夏休みに悪化する起立性調節障害(OD)|「朝起きられない」は怠けではありません【白金高輪の内科・小児科】|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

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夏休みに悪化する起立性調節障害(OD)|「朝起きられない」は怠けではありません【白金高輪の内科・小児科】|五良会クリニック白金高輪|白金高輪の内科

夏休みに悪化する起立性調節障害(OD)|「朝起きられない」は怠けではありません【白金高輪の内科・小児科】

医療法人社団五良会|理事長、竹内内科小児科医院|院長 五藤良将(糖尿病内科・感染症)

夏休みに入ってから、「朝、何度起こしても起きられない」「起き上がると立ちくらみやめまいがする」「午前中はぐったりしているのに、夕方から夜は元気」——お子さまのこんな様子に、戸惑っている保護者の方は少なくありません。「夜ふかしのせい」「怠けているだけ」と思われがちですが、その背景に起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)という自律神経の病気が隠れていることがあります。

起立性調節障害は、軽症例も含めると小学生の約5%、中学生の約10%にみられるとされる、思春期に非常に多い疾患です(日本小児心身医学会)。そして実は、暑さ・発汗による脱水・生活リズムの乱れが重なる夏は、症状が悪化しやすい季節です。この記事では、起立性調節障害の症状セルフチェック、診断の流れ、家庭でできる対策、受診の目安について、白金高輪で内科・小児科を診療する立場から解説します。

1. 起立性調節障害(OD)とはどんな病気か

起立性調節障害は、立ち上がったときの血圧・心拍の調節がうまくいかなくなる自律神経機能不全です。人間は立ち上がると重力で血液が下半身にたまりますが、健康な状態では自律神経(交感神経・副交感神経)が瞬時に血管を収縮させ、脳への血流を保ちます。この調節が思春期の急激な体の成長に追いつかないと、起立時に脳血流が低下し、立ちくらみ・めまい・倦怠感・朝の起床困難などの症状が現れます。

好発年齢は10〜16歳ごろで、やや女子に多い傾向があります。日本小児心身医学会によると、軽症例を含めると小学生の約5%、中学生の約10%にみられ、不登校のお子さまの約3〜4割に起立性調節障害が併存すると報告されています。決してまれな病気ではありません。

「怠け」「気持ちの問題」ではありません

起立性調節障害は、起立試験などで血圧・心拍の異常を客観的に確認できる「体の病気」です。午前中に症状が強く午後に回復するのは自律神経の日内変動によるもので、本人の意思でコントロールできるものではありません。「夜は元気なのに朝起きない」という一見矛盾した様子こそ、この病気の典型的なパターンです。

2. なぜ夏に悪化しやすいのか——暑さ・脱水・夏休みの生活リズム

起立性調節障害は春から夏(5〜8月)にかけて悪化しやすいことが知られています。夏に症状が重くなる主な理由は次の3つです。

理由1:暑さによる血管拡張

気温が高いと、体は熱を逃がすために皮膚の血管を広げます。血管が広がった状態で立ち上がると、血液がさらに下半身にたまりやすくなり、脳血流の低下が強まります。もともと血圧調節が苦手なODのお子さまにとって、暑さは大きな負担です。

理由2:発汗による脱水と循環血液量の減少

汗をかくと水分と塩分(ナトリウム)が失われ、体を巡る血液の量そのものが減少します。循環血液量が減ると起立時の血圧はさらに維持しにくくなり、立ちくらみや失神が起こりやすくなります。ODの治療で「水分と塩分をしっかりとる」ことが重視されるのはこのためで、夏はとくに意識が必要です。

理由3:夏休みによる生活リズムの乱れ

夏休みは就寝・起床時刻が遅くなりがちです。ODのお子さまはもともと体内時計が後ろにずれやすい(夜型化しやすい)特徴があり、夏休み中の夜ふかしで昼夜のリズムがさらに崩れると、休み明けに朝起きられず、9月の新学期から登校できなくなるというケースが毎年多くみられます。夏休みの過ごし方が、2学期のスタートを左右するといっても過言ではありません。

⚠️ 熱中症・かくれ脱水との悪循環に注意

ODのお子さまは朝の食欲が乏しく、水分・塩分の摂取が不足しがちです。その状態で外出や部活動をすると熱中症のリスクも高まります。「立ちくらみが増えた」「頭痛・だるさが続く」ときは、脱水が背景にないかもあわせて確認しましょう。

3. こんな症状はありませんか?——セルフチェック11項目

日本小児心身医学会のガイドラインでは、以下の11症状のうち3つ以上あてはまる場合(または2つでも症状が強い場合)に起立性調節障害を疑い、医療機関での評価が勧められています。

