A型肝炎・B型肝炎ワクチンは渡航前にどう打つ?接種間隔・費用・混合ワクチンの選び方
- 2026年8月18日
- 渡航外来(トラベルクリニック),トラベルワクチン,予防接種・ワクチン
医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)/日本旅行医学会認定医
1. A型肝炎とB型肝炎は感染経路がまったく違います
| 項目 | A型肝炎 | B型肝炎 |
|---|---|---|
| 感染経路 | 汚染された水・氷・生水、加熱不十分な魚介類、生野菜など経口 | 血液・体液。医療行為、注射、ピアス・タトゥー、性行為など |
| リスクが高まる場面 | 屋台・市場での飲食、衛生状態の悪い地域での生活 | 現地で医療を受ける可能性、長期滞在、医療従事者 |
| 経過 | 慢性化しません。ただし年齢が上がるほど重症化しやすく、まれに劇症化します | 慢性化することがあり、肝硬変・肝細胞がんの原因になり得ます |
| 主な流行地域 | 東南アジア、南アジア、中国、アフリカ、中南米、東欧 | 東南アジア、中国、アフリカなどキャリア率の高い地域 |
| 日本人の抗体保有 | 若い世代ほど抗体を持っていません(衛生環境の改善のため) | 2016年10月から定期接種化。それ以前生まれの成人は未接種の方が多数 |
「若いから大丈夫」が通用しないのがA型肝炎です
日本では衛生環境が改善した結果、若い世代ほどA型肝炎の抗体を持っていません。つまり働き盛りの赴任者・留学生こそ無防備ということになります。しかもA型肝炎は年齢が上がるほど症状が重くなる傾向があり、40〜50代での初感染は経過が長引きやすいとされています。
2. A型肝炎ワクチン(エイムゲン)のスケジュール
| 1回目 0日 |
0.5mLを筋肉内または皮下に接種 |
| 2回目 2〜4週後 |
0.5mL。ここまでで抗体陽転率は100%(国内第III相試験) |
| 3回目 初回から24週後 |
0.5mLを追加接種。長期の抗体維持のために重要です |
つまり「出発前に2回、帰国後に3回目」という組み方が理にかなっています。
⚠️ 急ぐ場合は2週間隔という選択肢があります
添付文書には、免疫の賦与を急ぐ場合は2週間隔で2回接種する用法も記載されています。ただし長期に抗体価を維持するためには3回目の追加接種をすることが望ましいとされています。出発まで3週間しかない、という方はこの方法を検討します。
3. B型肝炎ワクチンのスケジュール
| 1回目 0日 |
0.5mLを皮下または筋肉内に接種(10歳未満は0.25mLを皮下) |
| 2回目 4週後 |
0.5mL。A型肝炎と違い、4週間の間隔が必要です |
| 3回目 初回から20〜24週後 |
0.5mL。ここまでで基礎接種が完了します |
B型肝炎は「短縮できない」のが最大のネックです
A型肝炎には急ぐ場合の2週間隔という用法がありますが、B型肝炎の国産ワクチンには短縮スケジュールが設定されていません。2回目までに最低4週間が必要なため、出発まで3週間しかない方は1回しか打てません。
ただし、この制約を回避する方法があります。次章でご説明する混合ワクチンTwinrixの迅速スケジュールを用いると、A型・B型の両方を3週間で3回接種できます。出発が迫っている方には、この選択肢をご提案することがあります。
4. A型・B型混合ワクチン(Twinrix)という選択肢
⚠️ Twinrixは日本国内では承認されていません
Twinrixは国内未承認の輸入ワクチンです。国内承認ワクチンは予防接種健康被害救済制度や医薬品副作用被害救済制度といった国の制度の対象となりますが、国内未承認ワクチンはこれらの対象外となります。
ただし「補償が何もない」わけではありません
「国の制度の対象外」と聞くと、万一のときに何の手当てもないように思われるかもしれませんが、実際にはそうではありません。輸入ワクチンには、輸入代行業者が独自に設けている副作用被害補償制度があります。当院が輸入を依頼している代行業者もこの制度を設けており、その業者を通じて輸入したワクチンが適正な目的で適正に使用されたにもかかわらず重篤な副作用が生じ、医師の無過失が認められ、ワクチンとの因果関係が認定された場合に補償が行われます。
補償内容の一例としては、死亡2,000万円/障害1級1,000万円/障害2級500万円といった水準が定められています。
