2022年8月30日 第1版第1刷発行、2023年3月2日 診断基準の用語修正)

2. 厚生労働省「人口動態統計」(スズメバチ、ジガバチ及びミツバチとの接触による死亡数)

3. エピペン®注射液0.15mg/0.3mg 添付文書(ヴィアトリス製薬株式会社)、PMDA医療用医薬品情報

4. ヴィアトリス製薬株式会社「エピペン®処方手順」「エピペン®登録医情報の取り扱いについて」

5. ネフィー®点鼻液1mg/2mg 添付文書(アルフレッサ ファーマ株式会社)

6. アルフレッサ ホールディングス株式会社 プレスリリース「アナフィラキシー補助治療剤『ネフィー®点鼻液1mg/2mg』の製造販売承認取得のお知らせ」(2025年9月19日)、同「新発売のお知らせ」(2026年2月12日)

7. ハチ毒アレルギーにおけるアレルゲン免疫療法に関する国内報告(本邦ではハチ毒抽出エキスに保険適用なし)

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