チェック項目
☑️ 立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
☑️ 立っていると気持ちが悪くなる。ひどいと倒れる(失神)
☑️ 入浴時、あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
☑️ 少し動くと動悸あるいは息切れがする
☑️ 朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い
☑️ 顔色が青白い
☑️ 食欲不振
☑️ 臍疝痛(へその周りの痛み)をときどき訴える
☑️ 倦怠あるいは疲れやすい
☑️ 頭痛
☑️ 乗り物に酔いやすい

出典:日本小児心身医学会「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」(『小児心身医学会ガイドライン集 改訂第3版』南江堂、2025年)

こんなときは早めに受診を

失神を繰り返す、けいれんを伴う、胸痛や強い動悸がある、運動中に意識を失ったことがある——このような場合は、不整脈など心臓の病気の除外が優先です。様子をみずに医療機関を受診してください。

4. 4つのサブタイプと診断の流れ

起立性調節障害の診断では、まず問診と診察、血液検査などでほかの病気(鑑別疾患)を除外したうえで、寝た状態から立ち上がったときの血圧・心拍の変化を測定する起立試験(新起立試験)を行い、次の4つのサブタイプに分類します。

サブタイプ 特徴
起立直後性低血圧(INOH) 立ち上がった直後に血圧が大きく下がり、回復に時間がかかる。最も頻度が高いタイプ
体位性頻脈症候群(POTS) 血圧は保たれるが、起立中に心拍数が著しく増加する。動悸・倦怠感・頭痛が目立つ
血管迷走神経性失神(VVS) 起立中に突然血圧が低下し、失神発作を起こす
遷延性起立性低血圧 起立後、時間をかけて徐々に血圧が低下していく

サブタイプと重症度によって治療方針や見通しが変わるため、「ODっぽいから」と自己判断で終わらせず、一度きちんと評価を受けることが大切です。あわせて、ストレスなど心理社会的要因の関与(心身症としての側面)も評価します。

当院での対応

当院(1F 内科・小児科)では、問診・診察・血圧測定に加え、貧血・甲状腺機能・電解質などの血液検査や心電図による鑑別を行い、起立性調節障害が疑われる場合の初期評価と生活指導に対応しています。専門的な精査や入院評価が必要な場合は、連携する高次医療機関へご紹介します。

5. 似た症状を起こす他の病気——貧血・甲状腺・心臓の病気など

「朝起きられない」「だるい」「立ちくらみ」は、起立性調節障害以外の病気でも起こります。診断の前に、次のような疾患を除外しておくことが重要です。

鑑別すべき疾患 ポイント
鉄欠乏性貧血 思春期の女子にとくに多く、立ちくらみ・倦怠感がODとよく似ています。血液検査で判別できます
甲状腺機能の異常 動悸・倦怠感・体重変化など。血液検査(TSH・FT4)で確認します
不整脈・心疾患 失神やけいれんを伴う場合は最優先で除外。心電図検査を行います
てんかん・神経疾患 意識消失の様子(前ぶれ・持続時間・けいれんの有無)が診断の手がかりになります
うつ状態・睡眠障害など 気分の落ち込みや睡眠リズムの問題が主体の場合もあり、併存することもあります

とくに鉄欠乏性貧血はODと症状が重なりやすく、併存も少なくありません。当院では血液内科の専門外来も設けており、貧血の精査までワンストップで対応できます。

「うちの子、あてはまるかも」と思ったら——夏休み中の今が、受診と生活改善のチャンスです。

WEB予約はこちら / お電話:03-6432-5353(1F 内科・小児科)

6. 治療の基本は「水分・塩分・立ち方」——非薬物療法

起立性調節障害の治療は、病気を正しく理解すること(疾病教育)と生活上の工夫(非薬物療法)が土台です。ガイドラインでも、薬より先にまず以下の対策が推奨されています。

STEP 1 水分と塩分をしっかりとる
水分は1日1.5〜2L程度、塩分はやや多め(1日10g程度)が目安とされます。夏は汗で失われる分、こまめな補給を。朝起きたらまずコップ1杯の水分を
STEP 2 立ち上がり方を工夫する
急に立ち上がらず、頭を下げたままゆっくり立つ。起立中はじっと立ち続けず、足踏みをしたり、ふくらはぎを動かす。気分が悪くなったらすぐしゃがむ
STEP 3 日中に体を起こし、軽い運動を続ける
日中の長時間の臥床(ごろごろ)は自律神経の調節力をさらに低下させます。散歩など軽い運動を、涼しい時間帯に少しずつ
STEP 4 就寝・起床リズムを守る
夜ふかしを避け、就寝時刻を毎日そろえる。夜間のスマートフォン使用は体内時計を後ろにずらすため、就寝1時間前には手放すのが理想です
STEP 5 弾性ストッキングなどの活用
下半身への血液の貯留を防ぐ目的で、弾性ストッキングや腹部圧迫帯が有効な場合があります
✅ 夏休みだからこそできること
学校がある時期は「登校できるか」に注目が集まりがちですが、夏休みはプレッシャーの少ない環境で生活リズムと水分・塩分習慣を立て直せる貴重な期間です。8月後半になってから慌てて早起きの練習をするのではなく、7月のうちから就寝時刻を一定に保ち、朝は決まった時刻にカーテンを開けて朝の光を浴びる——この積み重ねが、9月の新学期をスムーズに迎える最大の準備になります。