ただし国の制度とは仕組みが異なる点もあります。因果関係の認定は確定判決が原則とされていること(確定判決に至らない場合は業者が設置する判定委員会が認定します)、年間の補償上限額が設定されており上限を超える場合は等級に応じて按分されること、そして補償の内容は代行業者ごとに異なることです。輸入ワクチンをご検討の際は、当院で使用する製剤の補償制度の詳細を接種前に必ずご説明いたします。
出典:輸入代行業者の補償制度の一例(つばめLabo「輸入ワクチン副作用被害補償制度」)
| 項目 | 国産ワクチン(エイムゲン+B型肝炎) | Twinrix(輸入) |
|---|---|---|
| 承認 | 国内承認 | 国内未承認 |
| 救済制度 | 予防接種健康被害救済制度の対象 | 国の制度は対象外。輸入代行業者の補償制度が適用されます(死亡2,000万円/障害1級1,000万円/障害2級500万円 など) |
| 接種本数 | 2種類を別々に接種(計6本) | 1種類3回(計3本) |
| スケジュール | A型:0・2〜4週・24週/B型:0・4週・20〜24週 | 標準:0・1か月・6か月 迅速:0・7・21日+12か月後 |
| 対象年齢 | 小児にも使用可(エイムゲンは1歳以上) | 18歳以上。お子さまには使用できません |
| 入手 | 通常の流通 | 輸入のため取り寄せに日数がかかります |
迅速スケジュール(0・7・21日)— 出発まで1か月を切っている方へ
臨床試験では、3回目接種後にA型肝炎の抗体陽転率100%、B型肝炎の抗体防御率82%が報告されており、12か月後のブースター接種でB型肝炎の防御率もほぼ100%に達するとされています。
| 項目 | 標準スケジュール | 迅速スケジュール |
|---|---|---|
| 接種日 | 0日・1か月後・6か月後 | 0日・7日・21日 +12か月後にブースター |
| 接種回数 | 3回 | 4回(ブースター含む) |
| 初回シリーズ完了まで | 6か月 | 3週間 |
| 向いている方 | 出発まで6か月以上ある方。注射回数を抑えたい方 | 出発まで1か月を切っている方 |
⚠️ 12か月後のブースターをお忘れなく
迅速スケジュールは、12か月後のブースター接種まで含めて完結します。渡航先から帰国後、あるいは一時帰国の際に必ず接種してください。多少遅れても最初からやり直す必要はありませんので、気づいた時点でご相談ください。
費用の比較
A型・B型の両方を接種する場合、当院では主に4通りの組み合わせがあります(ワクチン代のみ・税込)。
| 組み合わせ | 注射回数 | ワクチン代 | 救済制度 |
|---|---|---|---|
| 国産のみ(エイムゲン+ビームゲン) | 6回 | 67,500円 | すべて対象 |
| A型は輸入・B型は国産 | 5回 | 46,000円 | B型のみ対象 |
| Twinrix 標準スケジュール | 3回 | 48,000円 | 対象外 |
| Twinrix 迅速スケジュール | 4回 | 64,000円 | 対象外 |
別途、診察料(初診3,300円/再診1,500円)を申し受けます。「時間」「注射の回数」「費用」「救済制度」のどれを優先するかで最適解が変わります。ご希望をうかがったうえでご提案しますので、遠慮なくお申し付けください。
5. 渡航まで時間がない場合の考え方
| 出発まで | A型肝炎 | B型肝炎 |
|---|---|---|
| 6か月以上 | 3回すべて完了できます | 3回すべて完了できます |
| 1〜2か月 | 2回完了。3回目は帰国後・一時帰国時に | 2回完了。3回目は帰国後・一時帰国時に |
| 3〜4週間 | 2週間隔で2回接種する用法を検討します | 2回目まで到達できる場合もあります(4週間確保できるか) |
| 2週間未満 | 1回のみ。それでも打つ意味はあります | 1回のみ。残りは現地・帰国後に |
出発まで3〜4週間なら、両方を完了させる方法があります
上の表は国産ワクチンを用いた場合です。Twinrixの迅速スケジュール(0・7・21日)を選べば、出発まで3週間でもA型・B型の両方について3回接種を完了できます。国内未承認である点をご理解いただいたうえで、有力な選択肢になります。
国産ワクチンでどちらを優先するか