7. 薬物療法と、家庭・学校での支え方

薬物療法について

非薬物療法を続けても症状が強い場合、中等症以上では昇圧薬(ミドドリン塩酸塩など)を中心とした薬物療法を併用することがあります。ただし薬はあくまで補助であり、水分・塩分・生活リズムの改善と組み合わせて初めて効果を発揮します。効果判定には数週間単位の時間がかかるため、焦らず継続することが大切です。

ご家族へ——「叱らない」ことが治療の一部です

起立性調節障害のお子さまに「気合いが足りない」「さぼるな」と叱責することは、症状を改善させないばかりか、自己肯定感の低下や登校への不安を強め、回復を遅らせることが知られています。「これは体の病気で、本人が一番つらい」という理解をご家族で共有することが、治療の第一歩です。一方で、日中はできる範囲で体を起こして活動することも回復に必要です。「責めずに、しかし昼夜逆転は放置しない」というバランスを、医師と一緒に作っていきましょう。

学校との連携も重要です。診断がつけば、遅刻や保健室利用への配慮、体育や部活動での無理をさせない対応などを学校にお願いしやすくなります。必要に応じて、当院から学校提出用の文書作成にも対応いたします。

8. よくあるご質問(FAQ)

Q. 起立性調節障害は治りますか?
A. 多くは体の成長とともに改善していきます。軽症例では適切な治療により数か月〜1年程度で改善することが多い一方、重症例では社会復帰までに時間がかかることもあります。早めに診断し、生活の工夫を始めることが回復への近道です。
Q. 夜は元気なのに朝だけ起きられません。本当に病気でしょうか?
A. その「午前中に悪く、午後〜夜に回復する」パターンこそ、起立性調節障害に典型的な日内変動です。自律神経の切り替えがうまくいかないために起こるもので、怠けや反抗ではありません。症状が続く場合は一度ご相談ください。
Q. スポーツドリンクで水分をとらせてもよいですか?
A. 大量の汗をかいたときの補給には有用ですが、糖分が多いため日常的な多飲はおすすめできません。ふだんは水や麦茶と食事からの塩分を基本とし、運動時や大量発汗時に経口補水液やスポーツドリンクを活用する、という使い分けが現実的です。
Q. 大人でも起立性調節障害になりますか?
A. 思春期に多い病気ですが、成人でも起立性低血圧や体位性頻脈症候群(POTS)として同様の症状がみられることがあります。立ちくらみ・失神・動悸が続く場合は、年齢を問わず内科でご相談ください。
Q. 受診の際、何か準備しておくとよいことはありますか?
A. 「いつから・どの時間帯に・どんな症状があるか」「就寝・起床時刻」「欠席や遅刻の状況」をメモしてお持ちいただくと、診断がスムーズです。ご自宅で朝と夜の血圧・脈拍を測って記録していただくのも参考になります。

9. 理事長コメント

💬 理事長 五藤良将より
「朝起きられないお子さまを前に、『叱るべきか、休ませるべきか』と悩み、ご自身を責めてしまう保護者の方を、私は診察室で数多くみてきました。起立性調節障害は検査で評価できる体の病気であり、正しい理解と生活の工夫、そして必要に応じた薬物療法で、多くのお子さまが回復していきます。夏休みは、プレッシャーなく生活リズムを立て直せる絶好の機会です。当院は土曜・日曜・祝日も診療しており、貧血や甲状腺疾患など似た症状を起こす病気の血液検査による鑑別も院内で行えます。『なんとなく心配』の段階でかまいませんので、新学期が始まる前に、どうぞお気軽にご相談ください。」

10. まとめ

📝 この記事のポイント
✅ 起立性調節障害(OD)は中学生の約10%にみられる自律神経の病気で、「怠け」ではない
暑さ・脱水・夏休みの生活リズムの乱れにより、夏は症状が悪化しやすい
✅ セルフチェック11項目のうち3つ以上あてはまれば受診を検討
✅ 診断では貧血・甲状腺・心臓の病気などの除外が重要。失神やけいれんを伴う場合は早急に受診
✅ 治療の基本は水分1.5〜2L・塩分やや多め・ゆっくり立つ・生活リズムの維持。夏休み中の立て直しが9月の新学期を左右する
✅ ご家族は「叱らずに、昼夜逆転は放置しない」バランスで支える
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