時間が足りず優先順位をつける必要がある場合、短期の観光・出張ではA型肝炎を、長期滞在や医療を受ける可能性が高い方ではB型肝炎を重視することが多くなります。ただし渡航先と活動内容によって判断は変わりますので、実際にはご相談のうえで決めます。
6. B型肝炎は接種後の抗体確認が推奨されます
⚠️ 年齢が上がるほど抗体がつきにくくなります
B型肝炎ワクチンは、加齢とともに免疫を獲得しにくくなることが知られています。中年以降で赴任される方、医療従事者として渡航される方は、3回接種後の抗体確認をおすすめします。抗体がついていなければ追加接種を行います。
7. 費用・副反応
| 項目 | 費用(税込・1回あたり) |
|---|---|
| A型肝炎ワクチン(エイムゲン・国産) | 16,500円 |
| A型肝炎ワクチン(輸入) | 14,000円 |
| B型肝炎ワクチン(ビームゲン) | 6,000円 |
| A型・B型肝炎混合ワクチン(Twinrix・輸入・国内未承認) | 16,000円 |
| 渡航前相談・診察料 | 初診 3,300円/再診 1,500円 |
| 英文接種証明書 | 8,000円 |
※ 記載の費用はいずれも税込で、2026年8月時点のものです。ワクチンの仕入価格の変動等により改定する場合がありますので、最新の費用はお問い合わせください。また、接種計画によって総額は変わりますので、お一人ずつの費用は診察時にご案内いたします。
📌 未承認医薬品に関する明示事項
Twinrix(A型・B型肝炎混合ワクチン)およびA型肝炎ワクチン(輸入)は、日本国内において薬事承認を受けていない医薬品です。
② 入手経路
医師の判断のもと、個人輸入代行業者を通じて輸入しています。
③ 国内の承認医薬品等の有無
A型肝炎はエイムゲン、B型肝炎はビームゲン・ヘプタバックス-IIが国内で承認されています。当院ではこれらもご用意しており、ご希望に応じてお選びいただけます。
④ 諸外国における安全性等に係る情報
Twinrixは欧米をはじめ多くの国で承認され、広く使用されている製剤です。ただし日本国内における副作用報告制度の対象外であり、国内での使用実績に基づく安全性情報は限られます。
⑤ 健康被害が生じた場合の補償
国の予防接種健康被害救済制度の対象外となりますが、輸入代行業者が設けている副作用被害補償制度が適用されます(詳細は接種前にご説明します)。
副反応
8. よくあるご質問
9. 理事長コメント
一方で、1回しか打てないから無駄かというと、そんなことはありません。出発前に何回まで到達できるかを見極め、残りを一時帰国や帰任後にどう完了させるかまで含めて計画を立てるのが渡航外来の仕事だと考えています。白金高輪では渡航医学認定医2名が在籍し、英文の接種証明書も発行しています。赴任や留学が決まったら、なるべく早くご相談ください。」
10. まとめ
✅ A型肝炎(エイムゲン)は0日 → 2〜4週後 → 初回から24週後の3回。2回で抗体陽転率100%
✅ 急ぐ場合は2週間隔で2回という用法があります
✅ B型肝炎は0日 → 4週後 → 初回から20〜24週後。短縮できないのがネックです
✅ Twinrixには迅速スケジュール(0・7・21日+12か月後)があり、出発まで3週間でも両方を完了できます
✅ Twinrixは18歳以上が対象。国内未承認のため国の救済制度は対象外ですが、輸入代行業者の補償制度が適用されます
✅ B型肝炎は3回目の1〜2か月後に抗体確認が推奨されます
✅ 狂犬病・破傷風と同時接種が可能です
参考文献・出典
2. ヘプタバックス-II/ビームゲン 添付文書(PMDA)
3. 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「トラベラーズワクチンとしてのA型肝炎ワクチン」
4. 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「A型肝炎ワクチン」
5. 厚生労働省「B型肝炎ワクチンについて」
6. 厚生労働省検疫所 FORTH「海外渡航のためのワクチン」
海外渡航前のワクチン接種・健康相談を一括して承っております。
✅ 黄熱・髄膜炎菌・狂犬病など輸入ワクチンも対応
✅ 英文接種証明書・診断書の発行
✅ 同日複数接種・出発までの最適スケジュール提案
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